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4.本家からの再出発
196.帰り途(みち)
しおりを挟む降りた客をやり過ごし、そのあとを付いてエスカレーターを上がる。
「マキナ様、キョウ様を連れて地下街を徘徊するのは、お勧めできません」
「すでに地下街にキョウ様がいらっしゃることは周知されているとお考えください」
「むぅ……そうか」
マキナがそう聞いて唸る。
「そんなに大変? こっちを見てくるだけみたいだけど」
「今のところ猫を被った狼だと考えていてください」
「そうなの?」
狼が羊の皮を被るなら、猫を被るのは虎かライオンだろう、とか言わない。
「仕方ないか。帰りにモールにより叔母に挨拶して来るか」
「どうしてモールなんかに?」
「言ったろう。次の勤務先だ」
「あ~~」
そうだっけ? 聞いたような聞かなかったような……。
「──ならモールでお昼にしようよ」
「……笹、打木、どう思う?」
お昼をモールでしようって提案したらマキナは、笹さんたちに相談する。
「食事だけでしたら、おそらく」
「平日の昼間ですからそれほど人は居ないかと」
「なら叔母に挨拶して食事にするか」
「やった~」
でもな~、マキナ食べられるかが心配だ。
改札まで戻って携帯端末で精算する。見送りだけなので入場料だけ。
改札を抜けるとフロントの広場に人の塊があってこちらを見ている。
「キョウ様、マキナ様、気をつけて」
「うん」
「──分かってる」
笹さんの注意に後ろの気更来・歩鳥の二人が両脇に回って固める。
「少年K、いやキョウくん──」
その集まりを避けて地下街の歩道に向かっていると声をかけられる。
えっ、ボク?
「──少し調子に乗ってるんじゃないかい?」
塊の人垣をかき分け出てきたサングラスの人が言う。たぶん男の子だと思う。
「Vチューバーのユウキです……」
気更来さんが耳打ちする。誰よ、ユウキって。
「余裕だね。僕のことなんか眼中にないってかい?」
そのまま集団と距離を取って進んでいると、また声をかけられる。そんなこと言われても知らない人から声をかけられて、どう返事したら良いか分からないもん。
「キョウ様に何の御用ですか?」
打木さんが代わりに聴いてくれる。
「護衛が口をだすな。キョウくんと話がしたいだけだ」
「何でしょう?」
マキナの顔を窺うと頷いたので答えてみる。
「君は恥ずかしくないのかい? 自らの身体を切り売りして人気を取るなんて」
「おっしゃる意味が分かりません」
「ハレンチな恰好で人前に出て恥ずかしくないのかと聴いているんだよ」
「…………」
何のことやらさっぱりだ。
「彼の動画の再生数にキョウ様の動画が迫っているのですよ」
「ボクの動画、ってなに?」
「ああ、そこからですか」
気更来さんの言うには、サガラの放送の切り抜き動画とやらが拡散され、バズってる?んだとか。知らんよ。
「キョウ様は動画投稿に一切関与しておりません」
「黙れ。護衛が口を利くな。キョウくん、そんなに人気が取りたいなら裸で走り回ったらどうだい?」
あ~、忠告じゃなく煽ってるのか? そんなことを言いにここまで来たの? て言うかボクのプライベートがだだ漏れで心配だよ。
「ありがとうございます。動画チャンネルを作ったら参考にさせていただきます」
「「な?!」」
ユウキくんのみならずマキナまで驚く。フロントホールじゅうでざわざわと呟きが交わされている。
「それではご機嫌よう」
さあ行くよとマキナを引っ張って歩く。
「そ、そんなこと、君の主人が許すかな~?」
大きなお世話だ。動画チャンネルなんか作らないし、ましてや裸で走ったりなんかしないんだから。
立ち尽くすユウキと取り巻きを残してボクたちは地下街の歩道を急ぐ。もうここを離れないと。
「キョウ、さすがに裸走りは許さんぞ」
「冗談に決まってる。売り言葉に買い言葉ってやつ」
マジに受け取らないでよ。
「──【速報】キョウ(少年K)ちゃん、自チャンネルで裸で走る宣言【キタコレ!】だってスレ立てられてます」
「冗談だって。ユウキくん?が煽ってきたからって書き込んでよ」
「書いてます。書いてますけど流れが早くて相手にされません」
「まあしょうがないか~。チャンネル、作るつもりもないし、そのうち忘れるでしょう」
「そんなこと言わずチャンネルだけでも作りましょう」
「そうです。そこで弁明しましょう、薄着で」
君たち、マキナが側で聞いてるのを忘れてない?
「そんなことより何? 人の動画で再生かせいでる輩がいるの?」
「いっぱい居ますよ。おそらく蒼湖放送は許可してるんじゃないかと」
「やっぱりサガラは許せん」
「相楽と放送は関係ないと思います。大本のスポンサーが関係しているかと」
「スポンサーってどこよ?」
「キタムラ・ショッピングモールとキタムラ・ホールディング、です」
「…………」
全然ダメじゃん。
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