その英雄は犠牲の上に立っている

アズルス

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lost memory

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 ユイ、エルダの母娘が抱き合っている間ロイは少年の話をするタイミングを見定めていた。
村長の家は現在エルダとユイが住んでいる。つまりあの家の家主はエイダなのだが、今エルダに話しかけるのはあまりにも無粋というものだろう。
しかしロイの方を、正確にはロイが背負っている少年の方をチラチラと見る村人も少なくはなかった。
ロイのように外から来た人間を喜んで受け入れる村人はたくさんいるが、排他的な村人がいることも事実だ。
悪いやつらではないのだが、万が一彼らに少年の受け入れを反対されたら少年を村長の家に泊まらせるどころか村に入ることすら出来なくなってしまうだろう。

 母娘がやっと泣き止み一緒にユイを待ってくれた村人にお礼を言い始めた。
ユイは疲れのせいかウトウトと眠たそうにしている。
エルダが彼女のことを背負うと安心したのか寝てしまった。
周りはその様子を微笑ましく見守り別れをいい帰っていった。
今はもう深夜とも言える時間だ。
ユイが寝るのも不思議ではない。
しばらくすると門の前にはエルダとロイを除いて誰もいなくなった。

「ロイさん。今回は本当にありがとうございます。」

エルダは頭深々と下げた。

「いや~とんでもない。」

ロイは照れ臭そうに頭を掻きながら言った。
だがすぐに神妙な顔に切り替え
途中で見つけた少年について話し始めた。

「エイダさんに相談したいことがあってな。
   実はユイちゃんが下山の途中この子を見つけてな。」

ロイは背負っている少年に指を指す。

「どうやら気を失っているみたいなんだ。
   それで目を冷ますまでどこかの家で寝させてあげたいんだが。
  この村で余っているというか空いているベットがあるのが…君の家しかないんだ。」

ロイは豪快な性格に似合わず決まり悪そうに言う。
エイダは見かねて

「私がまだ夫の件を引きずっているとでも?
   ばかりにしないでください。
   これでも一人娘を持つ母親です。
   いつまでもメソメソしていられません。
   その子をうちにですか。
   構いませんよ。」

と言った。
ロイはホッと胸を撫で下ろし、
エイダに感謝した。

さて、この村には40世帯の村人が住んでいる。
大きい村ではあるが村長の家は比較的門に近かったので、ロイ達が村長の家に着くのにそれほど時間はかからなかった。

家の主を亡くしたその家はなぜだがとても寂しく見えた。
残されたユイとエイダはこの家を見るたびに村長の姿が頭によぎる。
しかし、少なくともユイは父の死を乗り越えようとしていた。
頭をよぎる父の姿、ユイはそれを天から見守っていると思うようにした。
成長とは人を強くするもの、半年、また半年が過ぎる度にユイを見守る村人たちはそれを感じていた。
ロイも例外ではない。
独り身であった彼はユイを娘のように可愛がり、エイダがロイと再婚するにではないか、そう噂されたこともあった。
もちろんそんなことあるはずがないのだが彼らの仲はとても良い。
だからこそロイは村長、ダンの家に入れるのであって他の村人だったらエルダが許さなかっただろう。
  
ダンが村長だったこともあり、彼の家は村では珍しい2階建の家であった。
1階には調理場と応接間、家族でご飯を食べるためのリビングがある。
エイダたちの部屋は全て2階にあり全員分の3部屋があった。

ロイは正面玄関からリビング、調理場を通り階段を上がりきる。
エイダはユイの部屋に行き彼女をベッドに寝かせてに行った。
ロイはダンの部屋の前に立つとゴクリと唾を呑み込んだ。
実はエイダと仲が良かったロイでさえダンの部屋は見たことがなかったのある。
ロイはドアノブに手をかけ勢いよく前に押した。
視界に入ってきた物は生活感のある書斎だった。
チクタクチクタクと音がなり続き置き時計があることを指し示す。
右の壁には無数の本が敷き詰められた棚が置いてありその本を正面の机で読んでいたのではないかと推測できる。
左の壁側にベッドが置かれてあり横たわったらちょうど外の景色が見られるだろう。
それがこの部屋はもともと寝室だと言うことを物語っておりロイが最初、書斎と勘違いするほどダンは本が好きだったことがうかがえる。
入る時からずっと音を出している置き時計が角に置かれ、部屋の主が戦死した2年前、いやそれ以上前からずっと時を刻んでいたのではないだろうか。
ロイはこの部屋に入った時ダンが生きていて今でもこの部屋で生活しているのではないか、そう思えて仕方がなかった。
あまりにも生活感が滲み出ているのである。
棚やベッドには一切ホコリが被っていなかった。
彼が最後にこの村を去る時も同じ風景だったのだろう。
ロイは直感でそう思う。
進んでいく時の中で唯一変わらないこの風景、綺麗に思える一方エイダの狂気を垣間見たような気がしてロイは恐ろしかった。
彼は何にも目をくれず少年を寝かせることだけを遂行する。
エイダと目を合わせることすら出来ず、そのままロイは自分の家に帰ってしまった。
ダンの部屋に残されたのは、眠りにつく新しい部屋の住人と昔の住人を支えた家具たちだけだった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
主人公が目覚めねえ。。
2000文字と前回に比べては量が少なくなっております。
1日1話で投稿頑張ろうかなと思ったらこうなりました。
今後も気まぐれでやっていこうと思います。
某新作FPSのお陰で次の投稿は結構遅くなりそうです。
感想、アドバイス、批判などなど待ってます!
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