彼氏に性欲処理にされてた受けが幸せになるまで

ooo

文字の大きさ
16 / 29

16(栗原side)


(栗原side)

--もうそろそろかな。次の診察が終わったら稲場さんの所へ行こう。

 稲場さんを検査へ送り出してからちょうど1時間位経っている。検査の内容からしてもうそろそろ終わってもいい頃だ。

「加藤さーん」

 看護師に名前を呼ばれ診察室に患者が入ってくる。

「こんにちは、加藤さん。調子はどうですか?」

 〝お手本のお医者さん〟のように優しい笑顔を作り、話しかける。それに加えて普段よりゆっくりで少しだけ大きい声。加藤さんはもうおばあちゃんだ。できるだけゆっくりと話していく。

--まずいな、思ったより時間がかかってる。

 「うんうん」と話を聞きながら、頭の中では時間が押していることに焦る。

「それでねぇ、ここがねぇ--」

「はいはい、それではこちらを処方しておきますね。」

 軽く薬の説明をして加藤さんを診察室から出す。

--それにしてもさっきから連絡用の携帯がうるさいな。

 この時間は〝診察〟にしてたはずなんだけど。

 ピッピッと携帯を操作して履歴を遡る。
 見てみると履歴には、同じ携帯からの連絡が何個も来ている。こんなことは滅多にない。あまりの異様さに1周回って冷静になった栗原は、折り返し連絡しようとした。

 そのとき

ピピピピピピピ

 無機質な電子音が携帯から響いた。

--さっきと同じ番号、、、。何があったんだ

ポチッ

「はい、栗原です。」

「>">\*%^;$$\$"_;#」」\-&」?!!!!」

 あまりの慌てっぷりに言葉になっていない声が聞こえてきた。慎重に言葉を理解していく。

「稲場、、さん、3階東エレベーター、、?」

 聞き取れたのはその部分だけ。

--とりあえず向かうしかない。

 〝エレベーター〟か。きっと精神科に行くところだったんだろう。冷静にそう考えるが、焦るように急いでいた。






--初めて稲場さんを見た時…、

 目の下にできた隈、かすかに震える手、そして首にある絞められた痕。それはまだ新しくて、彼がどんなに助けを求めているのか、誰もがひと目で分かった。 

 いつもなら作り笑いをする。高い技術と少しの愛嬌。それが医者に求められるものだから。だから〝は〝優しいお医者さん〟を演じる。

 でも稲場さんの前ではできなかった。

 あまりにも純粋に真っ直ぐ、助けを求めてきたから。

 一つ一つ丁寧に診察していく。心臓の動き、呼吸、喉。そして首の痕。彼が壊れないように、優しく優しく触る。

--酷いな。かなりの力じゃないか。

 きっと男友達か、知人と喧嘩でもしたのだろう。そして多分引っ込みがつかなくなって、手を出された、のかな。今のところは。

 でもただの喧嘩でここまで怯えるか…?彼は今にも泣き出しそうじゃないか。

 そして聞いてみる。知りたくて。
 いや、検診のため知る必要があった。

「稲場さん、無理にとは言いません。…教えてくださいますか?」

 いつもより優しく、子供に言い聞かせるみたいに。

「--実は…」





 彼が教えてくれたのはとんでもないことだった。上京した時にお世話になった人と付き合ってたけど、二股をかけられていた。都合のいい男として扱われていたけど、好きだから耐えていた。
 そして、妊娠したから一方的に別れられた。

 〝妊娠〟

 言わずとも分かった。彼は男と付き合っていたのだ。その男に別れる際首を絞められたのだろう。

 はその男に怒りを覚えた。

 彼が二股をかけられる理由も、傷つく理由も、何も無いのだ。彼を助けたい。

「それじゃあ、、どうして首の痕をつけられたのか、教えて頂けますか?」

 助けたいと、その一心で何も考えずに聞いてしまった。

 その結果、彼をパニックにし気絶させるまでに至らしてしまった。彼の傷は周りが思っている以上に深かったのだ。

 気絶した彼をベッドに運び治療する。治療と言っても、首に塗り薬を塗って包帯を巻くことしか出来なかったが。
 いつもと同じなのに、医者でありながらどうすることもできない自分が歯痒い。





--どうして。

 1時間以上経ってようやく目が覚めた彼。そしてそんな彼と話をしたこと。
 たまたま寄ったコンビニでおにぎりを持った彼に会ったこと。
 そこで検査の話をしたこと。
 診察したこと。
 挨拶を交わしたこと。

 全てを思い出しながら彼のいる所へ向かう。

--こんなに俺は焦ってるんだ。

 予期せぬ異常事態。

 これは今回だけでなく、いつもでも起こりうること。そう分かってるはずなのに。いつもなら焦らない。冷静に、ただ淡々と自分に仕事を処理していくだけ。

 なのに

 会ったばかりの彼のことになると、どうしても冷静でいられない自分がいた。

 早く彼に会わなければ。彼を助けられるのは自分しかいない。




「うああぁああ、、あぁああ!!!」

エレベーターに近づいていく度に大きくなる声。

「稲場さん!!しっかり!!」

「稲場さん!!!」

 そしてそれに負けじと声を張り、彼を収めようとする声たち。

コツコツ

 足音を鳴らし、地面に丸くなり泣き叫ぶ彼に近寄る。


「稲場さん、遅くなってごめんね。」


 俺が助けるよ。






━━━━━━━━━━━━━

この回でも受けは攻めの名前しれなかったー!!誤算です!!!!次の回で!!翔太は栗原の名前を知ります!(たぶん)

お気に入り数400↑ありがとうございます(;;)
感想 13

あなたにおすすめの小説

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

笑って誤魔化してるうちに溜め込んでしまう人

こじらせた処女
BL
颯(はやて)(27)×榊(さかき)(24) おねしょが治らない榊の余裕が無くなっていく話。

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。顔立ちは悪くないが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…? 2025/09/12 ★1000 Thank_You!!

熱中症

こじらせた処女
BL
会社で熱中症になってしまった木野瀬 遼(きのせ りょう)(26)は、同居人で恋人でもある八瀬希一(やせ きいち)(29)に迎えに来てもらおうと電話するが…?

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

人気俳優に拾われてペットにされた件

米山のら
BL
地味で平凡な社畜、オレ――三池豆太郎。 そんなオレを拾ったのは、超絶人気俳優・白瀬洸だった。 「ミケ」って呼ばれて、なぜか猫扱いされて、執着されて。 「ミケにはそろそろ“躾”が必要かな」――洸の優しい笑顔の裏には、底なしの狂気が潜んでいた。 これは、オレが洸の変態的な愛情と執着に、容赦なく絡め取られて、逃げ道を失っていく話。

借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます

なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。 そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。 「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」 脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……! 高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!? 借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。 冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!? 短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。