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ちなみにTシャツの色はクラスごとに違っていて、1組は黒色。

多分これも審判役の先生が判断しやすいためだと思うけど、色が勝手に固定されているのが嫌だった。

でもまだ黒色で良かったと思う。

3組のTシャツの色はピンクで、男子からはブーイングの嵐だった。

おれだってピンク色だったら嫌だ。

せっかく優勝目指して頑張っているのに、テンションが下がる。

女子は上がるかもしれないけど。

「おい、のぶ。明日早速このTシャツを着て練習しようぜ」

「お、いいね。本番さながらってやつだ」

本番は1週間後。

本当はその大会の時に着るものだけど、その日しか出番がないのではこのTシャツもかわいそうだ。

大会の前に着てあげるのも悪くないかもしれない。

本番の気分を味わえるし。

そのためには早くゼッケンを付けてもらわないと。

Tシャツとゼッケンを鞄にしまうと、おれは寄り道せずにまっすぐ家に帰った。

おれの向かいの家はひゅうまの家だ。

家というか、店というか、1階が雑貨店で2階が居住空間になっているようだ。

1度も中に入ったことがないから詳しくは知らない。

ひゅうまは3月の終わりに引っ越してきて、新学期を迎えて4年生になったら同じクラスにいた。

クラス替えでクラスメイトが入れ替わっているから、転入生のひゅうまがそこに加わっていてもそれほど違和感はなかった。

ある日までは。

ひゅうまが雑貨店にある小物を持ってきて、女子の前で披露し始めてから今までとは違う空気が流れ始めた。

今まではみんなでわいわいという雰囲気だったのに、女子達がひゅうまの方に自然と意識を向けるようになり、ひゅうまの周りがわいわいという雰囲気に変わった。

その女子の中に気になる子がいれば、男子にとってこの状況は面白くない。

おれは別段そんな子はいないけど、クラスの大半の男子から好かれているマドンナ的存在の子がいる。

その子がひゅうまの小物に魅了されているのだから、ひゅうまのことを厄介な人物として見ている男子は多かった。

さらに春のドッヂボール大会だ。

あれで完全にひゅうまを仲間として受け入れる要素はなくなった。

ひゅうまもその気がないみたいだから全然構わないんだけど。
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