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第23話『暴露話』
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何やかやとわたわたしながら、ハルニレは祖父母とルイスを部屋に招き入れた。
ティーセットを二人分増やして、ダイニングでお茶を淹れる。
……幸い、来客に備えて椅子は四脚あった。
頭が真っ白になっているハルニレに代わって、ルイスがハルニレの部屋に来るようになった経緯を説明する。
「というわけで、一週間後にバザーでの出店を控えてまして。私たちは総菜パンの係になったんです。ハルニレさんのお宅に特注のオーブンがあるということで、私がお邪魔させていただいて試食を担当しているんです」
「まぁ、そうでしたか。ハルニレは何も言ってくれないので、事情の方はさっぱり把握していませんでした。ごめんなさいね」
「いいえ、こちらこそ、独身のお嬢さんの部屋に上がり込んで、さぞ軟派な印象を持たれたでしょう」
「一応、このアパートは二十四時間体制で警備会社が見張っていて、不埒なことはできないようになってますからな。君のことも報告があったんだが、ハルニレとは既知の仲と知らせたのでね。何も不都合はなかったでしょう?」
「はい、おかげさまで」
「どうしてルイスさんが知り合いだってわかったの?」
ハルニレが祖父に問う。
「ハルがユズさんに言伝してたんだろ。知り合いがしばらく部屋に来るからって。……男性とは聞いてなかったから、家族会議になったんですけど」
「ごめんなさい。急に決まったことだったし、それに……反対されると思ったの」
「すみません、私もご挨拶だけでもさせていただいたらよかったんです」
「いいじゃありませんか、あなた。ルイスさんがお眼鏡に適う方だってわかったでしょう。過ぎたことは言いっこなし!」
(ありがとう、おばあちゃん!!)
ルイスがいなかったら、祖母をハグしていたところだ。
「まぁ、挨拶もいいがね……二人は付き合っているんじゃなかったのかい? はっきりしてもらわないと」
「はっ、はい。ハルニレさんとは先月下旬から、交際させていただいてます」
「ああ、やっぱりそうなのか。初めの挨拶では仕事仲間としか聞いてなかったからね。もしかして付き合うと言っても、まだままごとの真似事なのかと思ったんだよ」
「何で成人しているのに、おままごとなのよっ!」
「ハル、好きだったろ? おままごと……妹のチェリーがとっくに卒業したのに、十七歳くらいまでドールハウスで遊んでたじゃないか」
(おじいちゃんのバカ――ッ!!)
ハルニレは声にならない叫びを祖父にぶつけていた。
「へぇ、かわいいですね」
「だろう? あまり人前に出たがらない割には、この子は人好きのする質でね。みんなから、かわいいかわいいと言われて育ったんだよ」
ルイスは微笑まし気にケインの思い出話に耳を傾けている。
「あなた……あまりハルニレを刺激しないでくださいな。本当に口をきいてくれなくなりますわよ」
「えっ、家族を紹介するとなれば、暴露話が基本じゃないのか?」
要はルイスに思い出を共有してほしいのだった。
「……もういいわよ。好きなだけ暴露すれば?」
がっかりしながら、ハルニレは祖父の暴走を食い止めるのをやめた。
ティーセットを二人分増やして、ダイニングでお茶を淹れる。
……幸い、来客に備えて椅子は四脚あった。
頭が真っ白になっているハルニレに代わって、ルイスがハルニレの部屋に来るようになった経緯を説明する。
「というわけで、一週間後にバザーでの出店を控えてまして。私たちは総菜パンの係になったんです。ハルニレさんのお宅に特注のオーブンがあるということで、私がお邪魔させていただいて試食を担当しているんです」
「まぁ、そうでしたか。ハルニレは何も言ってくれないので、事情の方はさっぱり把握していませんでした。ごめんなさいね」
「いいえ、こちらこそ、独身のお嬢さんの部屋に上がり込んで、さぞ軟派な印象を持たれたでしょう」
「一応、このアパートは二十四時間体制で警備会社が見張っていて、不埒なことはできないようになってますからな。君のことも報告があったんだが、ハルニレとは既知の仲と知らせたのでね。何も不都合はなかったでしょう?」
「はい、おかげさまで」
「どうしてルイスさんが知り合いだってわかったの?」
ハルニレが祖父に問う。
「ハルがユズさんに言伝してたんだろ。知り合いがしばらく部屋に来るからって。……男性とは聞いてなかったから、家族会議になったんですけど」
「ごめんなさい。急に決まったことだったし、それに……反対されると思ったの」
「すみません、私もご挨拶だけでもさせていただいたらよかったんです」
「いいじゃありませんか、あなた。ルイスさんがお眼鏡に適う方だってわかったでしょう。過ぎたことは言いっこなし!」
(ありがとう、おばあちゃん!!)
ルイスがいなかったら、祖母をハグしていたところだ。
「まぁ、挨拶もいいがね……二人は付き合っているんじゃなかったのかい? はっきりしてもらわないと」
「はっ、はい。ハルニレさんとは先月下旬から、交際させていただいてます」
「ああ、やっぱりそうなのか。初めの挨拶では仕事仲間としか聞いてなかったからね。もしかして付き合うと言っても、まだままごとの真似事なのかと思ったんだよ」
「何で成人しているのに、おままごとなのよっ!」
「ハル、好きだったろ? おままごと……妹のチェリーがとっくに卒業したのに、十七歳くらいまでドールハウスで遊んでたじゃないか」
(おじいちゃんのバカ――ッ!!)
ハルニレは声にならない叫びを祖父にぶつけていた。
「へぇ、かわいいですね」
「だろう? あまり人前に出たがらない割には、この子は人好きのする質でね。みんなから、かわいいかわいいと言われて育ったんだよ」
ルイスは微笑まし気にケインの思い出話に耳を傾けている。
「あなた……あまりハルニレを刺激しないでくださいな。本当に口をきいてくれなくなりますわよ」
「えっ、家族を紹介するとなれば、暴露話が基本じゃないのか?」
要はルイスに思い出を共有してほしいのだった。
「……もういいわよ。好きなだけ暴露すれば?」
がっかりしながら、ハルニレは祖父の暴走を食い止めるのをやめた。
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