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第25話『そぞろ歩きの行く末』
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豊穣の十月秘縁の十九日——。
この日は朝から糸のような雨がそぼ降り、肌寒かった。
こういう時は、生産修法で作った野菜を運ぶのも、倉庫にテレポートで直に持ち込むのだった。
それで、集会所の屋根の下で雨宿りする二人に誰一人気づかなかったのだ。
「うーん、雨の日は臭いがこもるなぁ」
ナタルが鼻をひくつかせた。
「かと言って窓を開けると、今度は湿気で多少カビ臭くなるしね」
近くでオリーブが伝票をめくりながら言った。
「お湿りなんだから窓開けちゃえば? どうせ大掃除する予定だったんだし」
「そうね……」
ポールの言葉を受けて、トゥーラが窓の方へ歩いて行き、ガラス窓を静かにカタンと鳴らして半開きにした。
西側から順々に開けていき、集会所の入口近くの窓を開けた時、こんな会話が聞こえてきた。
「おじいちゃん、今日の雨はなんていうの?」
「そうだなぁ……柔らかいから”さんさん降り”かな」
「ふぅん、さんさん降るとどうなるの?」
「野菜がおいしくなるよ。ミレイの好きなサツマイモが食べ頃になる」
「ほんと? うれしいなぁ。雨さんありがとう」
(あら……?)
トゥーラが窓を大きく開けて、二人の姿を確かめる。
背筋のしゃんとした白髪を撫でつけた背広の老人と、小さな……四歳くらいの男の子。
仲良く並んで雨を眺めている。
トゥーラが優しく声をかける。
「こんにちは、ようこそいらっしゃいました。お茶はいかがですか? どうぞお入りください」
老人がトゥーラに気づいて、ニッコリ会釈した。
男の子は目をくりくりさせて、老人の手を引っ張った。
「ぼく、のどかわいた」
「そうかそうか……じゃあ、お言葉に甘えさせていただきます」
「はい」
「誰?」
ポールがトゥーラに尋ねる。
「みんな、お客様よ」
それは全員に共有してあった合図だった。
生産修法の仕事は、各自決められた別の場所で続行することになり、リーダー以外はすべてテレポートして忽然と姿を消した。
それを確かめると、トゥーラが玄関まで二人を迎えに行った。
木で出来たドアを開けると、二人は行儀よく立っていた。
「さぁ、どうぞ。散らかっておりますので、お気に召さなかったらすみません」
「お招きありがとうございます。雨上がりに散歩しておりましたら、また雨に降られましてな。難儀していたところなんです」
「そうでしたか、今日は肌寒いですものね。お召し物、お預かりしますわ。乾かしてお返ししましょう」
「いえいえ、それには及びません。生地が厚いので、水を通さんのです」
「わかりました。では、ごゆるりとなさってください。お話、お伺いしたいですわ」
そう言って、トゥーラは男の子の前にしゃがんで、視線を同じくした。
とてもきれいな、茶色の澄んだ目をしていた。
「こんにちは、坊や。お名前は?」
男の子ははにかんで言った。
「ミレイっていうの……四歳」
安心させるように、トゥーラはニッコリ笑って、そっとミレイの頭を撫でた。
「そう、ミレイ君ね。私はトゥーラよ、よろしくね」
スッと立って、二人を先導するトゥーラ。
二人は物怖じすることなく歩を進めた。
この日は朝から糸のような雨がそぼ降り、肌寒かった。
こういう時は、生産修法で作った野菜を運ぶのも、倉庫にテレポートで直に持ち込むのだった。
それで、集会所の屋根の下で雨宿りする二人に誰一人気づかなかったのだ。
「うーん、雨の日は臭いがこもるなぁ」
ナタルが鼻をひくつかせた。
「かと言って窓を開けると、今度は湿気で多少カビ臭くなるしね」
近くでオリーブが伝票をめくりながら言った。
「お湿りなんだから窓開けちゃえば? どうせ大掃除する予定だったんだし」
「そうね……」
ポールの言葉を受けて、トゥーラが窓の方へ歩いて行き、ガラス窓を静かにカタンと鳴らして半開きにした。
西側から順々に開けていき、集会所の入口近くの窓を開けた時、こんな会話が聞こえてきた。
「おじいちゃん、今日の雨はなんていうの?」
「そうだなぁ……柔らかいから”さんさん降り”かな」
「ふぅん、さんさん降るとどうなるの?」
「野菜がおいしくなるよ。ミレイの好きなサツマイモが食べ頃になる」
「ほんと? うれしいなぁ。雨さんありがとう」
(あら……?)
トゥーラが窓を大きく開けて、二人の姿を確かめる。
背筋のしゃんとした白髪を撫でつけた背広の老人と、小さな……四歳くらいの男の子。
仲良く並んで雨を眺めている。
トゥーラが優しく声をかける。
「こんにちは、ようこそいらっしゃいました。お茶はいかがですか? どうぞお入りください」
老人がトゥーラに気づいて、ニッコリ会釈した。
男の子は目をくりくりさせて、老人の手を引っ張った。
「ぼく、のどかわいた」
「そうかそうか……じゃあ、お言葉に甘えさせていただきます」
「はい」
「誰?」
ポールがトゥーラに尋ねる。
「みんな、お客様よ」
それは全員に共有してあった合図だった。
生産修法の仕事は、各自決められた別の場所で続行することになり、リーダー以外はすべてテレポートして忽然と姿を消した。
それを確かめると、トゥーラが玄関まで二人を迎えに行った。
木で出来たドアを開けると、二人は行儀よく立っていた。
「さぁ、どうぞ。散らかっておりますので、お気に召さなかったらすみません」
「お招きありがとうございます。雨上がりに散歩しておりましたら、また雨に降られましてな。難儀していたところなんです」
「そうでしたか、今日は肌寒いですものね。お召し物、お預かりしますわ。乾かしてお返ししましょう」
「いえいえ、それには及びません。生地が厚いので、水を通さんのです」
「わかりました。では、ごゆるりとなさってください。お話、お伺いしたいですわ」
そう言って、トゥーラは男の子の前にしゃがんで、視線を同じくした。
とてもきれいな、茶色の澄んだ目をしていた。
「こんにちは、坊や。お名前は?」
男の子ははにかんで言った。
「ミレイっていうの……四歳」
安心させるように、トゥーラはニッコリ笑って、そっとミレイの頭を撫でた。
「そう、ミレイ君ね。私はトゥーラよ、よろしくね」
スッと立って、二人を先導するトゥーラ。
二人は物怖じすることなく歩を進めた。
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