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3.喜多村本家に居候
154.義母の訪問
しおりを挟む「それで、ハノリ──ミヤビ様にご挨拶したいのですが?」
「あ~、今ふせっておりまして。応対できるか聴いて参ります」
「そなたのことは、伝えて置くゆえ、こたびは下がるがよいぞ」
寝室へ聞きに行こうとするとレニ様が応接室に現れて答える。
「これは……山級レイニ様? お初にお目もじいたします。蒼屋キョウ様を婿に迎えました喜多村ミズキと申します。以後、お見知りおきを」
現れたレニ様に跪いてミズキさんが答える。
慌ててボクも横に退き跪く。忘れてたけどレニ様って偉い人だったんだよね~。
「喜多村ミズキであるな。ハノリ殿下には伝えておく」
「は! どうぞよしなに」
「うむ、大儀である」
ミズキさんは頭を垂れたまま下がると踵を返し部屋を出ていく。
「義兄上はひれ伏さずとも良いのですぞ?」
「え? そう言うワケにもいかないでしょう?──」
義母様が額づく場面でそれはできません。
「──で、では、ミヤビ様にご報告してきます」
「そんなことより、先ほどの続きを話しましょうぞ」
「そんなことって」
「──何か?」
「いえ。少々お待ちください。ミヤビ様に」
「──あっ……」
レニ様の言い分は分かるけど義母の訪問は報告しないとでしょう。寝室のミヤビ様に知らせに行く。
「いかがでしたか?」
ミヤビ様への報告から戻るとレニ様が聞く。
「相変わらずです。つらいと言うほどではないのですが……だるそうです」
「そうですか。今宵はダメかも知れませぬ。明朝、お変わりなくば医者を喚びましょう」
「……そうですね」
病院に行くんじゃなく、医者を喚ぶんですね。サキちゃんは大丈夫って言ったけど、容態が変わらないならそうしてもらおう。
ボクたちは応接室に移動して訪問を待った。それからは、来客もなく時間だけがすぎる。部屋の前を通りすぎる足音はすれど部屋を訪れる者はいなかった。
「お食事の準備が調いました。迎賓館のホールへお越しください」
日が沈むと慌ただしくなる。サザレさんが食事へ呼びにくる。
「ありがとうございます、サザレさん。レニ様、ボクはミヤビ様の様子を見てきます」
「余も行きますぞ」
二人して寝室を覗く。レニ様は歩くのがつらそうなので待っていてくれたら良かったんだけど。
白シャツとスラックス姿のミヤビ様がベッド脇のイスに座っている。ジャケットを羽織るまでは着替えてらした。
「ミヤビ様、お加減はいかがですか?」
「うむ、大丈夫だ。食事くらいはな」
「そうですか。食事の報せが来ましたので参りましょう」
「義兄上、肩を貸してくだされ」
「え? はい」
レニ様が高下駄を取り出し、履くのをボクが介助する。これで、なお一層歩きにくくなったよ。
「参ろうか」
そう言いミヤビ様が左肘を突き出してくる。これって腕を組めってこと? ボクは、その腕に腕を絡める。
空いている左腕にはレニ様が腕を絡めてくる。すっごく歩きにくいよ? 見た目はボクが貴人に拉致されてる感じに見えない?
応接室まで進むと部屋の扉は開け放たれ、護衛・警護たちが整列してる。
「何? ホールまでの護衛?」
「まあ、そうです」
代表して笹さんが答える。過剰な態勢だよね。
「そちらの人は……白い人、戸隠さんと角師さんか。まだ知らない人がいるね」
「我らは、レイニ様の」
「あ~、そうですか」
レニ様の護衛とは絡まなかったので面識はなかったな。どうせみんな黒服に黒メガネなんで体型の違いくらいでしか判別できないし。
護衛十人ってエレベーターにみんな乗り込めないよ。精々、八人くらいしか乗れない大きさだし、どうするんだろう。
って、思ってたらあぶれた人は階段で降りるらしい。お疲れ様です。歩鳥・斎木・気更来・羽衣の四名が階段を駆け下りていく。
本館の一階から正面玄関を出て車寄せのリムジンに乗り込む。大げさだな~。同乗は戸隠さんと角師さん。
でも、レニ様に付き添っていたら移動に凄く時間はかかりそうではある。理に適ってるのか? すぐそこに迎賓館があるのに。
車だとぐるっと回りこんで迎賓館に移動する。ミヤビ様に支えられ車から降りると、ボクがレニ様の降車を介助する。
「「「ようこそ、いらっしゃいました」」」
車寄せから玄関ホールに入ると美少年の裸像群とともにメイドさんたちが整列して出迎えてくれる。
リムジンに乗りこまなかった護衛たちも、その奥で控えている。館の中を回って駆けつけたんだ。たびたび、お疲れ様です。
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