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3.喜多村本家に居候
118.鬼君レイニ様
しおりを挟むその大きい車が目前で停まると横のドアが開き人影が現れる。やはり後方の前照灯の眩しさで分かりづらい。
砲塔とかないし車は戦車ではなかったけど。
その後方からも人影が寄ってくる。真っ白なスーツ姿──ミヤビ様かな?
「伶瓊よ、そこにおるのがキョウじゃ」
「そうですか……」
人影は、やはりミヤビ様とその奥方だったよう。
ミヤビ様は人並みの身長なんだけど、それにお似合いの身長だ。ただし、高下駄を履いていなければ。
それから察するにレイニ様はかなり低い。ボクと同じくらいかな~?
「そなたが、モールとやらで騒動を起こしたキョウかや?」
「……はい」
う~ん、ちょっと違うけど肯定してる方がいいかな?
「なんと、男子がはしたない。その姿を衆目に曝してはならぬ──」
いきなり説教が始まる。ずっと聴いてなきゃいけないのかな? しかも跪いたまま、顔を伏せて。
「そもそも──」
「レイニよ。そろそろ良いのではないか? 皆のもの楽にして良いぞ。こなたが喜多村家当主マサキじゃ」
「マサキよ、世話になる。羽徳殿下が、そこなキョウとやらを新しく室に迎えると申され、初床を執り行うに当たり、余に断わりを入れると申すのでな」
「存じております。ささっ、ここでは落ち着きませぬゆえ、お部屋へご案内いたします」
「うむ、大儀である」
なんか面倒が面倒を喚んでる気がしてきた。因果応報ってヤツだけど……。
サキちゃんの先導で館に入りエレベーターで五階、ボクの部屋へ。
付いて歩いたけどレイニ様の着物が派手。花魁かよってくらい墨染め生地に花が咲き乱れてる。
何キロあるんだってくらい盛った帯結い。文庫結びの亜流、蝶垂れ結び?
結った髪に簪がいっぱい挿さってる。
廊下もカーペットが敷いてあるけど高下駄では歩きづらくないかな?
十センチはかさ増ししてる。
「面を上げよ」
「……はい」
応接間でソファーに座ったミヤビ様・レイニ様の前でひれ伏すと、お声がかかる。
「容色は……綺なるかな。生まれた子は余の継子となるが大切に育てるゆえ、安心するがよいぞ」(✳️『継子』まま子。血のつながらない子供)
やっぱり、変。高下駄で膝が高くなって着物の裾が捲れてるよ。まあそれは今、置いといて。
「それについては、お願いしたき儀がございます」
「これ」
サキちゃんが止める、けど。
「生まれたお子は、──」
「キョウ、よさぬか!」
「──わたくしが育てとうございます」
顔を手で覆うサキちゃん。顔を見合わせるミヤビ様とレイニ様。
「そなた……後宮に入りたいと申すか?」
「いいえ、手許で普通に育てとうございます」
レイニ様の射貫く視線がボクに刺さる。ボクはそれを受けて立つ。
「分かった。そなたを保傅と見做そう」
「えっと、それは?……」
「昇殿を許す。いかな出自なれど御子を市井に降す訳には行《ゆ》かぬ」
「…………」
サキちゃんの横顔を窺う。あ~、胃がねじれて辛そうな顔だね? ここまでが落としどころかな?
「ありがとう、ございます」
「で、では、初床の儀に移るかの?」
沈黙していたミヤビ様が口を開いて話を進める。
「是非もなし。禊の準備をせよ」
「「「はっ!」」」
お付きの人たちが承服して散っていく。はぁ~、お風呂入ってまたアレ、やるのか~。
白装束の人二人に前後を挟まれ、サザレさんが導《みちび》き、警護を代表して笹さんが従う。
まずトイレに行ってお尻をきれいにする。これ、マジだったんだ~。前の割れ目は言うに及ばず。
下半身を脱いだままお風呂へ。本館で良かったよ。すぐ隣だから。そこで一糸まとわぬ姿に。
お風呂では予行演習のままに、あらゆるところを探られる。危険物なんて持って無いっての。
検査が終わると磨きあげられ、お湯には浸からずシャワーで流すにとどめると、脱衣場へ戻る。
サザレさんの用意した肌襦袢を点検、合格すると晴れて一枚まとい人心地つく。
着せてもらうまで仁王立ちしてなきゃいけないのが地味につらかった。
「もう、あとはお酒飲んで、お餅食べたら終わりだっけ?」
「そうでございます」
小声でサザレさんに訊いてみると肯定する。とは言え、前後が介添えで横のサザレさんとは近づけない。
内緒話をしても丸聞こえだろう。介添えは、白い布巾で口許を覆って、その心情を表情からは読み取れない。
自室に戻るとリビングを抜けて寝室へ。そこでサザレさんや笹さんとはお別れだと思ったのに付いてくる。
寝室に入って歩が止まる。そこには、ミヤビ様のみならずレイニ様。そのお姿はボクと同じく白い襦袢すがた。
衝立の向こうにはサキちゃん、ユキ様、ショウ様、レンカ・ヒロ婦夫、警護・護衛たち、そして幼女ーズ……顔見知りが勢揃いしてる。
やめて~、みんな観戦──じゃなくて観覧するの?
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