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1.お見合いからの新生活
10.新居での朝
しおりを挟む「おはようございます。朝から大変そうですね?」
「いいえぇ? 朝寝坊してしまったので……。おはようございます」
「お休みなんですから、ゆっくりして居らしたら、よかったのですよ」
「日曜は、私もゆっくりしていますから」と、にっこりして赤井さんは付け足す。
「そ、そうなんですね……」
それって、今朝はイベントがあっただろうから早く来た、と言っているに等しいですよ?
昨夜のことを見透かされていて顔から火を吹きそう……。
だけど……何でもない、いつもと変わらない……平凡な週末の朝の態を装った。
「朝食はできています。いつでも召し上がれますから」
「ありがとうございます。その……片付けが終わったら食べに行きますね」
「片付けは後になさったら、どうです?」
なんなら、わたくしどもの領分ですから任せてくださいと、なんとも説得力のあるお言葉をいただいた。
「ダ、ダイジョブです……」
分かっているけど……いつかは気にせず任せてしまえるようになるのかも知れないけれど、今はまだそこまで達観できるところまでにボクは到ってない。
そう赤井さんと立ち話をしている内にマキナさんが浴室から出てきた。ナイスタイミング!
「下着はこちらです」
「あ、ああ。ありがと」
改めて替え着の存在をマキナさんに知らせると、逃げるようにボクは部屋へ急いだ。
「マキナさん、こう言う時は……」
後ろで赤井さんが、何か言ってる。急いでいるボクは気にせず歩みを進める。
窓を開けていたので匂いは薄らいだ。掛け布団を確認すると、これは洗濯不可避だと分かる。
かなり染みついている。シーツは無惨で下まで透き通って浸みているが、マットが撥水加工でシーツの汚れていないところで拭うと汚れが落ちる。
シーツの汚れ部分をを包み込んで、端の方でマットレスを拭き上げた。
汚れものを抱えて下り、ランドリー室の洗濯機に突っ込もうにも全ては入らない。
掛け布団は避けるとしても、シーツと下着を一緒に洗うのはダメだよね?
ボクたちの肌着を握りしめて固まっていると、赤井さんがランドリーに顔を出した。
「キョウ様、食事になさってください。あとはやっておきます」
「すみません。お願いしていいですか?」
「もちろんです」
結局、赤井さんに任せてボクは逃げ出してしまった。恥ずかし~い。
ダイニングに入るとマキナさんの食事は終わりかけていた。
「早く食べにくれば良かったのに」
「ちょっと、部屋を片付けていましたから」
夕べは二人で汚しましたよね、と暗に皮肉を込めて言ってみた。
「赤井さんがしてくれるんだから、任せればいいんだよ」
君は、しなくていいと言っただろうと、確認してくる。ボクは、まだそれ程スレていませんから。
ましてや、自分の汚したものを易々と人に預けられはしない、今はまだ。
朝食は、焼き鮭とワカメと豆腐のお味噌汁だった。
食事しながら、今日の予定を確認する。食後ゆっくりしたあと十時頃に買い物に行くと決めた。
「──買い物の帰りに君の家に寄るから荷物を取ってくればいい」
「はい、ありがとうございます」
ああ、そう言えば、また気になる事ができていた。
「マキナさん、部屋のクローゼットの謎の続きなんですけど……。衣装のある中に鏡があると嬉しいですが、外面だと着替えたあとの確認にしか使えません」
比べる服を持って出て、外で体に当てて見ていたのでは、中から外へ何度も往き来しないといけない。
まあ、外にいてメイドさんに持って来させれば問題ないようなものだけど。
「それは、ベッドに服を並べておいて、それを体に当てて見比べれば外でも問題ないんじゃないか?」
そうか、その手もあるか……う~ん。
「ごちそう様。私は部屋にいる」
「はい」
考え込むボクを後目に食器を片付けコーヒーを汲むとマキナさんはダイニングを出ていった。
何か、まだ腑に落ちない感じだ。そう思って思い出す。マキナさんに組伏せられている時、全て女性に任せて天井のシミでも数えて……って、教えを思い出していたんだ。
でもね、ベッドの天蓋の天井を見てもシミなんてなかったんだよ。暗やみの中でボクとマキナさんの白い肌が映っていた。
そんなところまで鏡が……と思ってたんだけど。もしかして、鏡好きなだけ?
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