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第20話『報告会』
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午後3時半——すべての稲刈り作業は終了した。
ノリヒトが労いの言葉で結んで、現地解散となった。
みんな稲架掛の前で写真を撮ったり、お昼をご馳走になったお内儀さんたちにお礼を言ったりした。
もちろん、ノリヒトたちには最大の謝辞とともに、今後の指導についても言及して了承を得た。
解散して30分も経って、メンバーが全員帰ったのを確認すると、リーダ―たちは報告会を開くために、ノリヒトの家に集合した。
「それじゃみんな。今日はご苦労さん――!」
「お疲れ様でした――!」
前もって持ち込んでいた酒類の栓を開けて飲み交わす。
ナタルが健闘をみんなに称えられているその横で、マルクとタイラーがノリヒトたちと相談を始めた。
この2人に話を持ちかけられたことから、ノリヒトたちは例によってテレパスで3人の先程の論議が聞かれていたことを察した。
「お三方、失礼ながら先程のお話を聞かせていただきました。NWSのことに心を砕いてくださり、ありがとうございます。お三方が話されていたことは、今まさにNWSが直面している問題なんです。やはり、お三方から見て、私たちは頼りないですか?」
マルクにズバリ言われて、トーマスとルイが言葉に窮す。
こういう時頼りになるのはノリヒトだ。
「頼りになるかならねぇかで言ったら、俺たちの知らないことでは頼りになるが、畑に関しちゃ頼りにならない。当然だろ? 人間なんてそんなもんだ」
言って、マルクのコップに純米酒を注いでやる。
「長い目で見れば、俺たちがこうして馴れ合ってるのは、益のないことじゃねぇ。あんたたちが課したことにとやかく言うのは、筋じゃないってのはわかってるよ。ただな、俺たちの立場から言わせてもらえば、ちと骨がない。あんた、言ってたよな? 「自分が万世の秘法という土壌に育てられた、ひ弱な穀物になった気がする」ってな。実のところ、それがNWSそのものにも当てはまるんじゃねぇか、と思うんだがどうだい?」
「……仰る通りです。私たちはNWSという団体の性格上、不況知らずで5年来てしまいました。代表が多方面にしっかりしていることもあり、リーダ―は交渉一つこなせないままです。ここにきて問題が噴出するのは、むしろ望ましいことだと思っています」
頷いてタイラーが言った。
「サバラスさんという、カエリウスの修法者が言ってました。「縁を結ぶのを他人任せにしていてはいけない。人と人は縁でもって人間という土台を築いてきた。その上に生活があり、仕事があり、社会がある。レベルアップを目指すのなら、縁を含めた多面的な人間力を養いなさい。その方が修法をこなすことより、ずっと重要だ」と」
「ほう、じいさんはあんたにも、たんと言って聞かせたんだな」
「俺が頼みました。NWSの中核は、文句なしにマルク・アロン・ランスさんの3人ですが。ぶっとく入魂したかったので」
「ハハハ」
トーマスが緊張を解いて言った。
「そうだな、君くらい男気のある人間が引っ張らないことには、NWSの底上げは難しいだろう」
「俺に木彫りの熊を投げてくる活きのいい女もいたから、置いてかれるって泣くやつのいねぇと思うぜ。カッカッカ」
「そこは反省しろよ」
「そこは反省してください」
「ちぇっ」
全員に言われて、ノリヒトがむくれる。
「まぁ、君たちが弱点に無自覚じゃないなら、改善のしようはいくらでもある。手始めに、仕事を増やすことからやってみたらどうだろう?」
「と仰いますと?」
「自然農法では、稲を刈ったら稲藁を振り撒く作業がある。……本当は稲刈りの前にクローバーの種を蒔いたり、麦の粘土団子を作ったりする作業があったんだが、都合を推し量って端折ったんだ。1年やってみてわかることもあるんでね」
「わかりました、人数を割きます」
「そうするといいことがあるぜぇ」
「えっ?」
「ちっとやそっとじゃ音をあげねぇ、お天道様に恥じない人間になれる!」
「ノリヒトさんのようにですか?」
「なんだ不服か?」
「恥も外聞もない人間にはなりたくないってよ」
トーマスが笑った。
「ふん! 俺くらいできた人間になりゃ、エロもあっけらかんとしたもんよ」
「代わりに常識が抜け落ちるのはどうかと」
マルクが突っ込む。
「おめぇ! したり顔してホントは好きなくせに。むっつりじゃねぇのか、コラ!」
マルクの首根っこを押さえて、ノリヒトが喚く。
「そういう人に限って――早いんですよね」
「な、何が?」
聞いていたトーマスらがぎょっとする。
「はぁっ⁈ 何言ってんだ。俺はなぁ○×△※……」
秋の夕べに乱れ飛ぶ、蛾の如き会話が始まった。
ノリヒトが労いの言葉で結んで、現地解散となった。
みんな稲架掛の前で写真を撮ったり、お昼をご馳走になったお内儀さんたちにお礼を言ったりした。
もちろん、ノリヒトたちには最大の謝辞とともに、今後の指導についても言及して了承を得た。
解散して30分も経って、メンバーが全員帰ったのを確認すると、リーダ―たちは報告会を開くために、ノリヒトの家に集合した。
「それじゃみんな。今日はご苦労さん――!」
「お疲れ様でした――!」
前もって持ち込んでいた酒類の栓を開けて飲み交わす。
ナタルが健闘をみんなに称えられているその横で、マルクとタイラーがノリヒトたちと相談を始めた。
この2人に話を持ちかけられたことから、ノリヒトたちは例によってテレパスで3人の先程の論議が聞かれていたことを察した。
「お三方、失礼ながら先程のお話を聞かせていただきました。NWSのことに心を砕いてくださり、ありがとうございます。お三方が話されていたことは、今まさにNWSが直面している問題なんです。やはり、お三方から見て、私たちは頼りないですか?」
マルクにズバリ言われて、トーマスとルイが言葉に窮す。
こういう時頼りになるのはノリヒトだ。
「頼りになるかならねぇかで言ったら、俺たちの知らないことでは頼りになるが、畑に関しちゃ頼りにならない。当然だろ? 人間なんてそんなもんだ」
言って、マルクのコップに純米酒を注いでやる。
「長い目で見れば、俺たちがこうして馴れ合ってるのは、益のないことじゃねぇ。あんたたちが課したことにとやかく言うのは、筋じゃないってのはわかってるよ。ただな、俺たちの立場から言わせてもらえば、ちと骨がない。あんた、言ってたよな? 「自分が万世の秘法という土壌に育てられた、ひ弱な穀物になった気がする」ってな。実のところ、それがNWSそのものにも当てはまるんじゃねぇか、と思うんだがどうだい?」
「……仰る通りです。私たちはNWSという団体の性格上、不況知らずで5年来てしまいました。代表が多方面にしっかりしていることもあり、リーダ―は交渉一つこなせないままです。ここにきて問題が噴出するのは、むしろ望ましいことだと思っています」
頷いてタイラーが言った。
「サバラスさんという、カエリウスの修法者が言ってました。「縁を結ぶのを他人任せにしていてはいけない。人と人は縁でもって人間という土台を築いてきた。その上に生活があり、仕事があり、社会がある。レベルアップを目指すのなら、縁を含めた多面的な人間力を養いなさい。その方が修法をこなすことより、ずっと重要だ」と」
「ほう、じいさんはあんたにも、たんと言って聞かせたんだな」
「俺が頼みました。NWSの中核は、文句なしにマルク・アロン・ランスさんの3人ですが。ぶっとく入魂したかったので」
「ハハハ」
トーマスが緊張を解いて言った。
「そうだな、君くらい男気のある人間が引っ張らないことには、NWSの底上げは難しいだろう」
「俺に木彫りの熊を投げてくる活きのいい女もいたから、置いてかれるって泣くやつのいねぇと思うぜ。カッカッカ」
「そこは反省しろよ」
「そこは反省してください」
「ちぇっ」
全員に言われて、ノリヒトがむくれる。
「まぁ、君たちが弱点に無自覚じゃないなら、改善のしようはいくらでもある。手始めに、仕事を増やすことからやってみたらどうだろう?」
「と仰いますと?」
「自然農法では、稲を刈ったら稲藁を振り撒く作業がある。……本当は稲刈りの前にクローバーの種を蒔いたり、麦の粘土団子を作ったりする作業があったんだが、都合を推し量って端折ったんだ。1年やってみてわかることもあるんでね」
「わかりました、人数を割きます」
「そうするといいことがあるぜぇ」
「えっ?」
「ちっとやそっとじゃ音をあげねぇ、お天道様に恥じない人間になれる!」
「ノリヒトさんのようにですか?」
「なんだ不服か?」
「恥も外聞もない人間にはなりたくないってよ」
トーマスが笑った。
「ふん! 俺くらいできた人間になりゃ、エロもあっけらかんとしたもんよ」
「代わりに常識が抜け落ちるのはどうかと」
マルクが突っ込む。
「おめぇ! したり顔してホントは好きなくせに。むっつりじゃねぇのか、コラ!」
マルクの首根っこを押さえて、ノリヒトが喚く。
「そういう人に限って――早いんですよね」
「な、何が?」
聞いていたトーマスらがぎょっとする。
「はぁっ⁈ 何言ってんだ。俺はなぁ○×△※……」
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