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6.魔の弁当箱
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ん?
茉?
そう言えばこの冬休み、クスミは茉と接触して仲良くなったじゃないか。
茉が強引に関わってきただけのような気もするが、一応は料理を教わることもできたわけだし、仲良くなったと言ってもいいだろう。
クスミに頼んで茉の弁当箱を返してもらおう。
クスミが茉の教室に現れたら一瞬疑問に思う人がいるかもしれないが、そこから何か噂が広まることはないだろうし、オレが行くより怪しまれなくて済む。
そうだ、そうしよう。
我ながらいいアイデアだ。
始業式が終わって教室に戻る途中で、オレは早速クスミに声をかけた。
「クスミ、ちょっとお願いがあるんだけど」
「何だ?」
クスミの隣りにいる兄キが代わって返事をした。
兄キは反応が早いし、クスミは行動が1テンポ遅い。
「兄キじゃなくて、クスミに言ってるんだよ」
「クスミっちに用事ならまずはオレを通してもらおうか」
兄キがクスミの代理をして何を引き受けられると言うのだ。
「・・・まぁいいや。クスミ、冬休みの間に茉と仲良くなっただろ?オレに代わって届け物をして欲しいんだけど」
「・・・届け物、ですか?」
今度はクスミが答えてくれてホッとする。
兄キは茉という言葉が出たために少しフリーズしたようだ。
オレはその間に経緯を説明した。
冬休みにいきなり茉がオムライスを作って持ってきたこと。
それが弁当箱に詰められていたこと。
使い捨ての箱ではないので返したいこと。
茉は違うクラスなので持って行きづらいこと。
「だから仲良くなったクスミが代わりに届けてくれないかな?」
兄キが途中で復活しないように、オレは要点をまとめながら早口で一気に説明をした。
そのせいか、クスミは少し黙り込んでいる。
一生懸命オレの言葉を理解しようとしてくれているのだろう。
頼む、あともう少しだけ兄キよ、フリーズしておいてくれ。
クスミがはいと言ってくれるまで!
しかしその願いは叶わなかった。
兄キが復活した・・・・・・・・・のではなく、クスミが首を横に振ったのだ。
「え!?ダメ!?」
オレは思わず大声で返していた。
そのせいか、兄キも目覚めてしまった。
「当たり前だろ。何でクスミっちが弁当箱を一真の代わりに持っていかないといけないんだ」
「いやぁ、だって・・・」
「だいたいメデューサに呪われたのは一真であって、オムライスの呪いを受けたのも一真だろ。呪われるのは一真だけで十分だ。犠牲者を増やすな」
なんていうひどい言われようだ。
オレを助けるという選択肢はないのか。
クスミは兄キの言葉に同意するわけでもなく、じっとこちらを見ている。
やがて口を開いた。
「あの、それは良くないと思います」
「良くないって、代わりに弁当箱を返してもらうこと?」
「はい。悲しむと思います」
「悲しむ?茉が?」
「はい」
何でだ?
茉に限って悲しむということはないと思うが、何で最近仲良くなったクスミが返しにくると悲しむんだ?
「何で?」
「だってそのお弁当はユノモトくんに渡したものなので」
「そうだけど」
「メデューさんは・・・」
「メデューサ!!」
「??」
クスミも茉のことをメデューサと呼んでしまっている。
いや、メデューになってはいるが。
そしてそれが自然すぎてオレが突っ込みを入れても気づかないでいる。
兄キか?
兄キがそう呼ぶからそれが自然になってしまったのか?
「メデューさんはユノモトくんに渡したから、ユノモトくん以外から返ってきたら悲しむと思います」
クスミはさっきの言葉に人物名を付け加えただけで、全く同じことを言った。
おかげでオレは意味がわからないままだ。
「例えばこのスタンプですが」
そう言ってクスミはNキャラが彫られた消しゴムスタンプを出してきた。
「これは先ほどユノモトくんの手に渡りましたが、ユノモトくん以外から戻ってきたら悲しみます」
「何で?」
「ユノモトくんがこれを気に入らなくて他の人に渡したのかなと思います」
「それはちょっと考えすぎでしょ」
「いえ、表情が気に入らないから怒って他の人に渡してしまったのかなとか、赤インクじゃなくて黒インクが良かったのかなとか」
「え・・・」
「本当は"でよ"も入れて欲しかったのかなとか、複数いるバージョンが良かったのかなとか、線がもっと太くて・・・」
「わかった、もうわかったから」
クスミが次第にマイナス発言ばかりしていくのが恐くて、オレは慌てて止めた。
「とりあえず渡した人以外から戻ってきたら何かあったのかと不安になるからやめた方がいいってことだよな?」
「はい」
「わかった。やっぱり自分で返すわ。変なこと言って悪かった」
というか、クスミに依頼していたら本人にメデューサと呼んでいただろうし、やめて正解だ。
やっぱりこれは自分で何とかするしかなさそうだ。
茉?
そう言えばこの冬休み、クスミは茉と接触して仲良くなったじゃないか。
茉が強引に関わってきただけのような気もするが、一応は料理を教わることもできたわけだし、仲良くなったと言ってもいいだろう。
クスミに頼んで茉の弁当箱を返してもらおう。
クスミが茉の教室に現れたら一瞬疑問に思う人がいるかもしれないが、そこから何か噂が広まることはないだろうし、オレが行くより怪しまれなくて済む。
そうだ、そうしよう。
我ながらいいアイデアだ。
始業式が終わって教室に戻る途中で、オレは早速クスミに声をかけた。
「クスミ、ちょっとお願いがあるんだけど」
「何だ?」
クスミの隣りにいる兄キが代わって返事をした。
兄キは反応が早いし、クスミは行動が1テンポ遅い。
「兄キじゃなくて、クスミに言ってるんだよ」
「クスミっちに用事ならまずはオレを通してもらおうか」
兄キがクスミの代理をして何を引き受けられると言うのだ。
「・・・まぁいいや。クスミ、冬休みの間に茉と仲良くなっただろ?オレに代わって届け物をして欲しいんだけど」
「・・・届け物、ですか?」
今度はクスミが答えてくれてホッとする。
兄キは茉という言葉が出たために少しフリーズしたようだ。
オレはその間に経緯を説明した。
冬休みにいきなり茉がオムライスを作って持ってきたこと。
それが弁当箱に詰められていたこと。
使い捨ての箱ではないので返したいこと。
茉は違うクラスなので持って行きづらいこと。
「だから仲良くなったクスミが代わりに届けてくれないかな?」
兄キが途中で復活しないように、オレは要点をまとめながら早口で一気に説明をした。
そのせいか、クスミは少し黙り込んでいる。
一生懸命オレの言葉を理解しようとしてくれているのだろう。
頼む、あともう少しだけ兄キよ、フリーズしておいてくれ。
クスミがはいと言ってくれるまで!
しかしその願いは叶わなかった。
兄キが復活した・・・・・・・・・のではなく、クスミが首を横に振ったのだ。
「え!?ダメ!?」
オレは思わず大声で返していた。
そのせいか、兄キも目覚めてしまった。
「当たり前だろ。何でクスミっちが弁当箱を一真の代わりに持っていかないといけないんだ」
「いやぁ、だって・・・」
「だいたいメデューサに呪われたのは一真であって、オムライスの呪いを受けたのも一真だろ。呪われるのは一真だけで十分だ。犠牲者を増やすな」
なんていうひどい言われようだ。
オレを助けるという選択肢はないのか。
クスミは兄キの言葉に同意するわけでもなく、じっとこちらを見ている。
やがて口を開いた。
「あの、それは良くないと思います」
「良くないって、代わりに弁当箱を返してもらうこと?」
「はい。悲しむと思います」
「悲しむ?茉が?」
「はい」
何でだ?
茉に限って悲しむということはないと思うが、何で最近仲良くなったクスミが返しにくると悲しむんだ?
「何で?」
「だってそのお弁当はユノモトくんに渡したものなので」
「そうだけど」
「メデューさんは・・・」
「メデューサ!!」
「??」
クスミも茉のことをメデューサと呼んでしまっている。
いや、メデューになってはいるが。
そしてそれが自然すぎてオレが突っ込みを入れても気づかないでいる。
兄キか?
兄キがそう呼ぶからそれが自然になってしまったのか?
「メデューさんはユノモトくんに渡したから、ユノモトくん以外から返ってきたら悲しむと思います」
クスミはさっきの言葉に人物名を付け加えただけで、全く同じことを言った。
おかげでオレは意味がわからないままだ。
「例えばこのスタンプですが」
そう言ってクスミはNキャラが彫られた消しゴムスタンプを出してきた。
「これは先ほどユノモトくんの手に渡りましたが、ユノモトくん以外から戻ってきたら悲しみます」
「何で?」
「ユノモトくんがこれを気に入らなくて他の人に渡したのかなと思います」
「それはちょっと考えすぎでしょ」
「いえ、表情が気に入らないから怒って他の人に渡してしまったのかなとか、赤インクじゃなくて黒インクが良かったのかなとか」
「え・・・」
「本当は"でよ"も入れて欲しかったのかなとか、複数いるバージョンが良かったのかなとか、線がもっと太くて・・・」
「わかった、もうわかったから」
クスミが次第にマイナス発言ばかりしていくのが恐くて、オレは慌てて止めた。
「とりあえず渡した人以外から戻ってきたら何かあったのかと不安になるからやめた方がいいってことだよな?」
「はい」
「わかった。やっぱり自分で返すわ。変なこと言って悪かった」
というか、クスミに依頼していたら本人にメデューサと呼んでいただろうし、やめて正解だ。
やっぱりこれは自分で何とかするしかなさそうだ。
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