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5.メデューサの呪い
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キッチンには終盤にして初登場の兄キの父ちゃんと母ちゃんがいて、父ちゃんは食卓で新聞を広げていた。
「ただいま」
オレが声をかけると、父ちゃんは新聞からひょっこり顔を覗かせてまたすぐ元に戻った。
オレが買ってきた品物にはさほど興味がないらしい。
さすが兄キの父ちゃんだ。
言動がよく似ている。
兄キは父ちゃん似だ。
「ん?んん!?」
新聞に目線を戻したはずの父ちゃんは、急にそれを折り畳んで床にポイと投げた。
「父ちゃん、読み終わった新聞はちゃんと古新聞ボックスに入れろよ」
ユノモト家には読み終わった新聞やチラシを回収センターに持っていってお小遣い稼ぎをする母ちゃんの為に、古新聞ボックスを作っている。
新聞を読む率が1番高いのは父ちゃんだが、父ちゃんがボックスに片付けたことは、ほぼない。
だから注意をしても無駄なのだが、一応言ってみる。
しかしやはり今もそんなことより別のことに興味が向いている。
「一真、何だ?その紙袋は。お土産か?」
父ちゃんが見ていたのは買い物袋の横に置いた紙袋だ。
茉が持ってきたものだが、買い物袋と明らかに異なるので目に付いたようだ。
「仕方ないなぁ。じゃあ父ちゃんが貰ってやるか」
何も言っていないのに父ちゃんは上機嫌で紙袋を引き寄せた。
そもそも茉は一体何を持ってきたんだ?
「うっ、おいおい一真、勘弁してくれよー」
父ちゃんは紙袋の中を覗き込んだ瞬間、思い切り顔をしかめた。
「え?何が入ってるの?」
袋の中身はオレもまだ知らない。
そんな顔をしかめるほど変な物でも入っているのか?
「うっ!」
父ちゃんの後に覗き込んだ兄キですら顔をしかめている。
おいおい、茉は一体何を持ってきたんだ。
嫌な予感が胸をよぎる。
オレは兄キを押しのけて紙袋の中を覗き込んだ。
布に包まれた入れ物が入っている。
取り出してみると弁当箱だとわかった。
もちろん中身が入っているのでずっしりと重い。
「一真、今日で冬休みに入って何日目だと思ってるんだー?弁当箱はちゃんと出しておかないとダメだろ」
「え?」
「え?じゃないよ。しかもそれ、中に何か入ってるっぽいじゃないか。絶対中の物、腐ってるだろ」
なるほど。
父ちゃんが顔をしかめた理由はそれか。
これはオレが休み前に出し忘れた弁当箱だと思ったらしい。
そもそも母ちゃんはオレ達の昼飯として弁当を作ることはないから、こういうことは決してあり得ないのだが、父ちゃんはそんなことを知らない。
「あら、私は弁当なんて作ったことありませんよ」
母ちゃんがすかさず突っ込んでくる。
オレの昼飯は学食か購買のパンが基本だ。
「じゃああれか。一真は弁当男子ってやつか」
「そんなわけないだろう。自分で弁当を作るくらいなら食べに行くよ」
「おお、男らしいけど情けないセリフだ」
何だよ、父ちゃんだって同じくせに。
「じゃあその弁当は貰ったけど食べずに出し忘れたやつか?」
「何で父ちゃんはこれが冬休み前に貰った物だと決めつけるんだよ」
「冬休み中なんだから、今貰うっていう設定がおかしいだろ」
「おかしいけど貰ったんだよ」
「今?今さっきか?誰に?」
「メデューサだよ」
突然兄キが割り込んできた。
会話に入りたくて、発言のタイミングを図っていたようだ。
「メデューサって何だよ。あだ名か?」
「メデューサが名前で、あだ名が茉だよ」
・・・いや、逆だよ!
一瞬、間違いに気づかなかったが、兄キの中で逆転しているだけだ。
兄キの中で茉はもう完全にメデューサ化しているようだ。
「ただいま」
オレが声をかけると、父ちゃんは新聞からひょっこり顔を覗かせてまたすぐ元に戻った。
オレが買ってきた品物にはさほど興味がないらしい。
さすが兄キの父ちゃんだ。
言動がよく似ている。
兄キは父ちゃん似だ。
「ん?んん!?」
新聞に目線を戻したはずの父ちゃんは、急にそれを折り畳んで床にポイと投げた。
「父ちゃん、読み終わった新聞はちゃんと古新聞ボックスに入れろよ」
ユノモト家には読み終わった新聞やチラシを回収センターに持っていってお小遣い稼ぎをする母ちゃんの為に、古新聞ボックスを作っている。
新聞を読む率が1番高いのは父ちゃんだが、父ちゃんがボックスに片付けたことは、ほぼない。
だから注意をしても無駄なのだが、一応言ってみる。
しかしやはり今もそんなことより別のことに興味が向いている。
「一真、何だ?その紙袋は。お土産か?」
父ちゃんが見ていたのは買い物袋の横に置いた紙袋だ。
茉が持ってきたものだが、買い物袋と明らかに異なるので目に付いたようだ。
「仕方ないなぁ。じゃあ父ちゃんが貰ってやるか」
何も言っていないのに父ちゃんは上機嫌で紙袋を引き寄せた。
そもそも茉は一体何を持ってきたんだ?
「うっ、おいおい一真、勘弁してくれよー」
父ちゃんは紙袋の中を覗き込んだ瞬間、思い切り顔をしかめた。
「え?何が入ってるの?」
袋の中身はオレもまだ知らない。
そんな顔をしかめるほど変な物でも入っているのか?
「うっ!」
父ちゃんの後に覗き込んだ兄キですら顔をしかめている。
おいおい、茉は一体何を持ってきたんだ。
嫌な予感が胸をよぎる。
オレは兄キを押しのけて紙袋の中を覗き込んだ。
布に包まれた入れ物が入っている。
取り出してみると弁当箱だとわかった。
もちろん中身が入っているのでずっしりと重い。
「一真、今日で冬休みに入って何日目だと思ってるんだー?弁当箱はちゃんと出しておかないとダメだろ」
「え?」
「え?じゃないよ。しかもそれ、中に何か入ってるっぽいじゃないか。絶対中の物、腐ってるだろ」
なるほど。
父ちゃんが顔をしかめた理由はそれか。
これはオレが休み前に出し忘れた弁当箱だと思ったらしい。
そもそも母ちゃんはオレ達の昼飯として弁当を作ることはないから、こういうことは決してあり得ないのだが、父ちゃんはそんなことを知らない。
「あら、私は弁当なんて作ったことありませんよ」
母ちゃんがすかさず突っ込んでくる。
オレの昼飯は学食か購買のパンが基本だ。
「じゃああれか。一真は弁当男子ってやつか」
「そんなわけないだろう。自分で弁当を作るくらいなら食べに行くよ」
「おお、男らしいけど情けないセリフだ」
何だよ、父ちゃんだって同じくせに。
「じゃあその弁当は貰ったけど食べずに出し忘れたやつか?」
「何で父ちゃんはこれが冬休み前に貰った物だと決めつけるんだよ」
「冬休み中なんだから、今貰うっていう設定がおかしいだろ」
「おかしいけど貰ったんだよ」
「今?今さっきか?誰に?」
「メデューサだよ」
突然兄キが割り込んできた。
会話に入りたくて、発言のタイミングを図っていたようだ。
「メデューサって何だよ。あだ名か?」
「メデューサが名前で、あだ名が茉だよ」
・・・いや、逆だよ!
一瞬、間違いに気づかなかったが、兄キの中で逆転しているだけだ。
兄キの中で茉はもう完全にメデューサ化しているようだ。
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