彼氏に性欲処理にされてた受けが幸せになるまで

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※途中で視点切り替わります。

 泣いてしまった翔太に栗原は戸惑っている。そんな二人を「はぁ」と溜息を吐きながら、気だるげそうに男が声をかけた。

「おい、何やってんだ。」

 栗原とは違う低さの声に翔太と栗原は顔を上げて、声のした方を見た。

「あ…阿部!」

 穏やかな先生が唯一名前を呼び捨てにする相手。

「阿部…先生…」

 阿部あべ誠也せいや。栗原と同じ黒髪だがストレートの栗原の神とは違い、ところどことクルクルに紙が跳ねている。そんなクルクルの髪からのぞく瞳は、切れ長で目つきが悪く、少し怖い。

「ったくよぉ、病院で大声を出すな、うるさい。」

 はぁと呆れたように翔太と栗原に注意した。

「あ、ごめんごめん。ちょっと稲場さんと話し合いしてただけなんだ。」

「話し合いだぁ?一方的に問い詰めるのは話し合いじゃねぇよ。馬鹿かお前。」

 阿部の言葉に栗原は、はっとしたような顔をして翔太の手を握った。

「ご、ごめんね!…問い詰めたいわけじゃないんだ…」

 いつもと違う焦った先生の顔と声に少し笑いがこぼれた。

「ふふ、先生、大丈夫ですよ。答えられなかった俺が悪いんだから、先生は悪くないよ。ありがとう」

 クスクスと笑うと、先生は悲しそうな顔をした。

ーーどうしたんだろう。俺、また変なこと言ったのかな。






「先生は悪くないよ、ありがとう」

 そう言った稲場さんの顔はひどく穏やかだった。本当にそう思っているかのようだ。
 実際、精神疾患の持っている患者は自己肯定感がひどく低い傾向がある。これまで診察した様子や栗原と話している様子を見ると、彼も例外ではない。

ーーさぁて、これはどうするべきかな。

 本来精神科を担当していない栗原には分らないだろうけど、自己肯定感をあげるのはものすごく大変なことだ。今の時代、薬なんかで症状を和らげることはできるけど、自分の中にあるトラウマなどを精神疾患の核の部分を取り除くことまではできない。

ーーとりあえず、今あったことを聞かいことには何もわからないな。

「はぁ、俺からしたらどっちもうるさくてほかの人の迷惑になるのには変わんねぇよ。」

 「とりあえず来い」と二人を診察室に案内しようと歩き出した。

「な、そんな言い方ないだろ。」

「お前も医者なら分かんだろ」

 何も言えなくなったのか、栗原は悔しそうな顔をした。栗原が誰かのためにそんな顔するなんて、昔からのあいつを知っている俺からしたらありえないことだった。





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