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第22話『風刺の里』

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 豊穣の十月賢退の八日、月曜日。
 スポーツの日という祝日にあたるこの日、生産修法の仕事も休みだった。
 しかし、NWSリーダーは、この日を久々の会議に充てている。
 NWSに依頼があった仕事を、童話の里の5団体に外注してから二か月が経っていた。
 そこで、報告会も兼ねて、仕事の概況を聞く時間を設けたのだった。
 といっても、都合がついたのは風刺の里で活動しているランドスケープオブメルシーだけ。
 円卓の真ん中にオービット・アクシス(通信機器)を置いて、風刺の里の3D映像を映しての会議をする。
 仮代表として会議に臨んでいたハンス・アスペクターが話す。
「やぁ、NWSのみんな久しぶり。調子はどうだい?」
 軽い調子で切り出したハンスは、外発注会議の時の気楽さはどこに行ったのか、と思うほど引き締まった表情をしていた。
 NWS側はマルクが代表して話す。
「おかげで生産修法の仕事は無理なく進んでるよ。そっちは?」
「ああ、俺たちランドスケープオブメルシーはね、風刺の里で心を入れ替えたよ」
「へぇ……そういえば二か月前とは顔つきが違うよな」
「うんうん、間抜けな抽象画と劇画漫画の描いた顔ぐらい顕著な差があるよ。いったい、どうしちゃったわけ?」
 横から茶々を入れたのは、もちろんポールである。
「ははは、間抜けな抽象画はヒドいなぁ」
 ハンスはさらりと流す。
「実は、風刺の里の精神に触れて、みんな思うところがあってね。童話の里で極楽とんぼと仇名された俺たちでも、背中に棒をビシッと入れられたように、変わらざるを得なかったんだよ」
「自分で言っちゃうかね……」
 キーツの言葉にみんな苦笑する。
「そんで? 何が君らを変えたのよ」
 ポールが尋ねる。
「みんなは風刺の里の風刺画って見たことあるかい?」
「——いや」
 マルクが言うと、みんな顔を見合わせていたが、誰も目にしたことがないようだった。
「じゃあ、そもそも風刺画ってどんなものかわかるかい?」
 ハンスに聞かれて、ナタルが思いついたように言った。
「新聞によく載ってるよね。政治家なんかの時の人が、体よくデフォルメされてけなされるっていう……」
 ハンスは意を得たり、と手を打った。
「その通り。風刺っていうのは、社会的強者と弱者の関係性を痛烈に皮肉ったり、政治悪を暴いたり、社会悪と切っても切り離せない表現手段だ。現在で言えば、万世の秘法と呪界法信奉者の対立構造を当て擦る、とかね」
「ちょっと、何なの。その当団体比五割増しの知性派ぶりは!」
 ポールがハンスの知性に舌を巻く。
「風刺の里では、弁が立つこともステイタスの一つなんだ。俺は小利口な部類にすぎないけど、里にはまだまだ頭のいい人がひしめいてるよ。それはともかく――」
「それはともかく⁈」
 あっさり躱されて、ポールが前のめりになる。
 隣のトゥーラは冷静に速記でメモを取っている。
 もちろん、オービット・アクシスは録音もしているが、これは疑問点を整理する時にトゥーラがよく実践する方法なのだった。

















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