いっぽ

N&N

文字の大きさ
26 / 38
第3話

しおりを挟む
「外国へはいつ?」

「明日です」

「明日?」

「善は急げ、ですから。告白の結果がどうであれ、向こうで仕事を探そうと思っています」

「一応留学経験もありますし、向こうの生活には慣れているので、薄々向こうでの生活を考えていたんです」

そう言って、女性は微笑んだ。

外国か。

英語が嫌いな僕には外国なんて未知の世界だから、実感がわかない。

「頑張って下さい。仕事も恋も」

とりあえず、僕にはこれしか言えなかった。

数多く言葉を掛けても、無駄になるような気がした。

「あ、忘れるところでした」

女性は突然何かを思い出し、バッグの中から何かを取り出した。

そしてそれをおもむろに僕に手渡した。

これは…花柄のハンカチだ。

「これをあなたに持っていて欲しいんです」

「これは彼から貰った大切なものじゃないですか。受け取れません」

「いいえ、あなたに持っていてもらいたいんです」

このハンカチを?

僕が?

一体何の為に?

「これのおかげで、私は彼に出会う事ができました。だからせめて、きっかけを作ってくれたあなたに持っていて欲しいんです」

「でも…これがまた彼と向こうで出会えるきっかけになるかもしれませんよ。彼の連絡先、知ってるんですか?」

「いいえ、大体の地名しか聞いていないので知りません」

「だったら持っていかないと」

「いいえ、今度は自分が積極的に動いて、彼と出会ってみせたいんです。自分の力を信じたいんです」

「今までは消極的過ぎでした。積極的に会おうとしなければ、出会える確率なんてないに等しいのに、ハンカチに偶然を期待したりなんかして」

「………」

「でもこれが私にこういう考えを持たせるきっかけになった事に違いはないから、あの日の偶然も結果的に良かったと思っています」

「これを糧に、これからは自分で未来を変えていこうと思います」

「…何かすごいですね。そういう前向きな考えができるようになるって」

「だから、それはあなたのおかげでもあるんですよ」

「記念にこのハンカチ、受け取って下さい。私のワガママですけど、お願いします」

ここまで言われて受け取らなければ、僕は最低男だ。

僕は返した時同様、両手でハンカチを受け取った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

処理中です...