パイオニアオブエイジ~NWSかく語りき〜

どん

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第26話『妹からの手紙』

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 はさみ――といっても、すぐに出てくる状況ではないので、タイラーは封筒の端を指で千切った。
 手紙は五枚ほどで、流麗な文字が埋まるように並んでいた。
 早速読み始める。 


 タイラー兄さんへ

 前略、お久しぶり。元気そうでよかったわ。心配していたのよ?
 パラティヌスでとても素敵な人に巡り合ったのね。
 結婚のお知らせ、嬉しく拝見しました。
 もう兄さんのことを、とやかく言う人もいません。
 あれからこちらでもいろいろあってね。
 詳しくは後で話すけれど、結論から言うと武器工場を閉鎖したの。
 気になるでしょうね?
 まずは事の起こりから説明するわね。
 あれは、今年の宇宙の九月鮮碧の二十日のことだったわ。
 突然、会社に国の査察が入ったの。
 事由はテロリストへの武器横流しですって!
 父さんはあの通り、正義のために国に貢献してると信じて疑わない人だから、寝耳に水よ。
 結局、証拠が挙がらなくて、事実無根だったみたいなんだけど、国から疑われたことがショックで父さん寝込んでしまったの。
 私たちも慰めようがなくて、工場の人たちに事情を説明したり、取引先への陳情なんかも全部、エドガー兄さんがやってのけたのよ。
 あとで父さんが「あいつがあんなに頼もしく見えたことはない」って泣いて喜んでたわ。
 そんな時だったのよ、タイラー兄さんの手紙が届いたのは。
 一読した父さんが一言「これにはマリエルが返事しなさい」って言うから、またお見合いの申し出を断らなくちゃいけないのかと思ったわ。
 父さんの表情からは何も読み取れなかったけれど、そこからの回復が目覚ましかったの。
 昨日まで寝込んでた人が急に起き出して、あれこれエドガー兄さんや部下の方に指示して。
 工場を閉鎖するからって、自分で従業員に発表して、退職金も失業保険も間違いなく出ますと説明したの。
 何人かの部下の方が公私にわたって奔走してくれて、大きな混乱もなく落ち着いたのが、豊穣の十月中旬かしらね。
 もう偉そうな生活をしている余裕はないんだって、財産にしがみつく母さんを根気よく説得してたわ。
 それから間もなくして、カエリウスはテロ活動が減少傾向にあるから、軍縮を取り決めたの――。
 一連のことはまさしく天の配剤としか思えなかったわ。
 多くの同業者が混乱を極める中、私たちの会社はすべての事後処理が完了していたんだもの。
 父さんがどんなにタイラー兄さんに感謝したか、わかるでしょう?
 本当に見違えたように若々しくなって、しまいに「いらなくなった武器の解体工場でも始めようか」って言い出したの。
 私たちが父さんの人徳を思い知ったのはこのときよ。
 ただの思いつきだったのに、古い部下の方や急なリストラで迷惑を被った従業員の方々も「やりましょう!」って集まってくれて。
 あれよあれよという間に、閉鎖していた武器工場は、武器解体工場に生まれ変わっちゃったの。
 勝手知ったる製品だもの。これ以上の解体業者はいないって、みんなやる気満々なの。
 すごいでしょ? 本当にびっくりすることばかりよ。
 私、思うんだけど、タイラー兄さんの幸せは父さんの頑迷な性格も溶かす不思議な力があるのね。
 だって、寝込む前の父さんと、今の父さんは全く別人だもの。
 だから――すべてのいい変化が一息つくまで、返事するのを待っていたの。 
 ごめんなさい、兄さん。そしてありがとう。
 オリーブさんを連れて、一度帰ってきて。
 みんなで待ってます。

                   霜舞の十一月修迷の二日
                    マリエル・クリムゾン
















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