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「親が作ったやつを自分で作ったって言ってるだけだろ」

おれがそう言うと女子達が反論してきて、教室内は一気に騒がしくなった。

“ひゅうまくんが作った”

“作ってない”

の大合唱が響く中、突然ひゅうまが立ち上がった。

何だよ、とおれは身構えた。

反撃してくるかと思ったからだ。

「これはぼくが作ったんだよ」

独り言のような小さな声。

でもひゅうまが立ち上がった瞬間、教室の中は一瞬だけ静まり返ったから、ひゅうまの声は聞き取れた。

わざわざ立ち上がって何を言うかと思ったら、そんなこと。

本人がそう主張したって、はいそうですかってすぐに納得するわけがない。

「だったらここで作ってみろよ。そうしたらみとめてやる」

「無理だよ」

「何で?」

「だって商売道具は持ち出したらダメだって言われてるから」

「何だよ、それー」

自分の言ったことを正当化させたいなら、親の言いつけを破って証拠をおれ達に見せつけたらいい。

だけどそれができないということは、ひゅうまはきっと嘘をついている。

「そんなこと言って、本当は自分で作ってないんだろー」

その言葉をきっかけに、教室内はまた騒がしくなった。

「何でひゅうまくんの言うこと、信じてあげないの?」

女子がかばうように反論してくる。

信じるも信じないも、そうさせているのはひゅうまだ。

目の前で作って見せてくれたら、誰だって信じる。

だけどそれができないのでは信じることができない。

「もうこんなうそつき放っておいてドッヂボールしに行こうぜ」

誰かがそう言ったのをきっかけに、おれ達は1人また1人、教室内から出ていった。

最後に残ったおれはキッとひゅうまを睨みつけ

「うそつき!」

一言だけ言い放って教室を出た。

言われたひゅうまはいつものように困った表情を見せるだけで、何も言わなかった。
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