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第2話
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今日の帰りの電車は空いていた。
学校を出る時間が少し早かったから、一本早い電車に乗れたのだ。
電車は一本違うだけで、混み具合が異なる。
僕が乗る電車の場合、一本遅いだけで車内はほぼ満員だ。
この違いが帰宅ラッシュの恐さでもある。
今日の電車は空いていると言っても、帰宅ラッシュ前だから座席は全て埋まっている。
立ち客が少ないだけだ。
それでもいつもに比べると、居心地は良かった。
しかし、今日はあの女性と会う事はないな、と思った。
女性は会社員のようだったし、だいたい帰宅時間は同じだろう。
だとしたら女性が乗るのは昨日と同じ、今より一本遅い電車の方が確率は高い。
今日は持っていてもあまり意味がなかったな。
胸ポケットに入れたハンカチを胸の上からそっと押さえ、僕は乗車口付近にある棒状の手すりに寄りかかった。
ふとその時、背中に何かが触れた気がして、後ろを振り返った。
すると、驚いた事にあの女性が立っていたのだ。
「こんばんは」
「あ、こんばんは」
驚いた。
無理もない。
会うと思っていなかった女性が今、目の前にいるのだ。
「具合、良くなったみたいですね」
「はい、おかげ様で」
僕は思わず頭を下げた。
女性はそんな僕の行為を止めるべく、肩に軽く触れた。
「今日は一本早い電車ですね」
「はい。クラブが早く終わったので」
「偶然ですね。私もです。本当はいつも昨日の時間の電車なんですよ」
同じだ。
僕と女性は、いつも同じ電車に乗り合わせていたのだ。
そして偶然、今日は二人とも一本早い電車に乗り合わせた。
これが恋に進展していくなら、運命という言葉がよく似合うだろう。
しかし…。
学校を出る時間が少し早かったから、一本早い電車に乗れたのだ。
電車は一本違うだけで、混み具合が異なる。
僕が乗る電車の場合、一本遅いだけで車内はほぼ満員だ。
この違いが帰宅ラッシュの恐さでもある。
今日の電車は空いていると言っても、帰宅ラッシュ前だから座席は全て埋まっている。
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しかし、今日はあの女性と会う事はないな、と思った。
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だとしたら女性が乗るのは昨日と同じ、今より一本遅い電車の方が確率は高い。
今日は持っていてもあまり意味がなかったな。
胸ポケットに入れたハンカチを胸の上からそっと押さえ、僕は乗車口付近にある棒状の手すりに寄りかかった。
ふとその時、背中に何かが触れた気がして、後ろを振り返った。
すると、驚いた事にあの女性が立っていたのだ。
「こんばんは」
「あ、こんばんは」
驚いた。
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「具合、良くなったみたいですね」
「はい、おかげ様で」
僕は思わず頭を下げた。
女性はそんな僕の行為を止めるべく、肩に軽く触れた。
「今日は一本早い電車ですね」
「はい。クラブが早く終わったので」
「偶然ですね。私もです。本当はいつも昨日の時間の電車なんですよ」
同じだ。
僕と女性は、いつも同じ電車に乗り合わせていたのだ。
そして偶然、今日は二人とも一本早い電車に乗り合わせた。
これが恋に進展していくなら、運命という言葉がよく似合うだろう。
しかし…。
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