上 下
9 / 203
1.お見合いからの新生活

09.初めての夜 *

しおりを挟む
※本話には、直後から◆まで【性描写】があります。ご注意ください。
 ◆マークから、普通に戻ります。





「それだけ? 知りたいことは」

「そうですね……。今のところはそれだけでしょうか」

「また分からなかったら訊いてくれ。それで、明日は服を買いに行こうと思うけど希望とかある?」

 二人の隙間すきまめるように身体をせてくる。

「いえ、特には。本家? を訪問するのにさわりが無いものを選んでいただけたら。それと時間があれば家に帰る時間が欲しいです」

 マキナさんの体温を感じて身体をにががす。彼女の視線はボクをとらえてはなさない。

「そうだね……。買い物の帰りに家に寄ろうか」

「ありがとうございます。まだ、足りないものがあるって取りに行きたいので」

「うん……」

 ボクを逃がさないようにマキナさんのうでが腰に伸びる。さらに、こちらをうかがうように力を持つ視線。

「……まだ、使えるのに持って来ないと勿体もったいない、です、よね」

「君の好きにすればいい」

 逃げられないボクにマキナさんの顔が近づく。

「はい。また、運転、お願い……」

 ボクのくちびるふさがれる。

「どこでも連れて行く。だから心配しないで君はゆだねていればいい」

 息づかいを感じる──いや、いっそう強くなった吐息にってしまいそうな近さでベッドにたおんだ。

「は……はい……」

 ひじをついて、半身を起こした彼女は、ボクのスエットに手をかけた。おもむろがされていく。

 どのみち、もう止まれないだろう……それなら。ボクは、マキナさんのローブのヒモをほどく。

 身体をかたむけ、半身になりながらはださらしていくと、四肢ししがからまり合っていた。

「運転……よろしく……お願い……します……」

 その返事は、湿しめってうるんだ音しか聴こえなかった。



  ◆


 尿意にょういで目が覚めた。マキナさんのうで退けると、肌がこすれてバラの香りが起こった。まだソープの効果が残っている。

 携帯端末を探すとベッドから落ちていた。

 からまるあしをそっと外して身をよじりベッドから降りる。それをつかんで時間を確認すると七時前だった。

 ゆっくり眠ってしまった。

 生まれたままの姿で窓際まどぎわに行き、カーテンの向こうを覗くとうすい朝雲が見えるだけで晴天になりそうだ。

 ベッド回りに散らかった肌着やスエットをつかんで部屋に備わったトイレに駆けこむ。

 用をすませベッドに戻るとマキナさんを起こす。

「マキナさん、朝ですよ」

「ん……ん……」

 声をかけても生返事で起きる気配がない。起きてもらわないと、片付けも換気かんきもできない。

 起きてくるまでにシャワーをびようか?

 お手伝いの赤井さんは、もう来て朝食の準備を始めているだろうし、もうできている可能性もある。急がないと。

 行動が決まれば早い。替えの肌着や普段着を掴むと一階に下りた。

 お風呂まで行くと、ダイニングの赤井さんの気配が分かった。急いでぐと浴室に入りシャワーを浴びた。

 着替えをませるとダイニングの気配をさぐる。シャワーの音で赤井さんも気付いただろう。

 二階に戻って部屋に入るとにおいにおどろく。早いところ、部屋を片付けないと。


 再びマキナさんをするが反応はかんばしくない。照明リモコンで部屋を明るくして、強めに呼び体を揺すると薄目を開けてくれた。

「早く起きてシャワーを浴びてください。赤井さんはもう来ていますよ」

「ううう……分かった」

 この反応なら起きてくれるかな? 

 身体を起こしてベッドふちに腰かけるマキナさんを確認して、コントロールボックスに移動すると表示を見てカーテンの操作を読み解いてみる。

 そうしているうち、マキナさんは、寝ぼけまなこでのろのろ、こちらに歩いてくる。

「マキナさん、何か着てください」

 あわてて注意するけど気にめず、ドアのこちらに歩みってくるのでベッドの肌着やローブを集めに向かう。

 マキナさんはもうに廊下ろうかに出て行こうとしていた。取りあえず、その背中にローブをかける。

 面倒くさそうにそでを通してくれる。

「マキナさん、替えの下着はどこです?」

「部屋のクローゼット」

 それは分かるんだけど……。もう、当てにできそうにないので、となりにあるマキナさんの部屋にお邪魔じゃまする。

「ほぉ~」

 簡素と言うかかざりっけないガランとしている部屋だ。

 ドア近くの鏡の扉を開けて中に入り、たなから見付けた下着を適当にいくつか取ると風呂場に急ぐ。

 風呂場で追い着くとちょうど浴室に入りかけているマキナさんへ下着の替えを置いておくと告げた。

 次は自室のベッドの片付けか~。

 肩を落として部屋に向かおうとしているところで、赤井さんが入口にたたず微笑ほほえんで見ていた。
しおりを挟む

処理中です...