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あ、やられる。

そう思った時には無意識に手を伸ばしていて、しかし何もつかめないまま手首に鈍い痛みだけが残った。

その瞬間、耳をつんざくけたたましい笛の音が校庭に響く。

ピーッ。

「試合終了ー」

その一言で一瞬静まり返った校庭が一気に騒がしくなった。

明暗をはっきり分ける歓声と失望の声。

自分の今の気持ちは、もちろん後者だ。

「のぶー!!何当たってんだよー」

試合終了の挨拶もほどほどに、クラスメイト達がおれの周りに集まってくる。

春と秋に分けて行なわれるドッヂボール大会は勝ち抜き戦で、1度負けるとそれで終わりだ。

コート内に残った人数が1人になった時点で終わり。

コート内にはおれともう1人が残っていて、おれが当たって残り1人になったから終了になった。

「あんなボール、いつもなら軽く取れてたぜ」

「そうだよ。よゆうじゃん」

自分達はおれより先に当たって外野に行ったくせに、自分のことは棚に上げておれを責める。

でも確かにこいつらの言っていることもわかる。

多分真正面だったら難なく受け止められていた。

横向きで、右に向かって走りながらだったから、うまく取れずに当たってしまったんだ。

そうなった原因は、1つ。

おれは最後、コート内で一緒に残っていたもう1人の元へかけ寄った。
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