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翌朝、いつもより10分早く家を出たおれは、靴箱でクラスメイトの姿を見つけて声をかけた。

「おーっす、マサキ」

「お、のぶ!今日は早いじゃん」

「へっへー、秋に向けて特訓しようと思って」

「おー、やる気だなー」

「今度はゆうしょうするからさ」

「ということは、朝練ってやつ?」

「そういうこと」

おれの学校の朝の会は8時30分から。

それまでの間は何をしてもいいことになっている。

教室で過ごそうが、校庭で遊ぼうが、時間までに教室に入ればそれまでは自由だ。

25分に予鈴が鳴るから、それを聞いてから教室にダッシュすれば本鈴には間に合う。

おれは朝の時間にドッヂボールの特訓をしようと思い、いつもより早く来た。

おれの言葉にマサキもすっかりその気になっている。

2人で上靴に履き替え、2階へと続く階段を1段飛ばしでかけ上がる。

階段を上って、廊下の1番近くにあるところがおれの教室だ。

上りきったところで、教室に入らなくても中にいる人達の声が自然と聞こえてくる。

キャーキャー騒いでいる女子の声と、少し控えめに話す男子の声と・・・。

ひゅうまと、ひゅうまの周りに集まっている女子。

いつもの光景がおれの目に映る。

「あ、のぶくんとマサキくん、おはよー」

少しだけ開いていた扉を全開すると、おれと目が合った女子が声をかけてきた。

でもそれは一瞬で、おれが挨拶を返すとすぐにまた視線の先はひゅうまの方に戻る。

ひゅうまの机の上には、羊毛フェルトで作った小物が散らばっていた。
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