妄想日記1<<ORIGIN>>

YAMATO

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Chapter21(略奪編)

Chapter21-⑬【桜】

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マスク男が飛び蹴りするが、部厚い広背筋に弾き返される。
「ダイキチは相撲とレスリングで、学生チャンピオンになった男です。
加減出来ない性格なので、入院くらいじゃ済みませんよ。」
意識が遠のく中、嘲笑する三浦が見えた。
万事休すと思った時、這い蹲ったユーキがダイキチの背後に辿り着く。
両手を合わせ、人差し指を突き出すと、アナルに突き刺した。
「ぐわぁ!」ダイキチは悲鳴をあげ、両手を離した。
ダイキチが尻を押さえながら、ユーキを睨み付ける。
ユーキは座り込んだまま後退りした。
荒い呼吸を繰り返し、ダイキチと睨み合う。
身体が動かない。
ワンチャンスしかなさそうだ。
「おい、ノロマなデブ!
お前の相手はこっちだ!」
マスク男が挑発する。
身長は160センチ台の半ばだ。
ダイキチとの差は30センチ近くあり、体重に至っては半分に満たない。
真っ赤な顔のダイキチが突進した。
マスク男も向かって行く。
直前でマスク男は身を屈め、大理石を利用したスライディングに切り替える。
流血が滑りを加速させた。
滑った跡が赤く染まる。
股下をすり抜ける時に、思い切りマラを蹴り上げた。
股間を押さえたダイキチが悶絶する。
頭の下がった瞬間がチャンスだ。
それ見逃さず、首筋を蹴り上げる。
ダイキチが膝を付き、大の字に倒れた。
 
「おい、親分!お前の頼みの綱もこの様だ。
さあ、どうする?」
マスク男が小馬鹿にする。
顔が強張り、笑みが消えていく。
「こんな奴らは最初から当てにしていません。
信じるのは自分だけです。」
内ポケットからサバイバルナイフを出す。
刃先に微かな光りが集まる。
『これさえあれば、私は何でも出来る!』
三浦は遠い過去を思い出した。
『私はこれで化け物も倒したんだ!』
ナイフの柄を握り直す。
「私の計画を台なしにしやがって!
お前だけは許しません!」
ゆっくり立ち上がると、ナイフを振り翳す。
こんな小男に馬鹿にされた事が我慢ならない。
そしてマスク男に目掛けて、振り下ろした。
マスク男は足を上げて、ナイフをヒールで受け止める。
その足が着地すると、逆の足で顔を蹴り飛ばされた。
ヒールが鼻に食い込み、鈍い音が響く。
鮮血が飛び散る。
鼻を押さえた掌が赤から漆黒へ変わっていった。
 
いつしか大音響は途絶え、外からサイレンが近付く。
「とっととトンズラしようぜ。
裏道はこっちだ。」
マスク男がドアとは反対側に走り出す。
「さすがGoGoだな。
裏事情に詳しい。」
タケルに背負われ、マスク男の後を追う。
「ちょっと待って!
腰が抜けて、走れないよ!」
DVDを持ったユーキがふらつく足取りで追い掛ける。
パトカーの脇を抜けて、人だかりに紛れ込む。
沢山の野次馬が溢れている。
「何があったんだ?」
「俺、中にいたんだけど、暗くて分からなかった!」
興味本位の野次馬達の噂話が聞こえてきた。
タケルがウインクすると、ユーキが察する。
「噂で聞いたんだけど、三浦って男が錯乱状態になって、ナイフを振り回したらしいよ。」
ユーキは野次馬の一人に話し掛ける。
「マジかよ!錯乱した三浦って男が、ナイフで人を刺したんだって!」
話を聞いた男は別の男に伝えた。
『噂』と『らしい』が取れて、次々と広がっていく。
「これでよし。ヤマトさん、大丈夫か?」
道端に降ろされ、タケルが顔を覗き込む。
「うん、頭が痛いけど、大丈夫。
それよりタケルの背中は?」
立ち上がって、タケルの背後に回る。
流血は乾き始めていた。
「これくらい平気さ。」
タケルが微笑んだ。
「あれっ、マスクマンは?」
ユーキが辺りを見回す。
一緒に探すが、見当たらない。
「あれって誰だったんだろう?」
ユーキは首を捻る。
俺には分かっていた。
『ミサキ、ありがとう。』
心の中で、礼を言う。
 
「ねぇ、ねぇ、腹減らない?
祝勝会しようよ!
今日の勝因は何だと思う?」
ユーキの腹が鳴る。
「間違いなくユーキの浣腸がMVPだ!」
タケルが褒める。
「でしょ!俺もそう思ってたんだ!」
ユーキの明るい笑い声に救われた。
気丈に振る舞うユーキの頬に涙が零れる。
「可笑し過ぎて涙が止まらないよ。」
ユーキの震える肩にひとひらの桜が舞い落ちた。
また起き上がれと、エールを送っているみたいだ。
 
 
(完)
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