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ドッヂボール大会当日。

いよいよこの日が来た。

春の大会は1回戦で負けてしまったから、次こそは優勝だ。

そう言ってみんな特訓をしてきた。

みんなの中にひゅうまは入っていないけど。

ゼッケンを縫いつけたTシャツを大会前に着たのは、結局1回だけだった。

着た後に、本番の日までに雨が降って乾かなかったら大変だよなーとか、あまり洗濯するとTシャツの色があせちゃうんじゃないかとか、いろいろ心配事を挙げていくうちに、あとは本番まで取っておこうということになった。

おかげでまだ2回目のゼッケンTシャツだ。

「今回は春のようにはいかないぞ。何てったってあれほど特訓したからな」

「春はたまたまうんがわるかっただけだよ」

「そうそう、特訓でまきゅうを投げられるようになったからな」

おれ達は今までの努力の成果を確認しながら作戦を立てた。

昼食を取った後、ゼッケンTシャツに着替えて、昼休憩後の清掃が終わったら校庭に集合してドッヂボール大会だ。

今は清掃の時間。

にも関わらず、おれ達は教室の1番後ろでこのようにドッヂボール会議を行なっている。

その様子に女子が数人連れ添って近づいてきた。

いつもひゅうまの雑貨を見てキャッキャッと騒いでいる女子だ。

「ちょっと、男子ー。しゃべってないでそうじしてよー」

「そうよ。そうじしていないなら机くらいはこんでー」

うるさいなー、大事な作戦会議中なのに。

と思ったけど、口には出さなかった。

【女の人が怒っている時は反抗してはいけない】

これはおれがお父さんから教わった女子の取り扱い方だ。

「いいか、のぶ。女の人は怒っているとどんなことでも怒りに変えてくるんだ。だからそんな時ははいはい聞き流すのが1番だぞ」

この前、ひゅうまのことで女子と言い合いになった時は、これを守らなかったからうるさくなった。

そうならない為には聞き流すのが1番なのだ。

このお父さんの言うことを信じるのであれば。

おれは面倒に思いつつも、机を運ぼうと背もたれにしていたロッカーから体を離した。

プチッという音が背後で聞こえたけど、後ろには何もなかったし、気にせず机を運んだ。
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