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3.喜多村本家に居候
117.それはアリ地獄のような
しおりを挟む「あ”~~!」
「びっくりするよ、タンポポちゃん」
「なんでソレを切るのよ!」
「これじゃないと次はここまで高くなっちゃうよ?」
「だ~~。それでいいのよ」
小声で秘訣を言ってくるけど何が悪いか言ってくれないと。ちなみに羽衣さんが大富豪、続いて気更来、ボク、笹、打木の順。
マナちゃんはボクの膝を堪能して右にアリサちゃん、左にタンポポちゃんが寄りかかってボクの手配を覗きこんでて、かなり鬱陶しい。
「お茶をお持ちしました……」
「は~い!」
遠く、応接室の方からマサゴさんの声がする。お茶を持ってきちゃったよ。
「わたくしが受け取ってきます」
「えっ、いいの?」
「もちろんです」
歩鳥さんと斎木さんが出迎えてくれる。ついでに警護たちの四杯分も追加でお願いする。
「──そこでソレよ」
「え~? 切り札、使っちゃうと最後までいけないよ?」
「最後まで残してど~するのよ」
「え~……じゃあ、ほい」っとEを出す。
「パス」「パス」「パスです」「パス」
「ほら、そこでソレ」
「う、うん」
そこで5のペアを出す。そのあとペアの出し合いが続く。けどボクの番では位が高くなってて出す札がなくなり「パス」
「ほい、上がり」っと羽衣さんがAのペアで上がった。
「パス」でみんなを一巡、ボクもパス。羽衣さんの次の順の気更来さんが6のペアを出したので、次、ボクの8のペアを「これ」ってマナちゃんが出す。
なんかボクがやってる意味がないような……。
「もうそろそろ、終わろうか?」
「いえ、まだまだ」
「そうです、これからです」
新任の笹・打木コンビの旗色が悪い。すでに肌着姿まで剥かれてる。
「もう、負けを認めたら~?」
「そうそう」
対して気更来・羽衣コンビは余裕綽々。大富豪の地位をキープする羽衣さんと富豪・平民をボクと交代し合う気更来さんは無傷。
一度、地位が決まってしまうとなかなか抜け出せないんだよね、大富豪。
しかも、大富豪と大貧民は二枚ずつ、富豪と貧民は一枚ずつ、低位カードと高位カードを交換するのでなおさら。「革命」を分かってなさそうな新任の二人にはひっくり返せそうにないんだよね。
「もういいでしょう。バツゲームは笹さんと打木さん。今夜の夜番をしてね?」
「「えっ?」」
「キョウ様……」
「なんとお優しい」
「そんな~、勝ったの私たちなのに」
「勝ったから夜番は免除、ね?」
「なら負けたら夜番ができますか?」
「さ、さあ? それはそれ──」
「キョウ様、ズルいです」
「そーだそーだ。ひいきだ」
「もううるさい。ボクの言うことが聞けないっての?」
「そ、それは……」
いい加減、脚を解かないとしびれる。いや、もうしびれてる。
「あの~……」
「なに?」
歩鳥さんが聴いてきたので全力で乗っかる。
「遠くでキュリキュリ、言ってるんですけど……」
「なにそれ?」
「いや、戦車とかの無限軌道が立てる音、みたいな」
「夜中に近所迷惑なヤツがいるね」
なんかすごくイヤ~な予感、する。
「キョウ。キョウよ! 鬼君がいらっしゃるぞ」
部屋の入口の方からサキちゃんが呼ぶ。
「は~い。ちょっと……待って……」
「そなた、何しておる?」
「いや、ちょっと足がしびれて……」
ベッドで踞っているところにサキちゃんが現れた。
「ツンツン」
「ちょんちょん」
「や、やめて、びりびりするから~」
マナちゃんとアリサちゃんが足を突く。
「こんな時はね~」
「ぎゃ~、タンポポちゃん、やめて~」
タンポポちゃんがしびれてるのにマッサージしてくる。
「そなた、遊びすぎじゃ。出迎えに小ましな服に着替えておれ」
「遊んでな~い」
急いでスウェットから普段着に着替える。
「ミヤビ様と言い、その鬼君さんと言い。どうして思い立った時に行動するかな~?」
「そうですよね~」
「──って、なんでここに居るのさ?」
羽衣さんが脱いだスウェットを引き受ける。
「いえ、出ていけとは言われなかったので……」
「普通、気を利かせて出ていくでしょう?」
「そんなことより、早く着替えないと」
「う、うん……」
なんか誤魔化された。
「お前たち、我らが交代する。出ていけ」
「お前たちこそ。まず服を着ろ」
「た、確かに」
気更来さんが笹さん打木さんに反抗する。彼女らは剥かれて肌着姿のままでいる。
「確かにキュリキュリ言ってるね~。徐々に大きくなって聞こえてくる」
「キョウよ、出迎えるぞ。急げ」
「はいはい」
「はいは一回」
「はい!」
もうそれはいいから。
エレベーターで一階に降り、本館のエントランスから館の前に出て跪く。
ヘッドライトからは戦車なのか、どうなのか分からない。けれど装甲車よりは大きい車が騒音を立ててのろのろ来るのは分かる。
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