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YAMATO

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Chapter3(臥籠編)

Chapter3-⑧【ヘビーローテーション】

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ジョージの呻き声と自分の叫び声が、頭の中でガンガン鳴ってる。
キーボードに手が付かない。
欲求は高まるばかりで、捌け口が見付からない。
苛立つイオリはワープロの電源を落とすと、ジムへ向かう。
フリーウェイトエリアに入ると、ジョージがいた。
「おはよう。」声を掛ける。
「おう、イオリ!今日は早いな。」
爽やかな笑顔が振り返った。
これがあのケージの中のJと同じ人物とは信じ難い。
「何だ、テンション低いな。」
ジョージが鳩尾にパンチを入れる真似をした。
「うん。」イオリは気のない返事をする。
どこまで記憶があるのか、分からない。
「まさかケージプレイにハマったとか?」
ジョージが悪戯っ子の様に笑う。
「覚えているの?」
イオリは驚いて聞き返す。
「当たり前だろ!
あれくらいで記憶なくすかよ。
あの快楽を忘れたら勿体ないだろ。」
ジョージが声を殺して笑う。
「だってあの時のジョージは尋常じゃなかったし…。」
イオリは未だ信じ難い。
「あれが俺の最高のプレイなんだ。
イオリだって、そうなんだろ?
素直に認めろ。
事実を受け入れろ。」
ジョージが肩を叩く。
「俺もゴウさんと会うまで、自分がSだと思ってた。」
潜めた声に耳を疑う。
「Jも?」イオリは目を丸くする。
「ああ、それまでMの経験なんてなかった。
でもゴウさんは一瞬で、俺の本質を見抜いたんだ。」
ジョージは懐かしげに語り出す。
 
ジョージが発展場『ナルシスジム』でバイトを始めたのは、三年前の初夏だった。
オーナーのゴウは沖縄のSMバーにも携わっていたので、ジョージがここを切り盛りする事になっていた。
立ち上げ一週間はゴウも立ち会い、仕事のノウハウを教わる。
初めての週末は朝方まで込み合った。
全裸でトレーニング出来るというコンセプトが珍しく、露出好きのゲイが殺到したの
だ。
受付はゴウが行い、ジョージは全裸に近い恰好でサポートをする。
得にベンチプレスの補助依頼が多く、アナルを押し付けては客に喜ばれた。
ジョージはSっ気を発揮し、Mの客を扱きまくる。
皆勃起してトレーニングする姿は圧巻だ。
気が合う相手を見付けた客は、奥のダークルームに消えて行く。
ジョージに纏わり付く客もいたが、筋トレのサポート以上の事はしない。
それはゴウの教えであった。
朝方始発が動くと、最後の客が帰っっていく。
清掃を終わらせると、レザーで武装したゴウがビールを持って労う。
「お疲れ。今日は盛況だった。
Jのサポートがウケてたから、受付はバイトを雇え。」
ゴウがオーナー目線で指示をする。
ジョージは受け取ったビールを一気に飲む。
喉が渇ききっていた。
欲情しきった客のサポートしていたので、気分が高揚している。
「ジムはどうだった?」
ゴウもビールに口を付けた。
「やはりMっ気のある奴が多いっす。」
ジョージが感想を言う。
「そうか。露出癖のある奴はMが多いからな。
このままだとバランスが悪い。
何とかしてSの客を増やせ。」
ゴウが新たな指示を出す。
「イベントをやるとか、Sは割引にするとか、アイディアを考えろ。」
ビールを飲み干したゴウが空き缶をベンチに置く。
 
「JはMの経験があるのか?」
ゴウはジョージの事をJと呼ぶ。
Gはゴウのコードネームだった。
「いや、経験ないっす。
生粋のSっす。」
ジョージは自慢げに答える。
「生粋のSか。」
ゴウはこの暗い部屋でもサングラスを外さない。
「なら、そこでベンチプレスをしてみろ。
マックスでやれ。」
ゴウが低い声で命じた。
ジョージは訝しく思いながらも、バーにウェイトを取り付ける。
140キロにすると、ブリッジして持ち上げた。
アルコールが回り、パワーが出ない。
3回までは挙がったが、次で潰れた。
「すいません。持ち上げてもらえますか?」
バーの下で、震える声を出す。
ゴウはそれには答えず、ダークルームの奥へ消えた。
 
 
(つづく)
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