妄想日記7<<DAYDREAM>>

YAMATO

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Chapter3(陽子編)

Chapter3-②【F・E・A・R】

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姿見に身体を映す。
少しは大胸筋が大きくなった気がする。
濡れたスパッツにケージがくっきりと浮かんでいた。
『これ見たら、テツオは何と言うかな?』
そう考えると、気持ちが高ぶる。
『遠足の前日みたいだ。』
ワクワクしながら布団に入る事は久しくなかった。
 
定時となり、パソコンを仕舞う。
主任がジロッと見たが、何も言わない。
「お疲れ様でした。」
スキップしている様に足取りが軽い。
「お疲れ様です。」
エレベーターに大門が乗っていた。
「ご苦労様。丁度良かった。
君の所へ行く所だったんだ。」
「私の所ですか?」
驚いて聞き返す。
「社長が季節外れのインフルになってな、重役会が中止になったんだ。
急に時間が空いたから、飯でもどうかと思ってな。」
「あっ、この後、テツオと会う約束なんです。
宜しければ、ご一緒しませんか?」
成り行きで誘ってしまう。
これで買い物は諦めるしかない。
 
「よっ、あっ、大門さんも一緒だったんですか。
これで飯代が浮いたな。」
テツオが人懐こい笑顔を向けた。
「テツオ…、その格好で来たのか?」
多少温かくなったが、まだ四月だ。
タンクトップにスパッツ姿のテツオは人目を引いた。
「えっ、ちゃんとシャツは着てるぞ。
それにな、筋肉は見せる為にあるんだ。
お前もマッチョになりたかったら、先ずは服からだ。
ねぇ、大門さん。」
振られた大門が曖昧に頷く。
「そういえばお前、買い物したかったんだろ。
服なら俺がコーディネートしてやる。」
「えっ、今日はいいよ。
又の機会に頼む。」
大門の手前、慌てて手を振る。
「予約時間にはまだ余裕あるな。
買い物する位の時間は充分にある。
私はそこの喫茶店にいるから、二人で行ってきなさい。」
腕時計を見た大門が勧めた。
 
「で、何処行きたいんだ?」
そう聞かれ、思い悩む。
ディルドも欲しいが、エロいウェアも捨て難い。
服屋なら試着室で歪な股間を見せられる。
「だったらテツオのセンスでコーディネートしてくれないか?」
「任せろ。最近ロスから直輸入してる店を見付けたんだ。
ゲイ丸出しのイカした店だ。
連れていってやる。」
「そこ迄、派手でなくていいんだけど。
皆見てるじゃないか。」
剥き出しの二の腕に言う。
すれ違う歩行者の視線が自分達に向いてる気がしたのだ。
「相変わらずだな。」
「えっ?」
「変わってないって事だ。」
テツオは大股で前を行く。
その広い背中を追う。
昔に戻った錯覚を覚える。
 
「少しは成長したと思うけど。
テツオだって、筋肉付いと言ったじゃないか。」
「違う、内面の事だ。
お前は回りを気にし過ぎだ。
派手かどうかは自分で決めろ。」
「うん、努力してみるよ。」
素直に言葉が出た。
こんな事言ってくれるのはテツオ位だ。
『これって、元彼だから?』
 
「お前は俺の自慢だった。
俺の回りって、馬鹿ばかりだろ。
頭の切れるシオンが眩しかったんだ。
なあ、お前が良ければだけど、もう一度…。」
クラクションがテツオの声を掻き消す。
「えっ、聞こえないよ。」
「馬鹿、何度も言わせるな。」
テツオは点滅する信号を無視して、横断歩道を渡ろうとする。
右折したバイクが突っ込んできた。
「危ない!」
急ブレーキとタイヤの擦れる音が耳を劈く。
スリップしたバイクは制御不能だ。
轟音に振り返ったテツオが立ち尽くす。
 
斜めになったライトがテツオを照らす。
光の輪の中でシルエットが揺れる。
「テツオ!」
シオンの叫びも喧騒に飲み込まれた。
 
 
(つづく)
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