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異変に気づいたのは、清掃終わりのチャイムが鳴った時だった。

このチャイムが鳴った後、10分間の猶予があって、それから5時間目始まりのチャイムが鳴る。

今日はその5時間目以降がドッヂボール大会だから、それまでに校庭へ出ておかなければならない。

遅れないように校庭へ向かおうとしていたところ、マサキが声を上げた。

「のぶ!背中!」

単語だけ言われて何かわからなかったおれは、後ろを振り向いた。

しかし背中と言われても、自分で自分の背中は見えない。

「うわっ、糸出てる」

「ゼッケンはずれかかってんぞ」

みんなおれの背中を見て口々に言う言葉で、おれは背面のゼッケンが取れかかっていることを知った。

振り向いても自分で背中を見ることができないので、Tシャツを脱ぐ。

背面を確認すると、縫い目の一部が取れて糸がほつれていた。

「うわっ、何だこれ」

取れかかっているゼッケンを見ておれは驚いた。

今までこんなふうになっていなかったのに、突然どうしてこんなことになったのだろう。

「どうすんだよ、のぶ。もう大会はじまっちゃうぞ」

「ゼッケンがなかったらさんかできないし」

Tシャツの前後に数字のついたゼッケンを縫いつけ、それを着て参加すること。

これがドッヂボール大会に参加する為の条件だ。

ゼッケンは審判役の先生が生徒を判断するために必要で、絶対つけなくてはならない。

だからおれはお母さんに縫いつけてもらっていたのに。

お母さんに限って急に取れるような縫いつけ方をするはずがない。

だとしたらどうして・・・?

「あ、まさか」

おれは先程プチッという音が聞こえたことを思い出した。

そして慌てて清掃中に背もたれにしていたロッカーにかけ寄った。
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