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3.喜多村本家に居候
160.サプライズ
しおりを挟む「おっと、そろそろ話が終わりそうじゃ」
マキナの話が終わりそうだとサキちゃんが話を打ち切る。
「──今後もご指導を賜りますようお願いいたします」
「──お願いいたします」
マキナに合わせて一礼する。会場から控えめな拍手が起こる。
拍手の勢いが落ちて頭をあげるとマイクをサキちゃんに返す。
「聞き及ぶものも居ろうが、マキナが建てた新居が暴徒に破壊された。よってしばらく、こちらに出向する采配を取った。キョウは狙われておるゆえ、新都には戻さず本家で匿う。新婚生活を送るにはちょうど良かろう」
「ちょっと、聞いてないよ」
ぷにぷにした横っ腹を突いてマキナの耳許で囁く。そりゃあ、マキナもこちらに来てもらうと、いつも一緒にいられるけど。
「あとで言おうとしたんだが……そう言うことだ。引き継ぎに手間取ったが今週で片付いたのでいいだろう」
サプライズになったろう? と悪びれず答え、前に座るタマちゃんたちに視線を移し眺めている。その表情は冷淡に嗤っている。
サプライズ──それって新居の部屋の秘密をばく露したお返しってこと? ゴクリ……それだと部屋に招き入れたボクが対象になるんじゃあ?
「こちらにも支店とかがあったんだね」
「いや、確かに支店はあるが出向って言ったろう。畑違いの職場だ」
「それって……大変じゃない?」
「まあ、大変だが商品を扱い売り付けるのは、どこでも一緒だ。芸の肥やしになる」
芸の肥やしって……職歴の間違いでは?
「新居は住めないだろうし、しょうがないか~」
「そうだな。家の修理には、もう数週間はかかる。それに……」
「それに?」
「いや、なんでもない」
そう答えたマキナは、にがい表情を一瞬したように見えた。
「こちらに住むってなると借家住まいとか?」
「いや、母屋──本館に部屋をいただいた」
「えっ? 本家で?」
まさかとは思うけど、五階のあの部屋じゃないよね?
「心配するな。三階の部屋だ」
「そ、そうなんだ~……ほっ」
ボクの懸念を察したのか充てられた部屋を教えてくれる。さすがに二所帯であの部屋には住めないよね~?
ってことは、もしかしてボク二重生活しないといけないの? あとで訊いとこう。
本格的にこちらで生活するとなると転校になるのか……こちらに誠臨学園の姉妹校とかあるのかな~? まあ、別に学園を中退でもいいんだけど。
ホールは歓談の時間になり挨拶に来られる姻族の皆さんの応対に費やされる。まあ、とても名前は覚えきれない。
誠臨学園の喜多村アオイ理事長先生が来られた時は、タマちゃん水無ちゃんが蒼くなった。
その中でも義従姉妹になるタンポポちゃんのお母さんのレンカさん、マナこと、マナミちゃんの母で義大叔母になるコデマリさん、アリサちゃんの母の喜多村家傍系の山吹タバサさんは婚姻予約──すなおに婚約と言おう──は、いいのか何度も確認してくる。その場では詳しく言えないので微笑みで誤魔化す。
そして……キタムラGHの香具羅院長。そう言えば、傍系って言ってたっけ。
思わず、その後ろにメイが居ないか確認してしまった。特にメイについて言及はしないけれども薄笑いして挨拶を済ませる。心臓に悪いよ。
「ど、どうして先生が?……」
見るからに武闘派体型の数学教師・五条ツバサ先生が最後に現れてびっくりする。
「あ~、オレも喜多村家の傍系なんだよ。と言うか、うちの傍系が喜多村家なんだが……」
「それって、先生は五條家の方ってことですか?」
まさかと思ってたけど、やっぱり五條の人だったんだ。
「まあ、そうなるな」
「それじゃ、ボクとマキナのことも分かってたってこと、ですか?」
「まあ、披露宴に出たのは挨拶だけじゃないんだが……」
静かに五条先生はうなずき、タマちゃん水無ちゃんを意味ありげに流し見ると二人を手招く。
「お前たち、無断休学は楽しかったか? 親御さんがお冠だ。お前たちの休暇も日曜までだからな。精々、楽しんでおけ」
そう言い、掌をおいた二人の頭を握りこむ。
「痛い痛い!」
「五条せんせ、セクハラ」
「何がセクハラだ。可愛い生徒を撫でてるだけだろう、ん?」
「分かりました、分かりましたから~」
「おみそが漏れる~、脳みそが~」
「漏れるわけなかろう」
とりま、タマちゃんたちだけで新都に返すのは心配だったけど五条先生がいれば安心だね。
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