いっぽ

N&N

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第1話

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自転車で十分の距離は、車で移動したら本当にあっという間だ。

家に着くと、女性はタクシーを待たせたまま車を降りた。

後でまた乗るのだろう。

夜道の事を考えれば、当たり前だった。

「呼び鈴、押しますね」

女性は呼び鈴を素早く見つけると、僕の返事を聞く事もなく押した。

僕は車で揺られたせいか、さっきよりも一段と調子を悪くしていて、容易に返事できる状態ではない事を悟ってくれたのだろう。

女性が呼び鈴を押してから数秒後、家の中から母親が出てきた。

普段家の中で見慣れている母親が、何だか別人のように見えてきた。

家も家の周りも全て、女性が横に立つ事でいつもと違って見える。

こう、何だか新鮮な感じ。

女性の心の内を表しているようだ。

しかしそんな新鮮さも、母親の一言で一気に消えてしまう。

「何やってんの?あんた」

母親は出てきて僕の顔を見るなり、そう言った。

母さん、僕の横に女性がいるのが見えないのかよ。

人がいる時くらい、もう少し言葉遣いを考えてくれ。

恥ずかしいじゃないか。

「こんばんは、お母様でいらっしゃいますか?」

しかし女性は気にする事なく声を掛ける。

「私、N社で会社員をしているアキネと申します」

女性は流暢な語りで、事の経緯を説明し始めた。
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