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『親が作ったやつを自分で作ったって言ってるだけだろ』

ひゅうまに放った言葉がよみがえる。

100%ひゅうまが作ったって証拠はなくて、親の補助はあるかもしれない。

だからこれはまだセーフかもしれない。

『うそつき!』

これはちょっと言い過ぎたかもしれない。

だってひゅうまに雑貨が作れる能力があることはわかっていたのだから。

100%でなくても80%くらいなら作ったことに違いはない。

それを作ってないと言い切ったのは、間違っていたと思う。

「・・・・・・・・・」

おれが何も言えずにいると、ひゅうまは困った表情を見せた。

いつものお得意な表情だ。

そしておもむろに言った。

「何も言わなくていいよ」

「え?」

一瞬何を言われているか、わからなかった。

「ぼくもなんだ。ぼくもいつも大事なところで言葉が出てこなくなっちゃうんだ」

言葉が出ない・・・。

ああ、と言われて気がついた。

今のこの状況、何か言いたいのに言い出せない、言葉に詰まるという状況がこれなんだ。

「ちゃんと説明しなきゃいけないのに、ちゃんとお礼を言わなきゃいけないのに、なのに頭が真っ白になっちゃって、こまってしまって人にイライラさせちゃうんだ」

なるほど、よくひゅうまが見せる困った表情は、その通り心の内を映し出しているだけだったのか。

「だからのぶくんみたいに言葉がスラスラ出てくるのが本当うらやましいよ。でものぶくんも同じようになることがあるんだね」

「何だよ、ばかにしてるのか?」

「ちがう、ちがう。ぼくと同じ部分もあるんだなってうれしいんだ」

「おれだって何も言えなくなる時くらいあるよ。まぁひゅうまほどじゃないけどな」

ひゅうまはしょっちゅうだ。

何も言わずに困った表情だけ見せるのを何度も見てきた。

それにずっとイライラしてきたけど、事情を知った今ならそのイライラも少しは軽減される。
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