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「でもこれでぼくが言ってたこともうそじゃないって信じてもらえたかな?」

「うそ?」

「あの小物、あれもほとんどぬう作業だからさ。うそだったらゼッケンもぬえないし」

「そんなの・・・」

「今度はのぶくんの前であの作品も作れるようにこっそり材料を持ち出すよ」

「そんなのいいよ」

「でも」

「いいって。だって」

「だって?」

「だって本当は・・・」

本当は知ってたんだ。

今のゼッケンを縫い付けるのを見せられる前から。

お母さんがコースターを持って帰ってくる前から。

朝の教室で小物を披露している前から。

本当は・・・

知ってたんだ。

だっておれの向かいの家はひゅうまの家、というか店で、店の入口がこちらを向いているから目に入る。

ガラス張りで店内が丸見えだから中の様子もわかってしまう。

いつも店の奥にあるレジにはひゅうまのお母さんとひゅうまが並んで腰かけていて、お客さんがレジに近づいてくるまでは密かに談笑しながら縫い物をしているのだ。

さすがにひゅうまが作る物を売ることはしないだろうけど、親の横で針を動かしている姿はよく見かけていたし、完成品を見せていたこともあった。

だから学校に持ってきている物はひゅうまが作ったと言うならそうなんだろうとわかっていたけど、キャーキャー言われているのを見ると、何だか悔しかったんだ。

おれは縫い物はできないし張り合うつもりはないけど、自分ができないことを褒められているやつを見るのは何だか嫌なものだ。

自分の能力が低いと言われているようで。

だけど何もできない。

だからひゅうまに八つ当たりすることで、気持ちを発散することしかできなかった。
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