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第19話『ルイスの苦悩』
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ホゥ、と感嘆の声が女性たちから上がる。
(よかったぁ……)
危なく朽ちるところだった。ルイスは胸を撫で下ろした。
「さすがルイスさんねぇ」
正面向こうでは、ハルニレが目を輝かせている。
「お日様の匂いがするわ」
ドキッ。
ハルニレの言葉に引き込まれる。
ルイスに声をかけたアヤは「ああ」と得心した。
慌てて目を逸らすルイス。
「あ、ありがとうございます、アヤさん」
「いいえ……よかったですね」
「えっ?」
「クスッ」
アヤは言って自分の仕事に戻った。
(……大人だ)
ルイスは短いやり取りで、アヤが自分の心を見抜いてしまったことを知った。
カァーッと赤くなりながらも、ルイスは稲穂を束ねるために席を立った。
円卓を半周して、ランスがやってきた。
「ルイスさん、そのままにしていてください。私が束ねますから……」
「ランスさん……!」
動揺したまま、助け舟を求める。
「……せっかくのチャンスじゃありませんか。アヤさんが気づいたようですから、応援をお願いしてみては?」
「ま、まさか! さっきの今で……」
「女性の意見を伺う、いい機会ですよ」
ランスはそう言ってルイスから稲穂を受け取ると、彼を円卓に押しやった。
気もそぞろで円卓の席に戻ったルイスは、なるべくハルニレを見ないようにして生産修法の仕事に戻った。
ルイスが生産修法に加わっているのは、今が稲の収穫期だからだ。
穀物を作るのが得意な彼は主力だった。
ここ数か月の出来事で、彼の生産修法の技術は格段に進歩している。
特にランスが妖精の力を借りて、たくさんの別種の野菜や穀物を一挙に作った技術を見てからというもの、ルイスの目標になっていたのだった。
(それに――)
ルイスは考えた。
炎樹の森の仕事で、現場責任者のサバラス氏に篤と説教されたことは、NWSリーダーたちの気を引き締めていた。
その変化は公私に渡って彼らに影響を与えている。
留まってるものは誰もいない。ルイスもその流れに乗らなくてはならなかった。
いつまでも実力不足に甘んじてはいられない。
生産修法の球が大きくなっていく。
(——いい加減にしなくちゃ)
じりじりした焦りにも似た気持ちが沸き起こる。
だがそれは、不安と隣り合わせのため、脆弱な決意だった。
「ルイスさん……ルイスさんっ!」
「はい?」
「あの球が……大きすぎじゃありませんか?」
「えっ?」
ルイスが作った球は、人が座れるほど大きなものになっていた。
それに気づいて声をかけたのは、なんとハルニレだった。
「!!」
球はバチンと盛大に割れた。
おそらくそのまま稲を作っていたら、五倍は収穫があっただろうが、雑味が多いか病気を持つかしていたかもしれない。
(よかったぁ……)
危なく朽ちるところだった。ルイスは胸を撫で下ろした。
「さすがルイスさんねぇ」
正面向こうでは、ハルニレが目を輝かせている。
「お日様の匂いがするわ」
ドキッ。
ハルニレの言葉に引き込まれる。
ルイスに声をかけたアヤは「ああ」と得心した。
慌てて目を逸らすルイス。
「あ、ありがとうございます、アヤさん」
「いいえ……よかったですね」
「えっ?」
「クスッ」
アヤは言って自分の仕事に戻った。
(……大人だ)
ルイスは短いやり取りで、アヤが自分の心を見抜いてしまったことを知った。
カァーッと赤くなりながらも、ルイスは稲穂を束ねるために席を立った。
円卓を半周して、ランスがやってきた。
「ルイスさん、そのままにしていてください。私が束ねますから……」
「ランスさん……!」
動揺したまま、助け舟を求める。
「……せっかくのチャンスじゃありませんか。アヤさんが気づいたようですから、応援をお願いしてみては?」
「ま、まさか! さっきの今で……」
「女性の意見を伺う、いい機会ですよ」
ランスはそう言ってルイスから稲穂を受け取ると、彼を円卓に押しやった。
気もそぞろで円卓の席に戻ったルイスは、なるべくハルニレを見ないようにして生産修法の仕事に戻った。
ルイスが生産修法に加わっているのは、今が稲の収穫期だからだ。
穀物を作るのが得意な彼は主力だった。
ここ数か月の出来事で、彼の生産修法の技術は格段に進歩している。
特にランスが妖精の力を借りて、たくさんの別種の野菜や穀物を一挙に作った技術を見てからというもの、ルイスの目標になっていたのだった。
(それに――)
ルイスは考えた。
炎樹の森の仕事で、現場責任者のサバラス氏に篤と説教されたことは、NWSリーダーたちの気を引き締めていた。
その変化は公私に渡って彼らに影響を与えている。
留まってるものは誰もいない。ルイスもその流れに乗らなくてはならなかった。
いつまでも実力不足に甘んじてはいられない。
生産修法の球が大きくなっていく。
(——いい加減にしなくちゃ)
じりじりした焦りにも似た気持ちが沸き起こる。
だがそれは、不安と隣り合わせのため、脆弱な決意だった。
「ルイスさん……ルイスさんっ!」
「はい?」
「あの球が……大きすぎじゃありませんか?」
「えっ?」
ルイスが作った球は、人が座れるほど大きなものになっていた。
それに気づいて声をかけたのは、なんとハルニレだった。
「!!」
球はバチンと盛大に割れた。
おそらくそのまま稲を作っていたら、五倍は収穫があっただろうが、雑味が多いか病気を持つかしていたかもしれない。
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