194 / 276
第19話『押したり引いたり』
しおりを挟む
そんなこととは露知らず、ルイスとハルニレはお互いの動作に目が離せず、緊張状態に陥っていた。
バスケットから蓋つきの陶器皿を出すにも、ハルニレの手が震えてカタカタと鳴るのだった。
しっかりしたところを見せたいのに泣きたくなる。
それはルイスも同じだった。
手伝おうとしてバスケットの中に手を伸ばすと、ハルニレの指に触れた。
ドキッ。
サッと手を引っ込めるが、思い直して再度挑戦する。
「……」
ルイスの痛いほどの決意がハルニレの心を打った。
「あのっ……ありがとうございます」
「いいえ……」
料理は秋野菜のグリル、オリーブオイルがけと、カンパーニュ、トウモロコシの冷製スープ、そしてチーズ各種だった。
とても一時間で用意したとは思えない力作ぞろいだった。
「おいしそうだ……」
「急拵えで申し訳ないんですけど……もっと時間があったら」
「えっ」
「ルイスさんたちが残業なさってるって、さっき聞いたばかりなんです……だから」
「それで急いで作ってくれたんですか」
「はっ、はい」
「ありがとう……嬉しいです」
「いいえ……食べていただけるだけで」
二人とも真っ赤っかになって、視線を逸らすのだった。
ランスたちは気を引き立たせるように、二人を隣に座らせた。そして自分たちは端と端でサンドイッチにして座った。
自分で食べたいと言っていただけあって、野菜のグリルは味が際立っていた。
陶器に盛られた色とりどりの野菜が秋を感じさせる。
ルイスが食べ終わった先から、ハルニレは恥ずかし紛れに取り皿によそう。
トウモロコシの冷製スープのほんのりした甘さが食を進ませた。
「ハルニレちゃん、料理上手なのね」
アヤがよいしょする。
「ありがとうございます……その、食べるのは趣味みたいなもので」
恐縮したハルニレだったが、後半の自分の言葉に赤面した。
「もしかして、パンも手作りですか?」
ランスに聞かれてますます縮こまる。
「はいっ、住んでるアパートにオーブンを特注したので、一週間分まとめて作るんです」
「へぇ……」
ルイスの感心した声に、ドキリとするハルニレ。
「それは本格的だ……今度、ルイスさんの作った小麦で、ハルニレさんにパンを作ってもらうというのはいかがですか?」
ランスの提案をもう一押しするアヤ。
「どうせなら二人で相談して創作パン作ってよ。ランスさんと私が品評会を開くから」
「そんな……いいんですか?」
ハルニレがポ~ッとしながらルイスを見る。
「是非お願いします」
期待を込めてルイスが笑いかける。
「はい」
消え入りそうに返事するハルニレ。
「私も負けてられないな。よーし、腕を奮いますか!」
アヤが若い二人に当てられてやる気を出す。
「どうするんですか?」
面白がってランスが聞いた。
「教区のバザーで店を出しましょうよ。確か豊穣の十月の第三日曜日でしたよね」
「じゃあ、その時に私たち二人の婚約発表をしましょうか」
爆弾発言が飛び出した。
バスケットから蓋つきの陶器皿を出すにも、ハルニレの手が震えてカタカタと鳴るのだった。
しっかりしたところを見せたいのに泣きたくなる。
それはルイスも同じだった。
手伝おうとしてバスケットの中に手を伸ばすと、ハルニレの指に触れた。
ドキッ。
サッと手を引っ込めるが、思い直して再度挑戦する。
「……」
ルイスの痛いほどの決意がハルニレの心を打った。
「あのっ……ありがとうございます」
「いいえ……」
料理は秋野菜のグリル、オリーブオイルがけと、カンパーニュ、トウモロコシの冷製スープ、そしてチーズ各種だった。
とても一時間で用意したとは思えない力作ぞろいだった。
「おいしそうだ……」
「急拵えで申し訳ないんですけど……もっと時間があったら」
「えっ」
「ルイスさんたちが残業なさってるって、さっき聞いたばかりなんです……だから」
「それで急いで作ってくれたんですか」
「はっ、はい」
「ありがとう……嬉しいです」
「いいえ……食べていただけるだけで」
二人とも真っ赤っかになって、視線を逸らすのだった。
ランスたちは気を引き立たせるように、二人を隣に座らせた。そして自分たちは端と端でサンドイッチにして座った。
自分で食べたいと言っていただけあって、野菜のグリルは味が際立っていた。
陶器に盛られた色とりどりの野菜が秋を感じさせる。
ルイスが食べ終わった先から、ハルニレは恥ずかし紛れに取り皿によそう。
トウモロコシの冷製スープのほんのりした甘さが食を進ませた。
「ハルニレちゃん、料理上手なのね」
アヤがよいしょする。
「ありがとうございます……その、食べるのは趣味みたいなもので」
恐縮したハルニレだったが、後半の自分の言葉に赤面した。
「もしかして、パンも手作りですか?」
ランスに聞かれてますます縮こまる。
「はいっ、住んでるアパートにオーブンを特注したので、一週間分まとめて作るんです」
「へぇ……」
ルイスの感心した声に、ドキリとするハルニレ。
「それは本格的だ……今度、ルイスさんの作った小麦で、ハルニレさんにパンを作ってもらうというのはいかがですか?」
ランスの提案をもう一押しするアヤ。
「どうせなら二人で相談して創作パン作ってよ。ランスさんと私が品評会を開くから」
「そんな……いいんですか?」
ハルニレがポ~ッとしながらルイスを見る。
「是非お願いします」
期待を込めてルイスが笑いかける。
「はい」
消え入りそうに返事するハルニレ。
「私も負けてられないな。よーし、腕を奮いますか!」
アヤが若い二人に当てられてやる気を出す。
「どうするんですか?」
面白がってランスが聞いた。
「教区のバザーで店を出しましょうよ。確か豊穣の十月の第三日曜日でしたよね」
「じゃあ、その時に私たち二人の婚約発表をしましょうか」
爆弾発言が飛び出した。
0
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
百門一新
恋愛
大妖怪の妖狐「オウカ姫」と、人間の伯爵のもとに生まれた一人娘「リリア」。頭には狐耳、ふわふわと宙を飛ぶ。性格は少々やんちゃで、まだまだ成長期の仔狐なのでくしゃみで放電するのもしばしば。そんな中、王子とのお見合い話が…嫌々ながらの初対面で、喧嘩勃発!? ゆくゆく婚約破棄で、最悪な相性なのに婚約することに。
※「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
※ベリーズカフェに修正版を掲載、2021/8/31こちらの文章も修正版へと修正しました!
断罪後の気楽な隠居生活をぶち壊したのは誰です!〜ここが乙女ゲームの世界だったなんて聞いていない〜
白雲八鈴
恋愛
全ては勘違いから始まった。
私はこの国の王子の一人であるラートウィンクルム殿下の婚約者だった。だけどこれは政略的な婚約。私を大人たちが良いように使おうとして『白銀の聖女』なんて通り名まで与えられた。
けれど、所詮偽物。本物が現れた時に私は気付かされた。あれ?もしかしてこの世界は乙女ゲームの世界なのでは?
関わり合う事を避け、婚約者の王子様から「貴様との婚約は破棄だ!」というお言葉をいただきました。
竜の谷に追放された私が血だらけの鎧を拾い。未だに乙女ゲームの世界から抜け出せていないのではと内心モヤモヤと思いながら過ごして行くことから始まる物語。
『私の居場所を奪った聖女様、貴女は何がしたいの?国を滅ぼしたい?』
❋王都スタンピード編完結。次回投稿までかなりの時間が開くため、一旦閉じます。完結表記ですが、王都編が完結したと捉えてもらえればありがたいです。
*乙女ゲーム要素は少ないです。どちらかと言うとファンタジー要素の方が強いです。
*表現が不適切なところがあるかもしれませんが、その事に対して推奨しているわけではありません。物語としての表現です。不快であればそのまま閉じてください。
*いつもどおり程々に誤字脱字はあると思います。確認はしておりますが、どうしても漏れてしまっています。
*他のサイトでは別のタイトル名で投稿しております。小説家になろう様では異世界恋愛部門で日間8位となる評価をいただきました。
『まて』をやめました【完結】
かみい
恋愛
私、クラウディアという名前らしい。
朧気にある記憶は、ニホンジンという意識だけ。でも名前もな~んにも憶えていない。でもここはニホンじゃないよね。記憶がない私に周りは優しく、なくなった記憶なら新しく作ればいい。なんてポジティブな家族。そ~ねそ~よねと過ごしているうちに見たクラウディアが以前に付けていた日記。
時代錯誤な傲慢な婚約者に我慢ばかりを強いられていた生活。え~っ、そんな最低男のどこがよかったの?顔?顔なの?
超絶美形婚約者からの『まて』はもう嫌!
恋心も忘れてしまった私は、新しい人生を歩みます。
貴方以上の美人と出会って、私の今、充実、幸せです。
だから、もう縋って来ないでね。
本編、番外編含め完結しました。ありがとうございます
※小説になろうさんにも、別名で載せています
後宮の手かざし皇后〜盲目のお飾り皇后が持つ波動の力〜
二位関りをん
キャラ文芸
龍の国の若き皇帝・浩明に5大名家の娘である美華が皇后として嫁いできた。しかし美華は病により目が見えなくなっていた。
そんな美華を冷たくあしらう浩明。婚儀の夜、美華の目の前で彼女付きの女官が心臓発作に倒れてしまう。
その時。美華は慌てること無く駆け寄り、女官に手をかざすと女官は元気になる。
どうも美華には不思議な力があるようで…?
完 独身貴族を謳歌したい男爵令嬢は、女嫌い公爵さまと結婚する。
水鳥楓椛
恋愛
男爵令嬢オードリー・アイリーンはある日父が負った借金により、大好きな宝石だけでは食べていけなくなってしまった。そんな時、オードリーの前に現れたのは女嫌いと有名な公爵エドワード・アーデルハイトだった。愛する家族を借金苦から逃すため、オードリーは悪魔に嫁ぐ。結婚の先に待ち受けるのは不幸か幸せか。少なくとも、オードリーは自己中心的なエドワードが大嫌いだった………。
イラストは友人のしーなさんに描いていただきました!!
職業『お飾りの妻』は自由に過ごしたい
LinK.
恋愛
勝手に決められた婚約者との初めての顔合わせ。
相手に契約だと言われ、もう後がないサマンサは愛のない形だけの契約結婚に同意した。
何事にも従順に従って生きてきたサマンサ。
相手の求める通りに動く彼女は、都合のいいお飾りの妻だった。
契約中は立派な妻を演じましょう。必要ない時は自由に過ごしても良いですよね?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる