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Chapter7(気場編)
Chapter7-⑦【半分の記憶】
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「ねぇ、シオンさん、ちゃんと聞いていますか?」
陽子の声で慌てて前を見る。
バックミラーに膨れっ面が映っていた。
「勿論、聞いているよ。
た、滝に連れていってくれるんだろ?」
「そう、パワースポットなんですよ。
最初は肝試しで行ったんですけど、妖精達が話し掛けてくるんです。」
「肝試し?妖精?」思わず繰り返す。
「私はそう呼んでます。
心を無にすると、誰かが語り掛けてくるの。
きっと妖精だわ。」
陽子は意外と運転が上手い。
お陰でついうとうとしてしまう。
昨夜はアキノリとの抱擁で眠りは浅かった。
瞼が重く、気を抜くとくっついてしまう。
「どんな事を話してくるんだ?」
何でも良いから口を動かしていないと、睡魔に負けそうだ。
「色んな事よ。
私が質問すると、答えてくれる事もあるの。
だから今日は沖縄に戻った方が良いか、聞いてみるつもり。
シオンさんも何か聞いてみると良いわよ。」
「それって霊じゃないのか?」
肝試しと聞いて不安が過る。
「違うわ、妖精よ。
だって聞いてみたの。」
「誰に?」
「話し掛けてくる人に。
そしたらまぶやーだと答えたわ。」
「まぶやーって?」
「うーん、何て言うんだろ。
敢えて言うと魂かな。」
背筋が冷たい汗が流れた。
『それは妖精ではなく、霊だよ!』
反論を何とか飲み込む。
ここで陽子の機嫌を損ねる訳にはいかない。
右側に東シナ海が続く。
テツオとの事を聞いてみようかと思った。
馬鹿らしいと思いながらも、今は神にもすがりたい気持ちだ。
但し霊でなければと、注釈を付けた。
「ここから降りるわよ。」
陽子はロープに掴まり、慣れた様子で降りていく。
スニーカーを履いてこいと言われた意味がやっと分かった。
陽子の様に身軽に降りれない。
ドン臭いと思われようが慎重に降りていく。
それでも何度も足が滑った。
滝の音が聞こえ出した。
身体が震える。
気温が一気に下がった気がした。
大きな池が見える。
グリーンに染まる水を湛え、神秘的だ。
確かに何かがいそうだ。
一番奥に滝が見えた。
岩場から水流が池に流れ込む。
「ここって泳げるのかな?」
「今は禁止になっているの。
何人も溺れているから。」
変な事を聞いたと後悔する。
「お弁当を食べましょう。
早起きして作ってきたの。」
陽子が膝の上にランチボックスを広げた。
この神聖な場所で食事する事が躊躇われる。
だが陽子はそんな風には思わない様だ。
「卵とポークでカラシが隠し味なんです。
辛いのは大丈夫ですか?」
陽子がサンドイッチを差し出す。
受け取る手が震える。
ここの寒さは異常的だった。
瞑想する陽子がぶつぶつ言っている。
シオンはここから早く立ち去りたい。
辺りの森は熱帯にいる事を実感させた。
深い緑は原始的だ。
それは神秘的を通り越し、不気味さを漂わせていた。
陽子が早く目を開けてくれる事を願う。
水面に波紋が出来た。
突然出来た波紋はどんどん大きくなり、岸に広がっていく。
辺りを見回す。
波紋の出来た訳が分からない。
雨も降ってなければ、葉っぱも落ちてない。
『どうして波紋が?』
シオンは恐怖を覚える。
「ねぇ、そろそろ行かないか?」
声を掛けるが、陽子は微動だにしない。
『落ち着け、落ち着け。
怖いと思うから怖いんだ。』
心の中で念ずる。
動かない陽子を見て、恐怖は加速し出した。
(つづく)
陽子の声で慌てて前を見る。
バックミラーに膨れっ面が映っていた。
「勿論、聞いているよ。
た、滝に連れていってくれるんだろ?」
「そう、パワースポットなんですよ。
最初は肝試しで行ったんですけど、妖精達が話し掛けてくるんです。」
「肝試し?妖精?」思わず繰り返す。
「私はそう呼んでます。
心を無にすると、誰かが語り掛けてくるの。
きっと妖精だわ。」
陽子は意外と運転が上手い。
お陰でついうとうとしてしまう。
昨夜はアキノリとの抱擁で眠りは浅かった。
瞼が重く、気を抜くとくっついてしまう。
「どんな事を話してくるんだ?」
何でも良いから口を動かしていないと、睡魔に負けそうだ。
「色んな事よ。
私が質問すると、答えてくれる事もあるの。
だから今日は沖縄に戻った方が良いか、聞いてみるつもり。
シオンさんも何か聞いてみると良いわよ。」
「それって霊じゃないのか?」
肝試しと聞いて不安が過る。
「違うわ、妖精よ。
だって聞いてみたの。」
「誰に?」
「話し掛けてくる人に。
そしたらまぶやーだと答えたわ。」
「まぶやーって?」
「うーん、何て言うんだろ。
敢えて言うと魂かな。」
背筋が冷たい汗が流れた。
『それは妖精ではなく、霊だよ!』
反論を何とか飲み込む。
ここで陽子の機嫌を損ねる訳にはいかない。
右側に東シナ海が続く。
テツオとの事を聞いてみようかと思った。
馬鹿らしいと思いながらも、今は神にもすがりたい気持ちだ。
但し霊でなければと、注釈を付けた。
「ここから降りるわよ。」
陽子はロープに掴まり、慣れた様子で降りていく。
スニーカーを履いてこいと言われた意味がやっと分かった。
陽子の様に身軽に降りれない。
ドン臭いと思われようが慎重に降りていく。
それでも何度も足が滑った。
滝の音が聞こえ出した。
身体が震える。
気温が一気に下がった気がした。
大きな池が見える。
グリーンに染まる水を湛え、神秘的だ。
確かに何かがいそうだ。
一番奥に滝が見えた。
岩場から水流が池に流れ込む。
「ここって泳げるのかな?」
「今は禁止になっているの。
何人も溺れているから。」
変な事を聞いたと後悔する。
「お弁当を食べましょう。
早起きして作ってきたの。」
陽子が膝の上にランチボックスを広げた。
この神聖な場所で食事する事が躊躇われる。
だが陽子はそんな風には思わない様だ。
「卵とポークでカラシが隠し味なんです。
辛いのは大丈夫ですか?」
陽子がサンドイッチを差し出す。
受け取る手が震える。
ここの寒さは異常的だった。
瞑想する陽子がぶつぶつ言っている。
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陽子が早く目を開けてくれる事を願う。
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波紋の出来た訳が分からない。
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「ねぇ、そろそろ行かないか?」
声を掛けるが、陽子は微動だにしない。
『落ち着け、落ち着け。
怖いと思うから怖いんだ。』
心の中で念ずる。
動かない陽子を見て、恐怖は加速し出した。
(つづく)
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