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「おい、ひゅうま。お前のせいで負けちゃったじゃん」

おれはこいつをかばったせいで、当たってしまったのだ。

こいつは球が飛んできているにも関わらず、突っ立っているだけだった。

このままでは当たって負けてしまう、そう思ったおれは反射的に体が動いてしまっていた。

そしてこういう結末に至る。

ひゅうまは困った表情を見せるだけで、ごめんも何も言わない。

何か思っていることがあるはずなのに、口に出さない。

その態度がおれを次第にイラつかせる。

何だよ、こいつ。

某漫画の主人公と同じ名前のくせに、運動は全くダメ。

見た目もひょろっとしてるし。

最後までコート内に残っていたのは逃げるのがうまかったからじゃなくて、見た感じ弱そうで、そんなやつに球をぶつけるといじめているように見えるから誰も狙わなかったのだと思う。

「もういいじゃん、のぶ。何言ってももう負けだし」

「そうそう、また秋にがんばろうぜ」

おれがひゅうまをずっと睨みつけていると、おれの肩を叩きながらみんな口々に言う。

それもそうか。

ここで何を言っても変わるわけないし、何も言わないひゅうまを相手にするのもイライラする。

「そうだな。秋はゆうしょうするぞー」

おれがそう言うと、みんな口々におーっ!と言い合って教室へと向かった。

大会は春だけでなく、秋にもある。

ドッヂボール大会は小学校高学年になる4年生になってから始まる大会で、今回初めてだったおれ達はもちろん優勝するつもりでいた。

こういう大会には熱が入る。

でもまさか初戦敗退だなんて情けない結果になるとは思ってもみなかった。

これはどうやら秋に向けて猛特訓する必要がありそうだ。

ひゅうまを背後に残しながら、おれは決意を抱いた。
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