8 / 203
1.お見合いからの新生活
08.新居の夜
しおりを挟む
お風呂から上がり、用意していた肌着をつけ寝巻き代わりのスウェットを着ると、二階に上がる。
「マキナさん、お風呂が空きました」
ノックをしドア越しでマキナさんに伝える。
「分かった。ありがとう」
部屋に戻ると、カーテンが締まっていた。赤井さんが締めてくれたのか、自動で締まったのか。
すぐにでも、家や部屋の設備について訊いておかないといけないけど、もうこの時間じゃマキナさんにも訊けないか。
さしあたっては荷物整理だと気持ちを切り替えた。
バッグ二つの中身を空にすると、明後日の登校をイメージして必要なものを確認する。
靴下類、肌着、ブラウス……数日分の替えあり。制服はオーケー。
通学の靴、スポーツシューズ、ジャージに始まり運動に関するもの全般ダメ。
まあ、教科書・勉強道具類は支障がなさそうだけど、決定的に洗面道具類がない。
普段着、部屋着も欠乏してる。これは仕方ないか……。
月曜の時間割りにテキストをバッグに詰めて登校の準備をする。
それを終わらせると、携帯端末に不足品をメモっておくか。
と、その前に少し飲み物がほしいな。お茶でももらって来よう。
ダイニングに行ってお茶を煎れ、二階に戻るとソファーのローテーブルに湯飲みを置いて座る。
端末のメモアプリを起動して不足品を入力していく。
「明日のお買い物の時、家に寄ってもらって……」
家に残ってるのを集めてくればいいよね。
明日の行動予定を考えながら、窓の方を見ると締められたカーテンが目に入る。
まとめた行動予定もメモにしておく。湯飲みは朝、返すとして、もう寝ようかな?
照明リモコンを持って巨大なベッドに寝転んで、灯りを減光する。
携帯端末でネットニュースなんかを見ていたら……うつらうつらしてきた。
何か……虫の知らせ、みたいな何か。渇きを感じたり尿意を感じたりして、ふっと目が覚めたという瞬間だった。
遠くでノックの音が聴こえる……。
「──ふぁい? 何ですか……」
「キョウ君、少しいいかな?」
「マキナさん? ダイジョブです──」
まだ、ぼやける感覚で携帯端末の時刻を確認する。二十一時でそんなには遅くもない時間だ。
「──何ですか?」
声の方に目を向けると扉を少し開けて覗いているマキナさんがいた。
リモコンで照明を増光して、身体を起こすとベッドの縁に座ってマキナさんを見る。
おずおずと体を滑り込ませてマキナさんが部屋に入ってくる。寝巻きとかじゃなくローブ姿だ。
「──明日の買い物の話、ですか?」
「ああ、そう。そうだね……」
昼間の彼女とは違って歯切れが悪い。仕草がどことなくキョドっている。
なんとなく、その時が来たのだろうと察した。お見合いの返事をするや、家に招かれたのだ。
いつでも同居できる家が準備されていて、きっとこの日を待ち望んでいたに違いない。
かと言って、家族への紹介と顔合わせ、書類だけでも済ませられる結婚とは言え、その手順も決まらぬうちに早すぎでしょう。
「ボクもちょっと訊きたかったんです。部屋のことを」
「部屋? なんだろう?」
ソファーじゃなく、ためらいながらこちらへ歩を進めてくる。
「ここのカーテンはどうするんでしょう? お風呂のうちに締まってはいたんですが」
伏せ目がちにベッドまで辿り着くと、そっと隣にった。
「ああ、ドアのとなりにコントロールパネルがあってエアコンも操作できるよ」
なるほど……と、エアコンやカーテンは集中して操作できるんだ。
「それでクローゼットなんですが……」
「クローゼット? ああ、あれね。あそこの鏡を押さえると開くんだよ」
鏡壁の端を指さしてマキナさんが言う。まあ、それは発見した。
「それは分かったんですが、あそこまで鏡になってるのはナゼなんでしょう?」
「えっ? さあ、姿見代わりに鏡張りにしたんじゃなかったかなあ?」
遠い昔を思い出すような、虚空を見つめて呟くように言った。
あれ? 含みもなく本当に知らなそうだ。
「姿見代わりで便利ですけど、やり過ぎな気がします。それに……」
「それに?……」
「あの鏡、マジックミラーですよね?」
少し溜めてマジックミラーのことを訊いた。
「ほ、ほぉう……そ、そうだった、かな?」
いきなり、挙動が怪しくなった。今、思い出した感じだ。ただ単に忘れていただけ?
「マジックミラーにした利点、ってないですよね? 何でマジックミラーになんかにしたんでしょう?」
「さ、さあ。それは設計士とかに訊かないと分からないな……」
「そうなんですね……」
設計とか、施主の意向を反映するんだから注文主だろうマキナさんが知らないはずないよね。
「マキナさん、お風呂が空きました」
ノックをしドア越しでマキナさんに伝える。
「分かった。ありがとう」
部屋に戻ると、カーテンが締まっていた。赤井さんが締めてくれたのか、自動で締まったのか。
すぐにでも、家や部屋の設備について訊いておかないといけないけど、もうこの時間じゃマキナさんにも訊けないか。
さしあたっては荷物整理だと気持ちを切り替えた。
バッグ二つの中身を空にすると、明後日の登校をイメージして必要なものを確認する。
靴下類、肌着、ブラウス……数日分の替えあり。制服はオーケー。
通学の靴、スポーツシューズ、ジャージに始まり運動に関するもの全般ダメ。
まあ、教科書・勉強道具類は支障がなさそうだけど、決定的に洗面道具類がない。
普段着、部屋着も欠乏してる。これは仕方ないか……。
月曜の時間割りにテキストをバッグに詰めて登校の準備をする。
それを終わらせると、携帯端末に不足品をメモっておくか。
と、その前に少し飲み物がほしいな。お茶でももらって来よう。
ダイニングに行ってお茶を煎れ、二階に戻るとソファーのローテーブルに湯飲みを置いて座る。
端末のメモアプリを起動して不足品を入力していく。
「明日のお買い物の時、家に寄ってもらって……」
家に残ってるのを集めてくればいいよね。
明日の行動予定を考えながら、窓の方を見ると締められたカーテンが目に入る。
まとめた行動予定もメモにしておく。湯飲みは朝、返すとして、もう寝ようかな?
照明リモコンを持って巨大なベッドに寝転んで、灯りを減光する。
携帯端末でネットニュースなんかを見ていたら……うつらうつらしてきた。
何か……虫の知らせ、みたいな何か。渇きを感じたり尿意を感じたりして、ふっと目が覚めたという瞬間だった。
遠くでノックの音が聴こえる……。
「──ふぁい? 何ですか……」
「キョウ君、少しいいかな?」
「マキナさん? ダイジョブです──」
まだ、ぼやける感覚で携帯端末の時刻を確認する。二十一時でそんなには遅くもない時間だ。
「──何ですか?」
声の方に目を向けると扉を少し開けて覗いているマキナさんがいた。
リモコンで照明を増光して、身体を起こすとベッドの縁に座ってマキナさんを見る。
おずおずと体を滑り込ませてマキナさんが部屋に入ってくる。寝巻きとかじゃなくローブ姿だ。
「──明日の買い物の話、ですか?」
「ああ、そう。そうだね……」
昼間の彼女とは違って歯切れが悪い。仕草がどことなくキョドっている。
なんとなく、その時が来たのだろうと察した。お見合いの返事をするや、家に招かれたのだ。
いつでも同居できる家が準備されていて、きっとこの日を待ち望んでいたに違いない。
かと言って、家族への紹介と顔合わせ、書類だけでも済ませられる結婚とは言え、その手順も決まらぬうちに早すぎでしょう。
「ボクもちょっと訊きたかったんです。部屋のことを」
「部屋? なんだろう?」
ソファーじゃなく、ためらいながらこちらへ歩を進めてくる。
「ここのカーテンはどうするんでしょう? お風呂のうちに締まってはいたんですが」
伏せ目がちにベッドまで辿り着くと、そっと隣にった。
「ああ、ドアのとなりにコントロールパネルがあってエアコンも操作できるよ」
なるほど……と、エアコンやカーテンは集中して操作できるんだ。
「それでクローゼットなんですが……」
「クローゼット? ああ、あれね。あそこの鏡を押さえると開くんだよ」
鏡壁の端を指さしてマキナさんが言う。まあ、それは発見した。
「それは分かったんですが、あそこまで鏡になってるのはナゼなんでしょう?」
「えっ? さあ、姿見代わりに鏡張りにしたんじゃなかったかなあ?」
遠い昔を思い出すような、虚空を見つめて呟くように言った。
あれ? 含みもなく本当に知らなそうだ。
「姿見代わりで便利ですけど、やり過ぎな気がします。それに……」
「それに?……」
「あの鏡、マジックミラーですよね?」
少し溜めてマジックミラーのことを訊いた。
「ほ、ほぉう……そ、そうだった、かな?」
いきなり、挙動が怪しくなった。今、思い出した感じだ。ただ単に忘れていただけ?
「マジックミラーにした利点、ってないですよね? 何でマジックミラーになんかにしたんでしょう?」
「さ、さあ。それは設計士とかに訊かないと分からないな……」
「そうなんですね……」
設計とか、施主の意向を反映するんだから注文主だろうマキナさんが知らないはずないよね。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)
MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。
かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。
44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。
小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。
一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。
ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる