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散々公園で遊んでから家に帰ってくると、ゼッケンが縫いつけられたTシャツがソファーの上に置かれていた。

「お母さん、ゼッケンありがとう」

気まずいけどお礼を言うと、お母さんはふーっとため息をついた。

「せっかく一緒にやろうって言ってるのに。こんなの縫えなかったら将来苦労するわよ」

「大人になってゼッケンをぬうことなんてないじゃない」

「ゼッケンじゃなくても縫い物はあるでしょー?」

「そんな時はお母さんみたいなぬいものできる人をおよめさんにもらうから大丈夫」

おれがそう言うと、お母さんはおや?という顔をしながら近づいてきた。

「なぁに?のぶー。もしかして好きな子でもできた?」

そしてそのまま食卓の椅子に腰かける。

「何でそういうことになるの?そんな話してなかったじゃない」

「のぶがお嫁さんとか言うからじゃない。誰かお嫁さんにしたい子でもいるんでしょ?」

「そんなのいないよー」

「またまたー」

おれは本当に好きな子なんていないのに、お母さんは楽しそうにからかってくる。

何で女子ってこういう恋愛話が好きなんだろう?

学校でも誰が誰を好きだとか、女子が話しているのが聞こえてくる。

そこにおれの名前は出てこないから、あまり気にならないけど。

ゼッケンを縫ってもらったから強く反発もできなくて、お母さんの質問攻めはそこから数分続いた。
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