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ひゅうまの家は雑貨店で、こういう女子受けする物を販売している。

そして毎日いくつか学校に持ってきては女子の前で披露していた。

女子達はまたたく間にひゅうまの周りに集まりだし、かわいいーとはしゃぐ。

毎朝こうだ。

これが毎日続けば次第にひゅうまに対して嫌悪感を抱く。

そして今日は昨日のこともあって、さらに不快感が高くなっていた。

無意識に手を強く握りしめている。

ひゅうまはそんなおれの視線に気づいて、また困った表情を見せた。

そして何も言わない。

何かあるならハッキリ言えよ。

そう言おうと息を吸い込んだところで、おれより先にマサキが声を上げた。

「ひゅうま、ドッヂボールしに行こうぜ」

おれは思わずマサキを見た。

冗談だろ?何でひゅうまなんか誘うんだ。

「昨日さんざんな結果だったから、今から練習して強くなろうぜ。特訓だ」

特訓だ、そう言われて納得した。

そうだ、これは遊びじゃないんだ、特訓だ。

だったら弱いひゅうまも参加しなくちゃならない。

秋も同じようなことになったら困るから。

「そうだよ。秋はゆうしょうねらっていこうぜ」

おれも声をかけた。

でもひゅうまは首を横に振って、おれ達の意見に賛成しなかった。

「ひゅうまくん、手けがしたら大変じゃない」

ひゅうまの近くにいた女子が声を上げた。

「そうよ。ここにあるの、ひゅうまくんが作ったんだよ。けがしたら作れなくなるじゃない」

そうよ、そうよ、と女子達がおれ達を責めるように言い立てる。

女子に言わせていることに腹が立ったおれは、つい感情的になって言い返した。

「そんなの、ひゅうまが作ったはずないだろ。お店で売ってるやつを持ってきただけじゃないか」

机の上に散らばっている羊毛フェルトを1個ずつ手にとって見たわけじゃないけど、ここから見ても完成度は高かった。

そんな物をひゅうまが作ったはずがない。
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