パイオニアオブエイジ~NWSかく語りき〜

どん

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第19話『ルイスの恋』

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 宇宙の九月園慰の二十一日、金曜日——。
 今日も今日とて生産修法の仕事に打ち込むNWSメンバーたち。
 グロリアスポスタリティの服を仕立てる仕事に参加する女性メンバーや、カフェ専属ミュージシャンになったキーツなどの都合で、シフト変更が行われた。
 炎樹の森に出張しているタイラーとオリーブも、月末にならないと帰ってこない……。
 そんなわけで、集会所に詰めているリーダーは、ポールとトゥーラ、ランス、そしてルイスの四人だけだった。
 いつも賑やかなポールとは離れて、女性メンバーに交じってルイスは生産修法に従事している。
 だが、いつもより集中力を欠いている。
 原因は円卓の反対側に座った、同じ10班の女性である。
 ハルニレ・ベクトラー。
 長い金髪をツインテールにした、色素の薄い白い肌にそばかすがチャーミングな、ちょっとふくよかな二十二歳の女性である。
 あれは風雷の八月中旬のことだった。
 特別顧問に就いたノリヒトたちのために歓迎会の準備をしていた時のこと。
 タイラーとオリーブのことをからかうナタルとキーツを注意したものの、羨ましく思っているとランスが言ったのだ。
「ルイスさんだって視点を変えればいるじゃありませんか。(中略)ぽっちゃりした色白の、女性らしく長い金髪で笑顔がかわいい……」
 驚いて皿を落っことしたルイスの怪我を心配しつつ、ランスはダメ押しに言った。
「中らずといえども遠からずですよ」
「……」
 それ以来、ルイスはハルニレのことを意識しっぱなしだった。
 幸い、生産修法の仕事は班体制ではないので、うまいことメンバーには勘づかれていなかった。
 しかし、今日は真正面で、どうしても視界に入る。
 ハルニレを見ないようにすればするほど、ぎこちなくなってしまう。
 生産修法の半透明な球越しに、ちらっと盗み見る。
 彼女の生産修法に集中する時の優し気な笑み。仲間と語らう時のリラックスした笑顔。明るい笑い声。思い出し笑い――笑顔がいっぱいだった。
 ふと見せる幼顔や、からかわれて弱り切った表情にも愛嬌がある。その度に頬に寄るえくぼが、何とも言えない魅力を醸し出している。
(今夜は眠れないかもしれない……)
 秘かに観念するルイス。
 ハァ~ッと溜め息をついた時だった。
「ルイスさん、あの……」
「うわぁっ、はっ、はいっ!」
 右隣にいた6班のアヤ・アスペクターに声をかけられて、仰天するルイス。かろうじて生産修法の球は無事だった。
「……大丈夫ですか?」
「だっ、大丈夫です……なんでしょう?」
 アヤは物静かに度のキツそうな眼鏡のブリッジを指で押し上げて言った。
「そろそろ収穫期じゃないですか? その稲穂」
「はい? あ、ああっ、そうですね!」
 手元を見ると、稲穂はたわわに実り零れんばかりだった。
 慌ててパチンと球を弾けさせ、稲穂をわさっと両手に途端に散る香ばしい藁の匂い。
「わぁ……」
 それは周囲を驚かせるのに十分だった。
「懐かしい匂いがする」
「すごーい」


















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