2 / 42
2:毒ロリとメイド
しおりを挟む
斬殺されたと思ったら、なぜか美少女になっていた。
ついでに広い室内のベッドの上にいて、周囲にはメイドらしき女たちまで侍っている。
意味が分からない。
「いみがわからない」
剛太郎は、口から出た言葉の拙さに慄然としつつ、鏡を再び凝視する。百二十センチ程度の小さな女の子が映っていた。
ただの少女ではない。白に近い銀髪を腰までたらし、病的に白い肌の矮躯を、黒い衣服で包む、不吉な美少女だ。
剛太郎の内部で、危機感が醸成された。
生まれ変わり? あるいは、前に特殊な趣味を持つ先輩の道場生が話していた異世界転生というものだろうか。それで、少女の姿になっているだと? そんな馬鹿な。
「これは、マズいな」
剛太郎の独り言を聞きつけたメイドたちが、歌うような声で反応する。
「なにが~マズいのでございますか~?」
「朝食は、まだですが~?」
「が~?」
「「「が~? ホウッホ~ホウッホウッホ」」」
メイドたちは、奇妙なコーラスを入れ始めた。
三人のメイドたちは皆、整った顔に無表情を乗せている。いずれも鼻が高く整った顔をしており、なでつけた黒髪も美しく似合っておいた。
綺麗で知的な外見でありながら、一々鬱陶しいメイドたちを、剛太郎は問いただす。
「おまえたちは、なんだ?」
メイドたちは、顔を見合わせた。
「お嬢様つきの~」
「メイド~」
「で~す~」
「すまんが、しゃべるのは一人にしてくれるか? ムダにハナシがながくなる」
剛太郎からの要求を聞くや、メイドたちは顔を見合わせる。
「「「やです」」」
三人のメイドたちは、見事にハモっていた。
こいつら、鬱陶しい。剛太郎はイライラをぶつける。
「なんで、だ!」
「「「仕事がなくなっちゃうからで~す」」」
「わかったよ。で、おまえたちはオレつきのメイド? なのだな。オレはダレだ。ジョークでいってはいないぞ。せつめーしろ」
剛太郎は、厳しい主人のような態度で、メイドたちを詰問する。
ただし、外見はいかに美しくとも、やせっぽちで舌足らずな少女なので、迫力に欠けていた。
返事も当然、敬意や真剣味に欠けるものだった。
「お嬢様は~」
「お嬢様なの~」
「デス~」
メイドたちは、踊りのリズムだけは
「……どこのおじょうさんで、なまえはなんだ」
鬱陶しさを我慢して、剛太郎は話を促す。三人のメイドたちは、互いに何度か顔を見合わせてから、歌うように答える。
「治癒魔法の権威~オスロン男爵家の御令嬢~」
「名前は~ミオ・オスロン~」
「実は三女~」
「「「末っ子~」」」
「やっぱり一人がしゃべれ」
「「「いやで……」」」」
またハモらせたメイドたちを、剛太郎は細く短い手で制する。
「ことわったらカイコだ。チョージョっぽいヤツだけしゃべれ」
俺がお嬢様? とまどいながらも、ならばと、剛太郎は解雇をチラつかせた。
「はい」
すると、メイドたちはあっさりと引き下がった。
「オレは、ミオ・アスロンといとかいう、オジョウさまなのか」
「そです」
「そうか」
「ちなみに、アスロン家は治癒魔法だけではなく、毒魔法についても権威!。特にお嬢様は毒が大得意なので、まだ十二歳なのに、ミス・ポイズンの異名をお持ちなのです! よ! 毒女。ミス・ポイズン!」
メイドはなぜか得意気で、不躾で失礼だった。
「なんとなくわかった。マホウのくだりはよくわからんがな」
どうやら、本当に異世界転生とやらになっているようだ。
これからどうしたものか。考えるが、状況が異常過ぎて思考がまとまらない。
黙る剛太郎を見たメイドが、仕事を思い出す。
「では、朝食をご用意いたします」
「いや、ねる」
「え?」
剛太郎は、取りあえず二度寝することにした。
一度に色々なことが起きすぎている。充分な睡眠をとってから食事もたっぷりと摂取し、風呂につかろう。でなければ、かつて豪胆でなった剛太郎も、落ち着いてものを考えられないというものだ。
知りたいことも考慮することも多すぎる中、剛太郎は敢えて寝る決断をした。
しかし――
「ミオ・オスロン。迎えに来た」
無遠慮に扉をあけ放って侵入してきた、妙に美形な金髪の男によって、剛太郎の二度寝は遮られた。
ついでに広い室内のベッドの上にいて、周囲にはメイドらしき女たちまで侍っている。
意味が分からない。
「いみがわからない」
剛太郎は、口から出た言葉の拙さに慄然としつつ、鏡を再び凝視する。百二十センチ程度の小さな女の子が映っていた。
ただの少女ではない。白に近い銀髪を腰までたらし、病的に白い肌の矮躯を、黒い衣服で包む、不吉な美少女だ。
剛太郎の内部で、危機感が醸成された。
生まれ変わり? あるいは、前に特殊な趣味を持つ先輩の道場生が話していた異世界転生というものだろうか。それで、少女の姿になっているだと? そんな馬鹿な。
「これは、マズいな」
剛太郎の独り言を聞きつけたメイドたちが、歌うような声で反応する。
「なにが~マズいのでございますか~?」
「朝食は、まだですが~?」
「が~?」
「「「が~? ホウッホ~ホウッホウッホ」」」
メイドたちは、奇妙なコーラスを入れ始めた。
三人のメイドたちは皆、整った顔に無表情を乗せている。いずれも鼻が高く整った顔をしており、なでつけた黒髪も美しく似合っておいた。
綺麗で知的な外見でありながら、一々鬱陶しいメイドたちを、剛太郎は問いただす。
「おまえたちは、なんだ?」
メイドたちは、顔を見合わせた。
「お嬢様つきの~」
「メイド~」
「で~す~」
「すまんが、しゃべるのは一人にしてくれるか? ムダにハナシがながくなる」
剛太郎からの要求を聞くや、メイドたちは顔を見合わせる。
「「「やです」」」
三人のメイドたちは、見事にハモっていた。
こいつら、鬱陶しい。剛太郎はイライラをぶつける。
「なんで、だ!」
「「「仕事がなくなっちゃうからで~す」」」
「わかったよ。で、おまえたちはオレつきのメイド? なのだな。オレはダレだ。ジョークでいってはいないぞ。せつめーしろ」
剛太郎は、厳しい主人のような態度で、メイドたちを詰問する。
ただし、外見はいかに美しくとも、やせっぽちで舌足らずな少女なので、迫力に欠けていた。
返事も当然、敬意や真剣味に欠けるものだった。
「お嬢様は~」
「お嬢様なの~」
「デス~」
メイドたちは、踊りのリズムだけは
「……どこのおじょうさんで、なまえはなんだ」
鬱陶しさを我慢して、剛太郎は話を促す。三人のメイドたちは、互いに何度か顔を見合わせてから、歌うように答える。
「治癒魔法の権威~オスロン男爵家の御令嬢~」
「名前は~ミオ・オスロン~」
「実は三女~」
「「「末っ子~」」」
「やっぱり一人がしゃべれ」
「「「いやで……」」」」
またハモらせたメイドたちを、剛太郎は細く短い手で制する。
「ことわったらカイコだ。チョージョっぽいヤツだけしゃべれ」
俺がお嬢様? とまどいながらも、ならばと、剛太郎は解雇をチラつかせた。
「はい」
すると、メイドたちはあっさりと引き下がった。
「オレは、ミオ・アスロンといとかいう、オジョウさまなのか」
「そです」
「そうか」
「ちなみに、アスロン家は治癒魔法だけではなく、毒魔法についても権威!。特にお嬢様は毒が大得意なので、まだ十二歳なのに、ミス・ポイズンの異名をお持ちなのです! よ! 毒女。ミス・ポイズン!」
メイドはなぜか得意気で、不躾で失礼だった。
「なんとなくわかった。マホウのくだりはよくわからんがな」
どうやら、本当に異世界転生とやらになっているようだ。
これからどうしたものか。考えるが、状況が異常過ぎて思考がまとまらない。
黙る剛太郎を見たメイドが、仕事を思い出す。
「では、朝食をご用意いたします」
「いや、ねる」
「え?」
剛太郎は、取りあえず二度寝することにした。
一度に色々なことが起きすぎている。充分な睡眠をとってから食事もたっぷりと摂取し、風呂につかろう。でなければ、かつて豪胆でなった剛太郎も、落ち着いてものを考えられないというものだ。
知りたいことも考慮することも多すぎる中、剛太郎は敢えて寝る決断をした。
しかし――
「ミオ・オスロン。迎えに来た」
無遠慮に扉をあけ放って侵入してきた、妙に美形な金髪の男によって、剛太郎の二度寝は遮られた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…
アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。
そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!
追放された俺の木工スキルが実は最強だった件 ~森で拾ったエルフ姉妹のために、今日も快適な家具を作ります~
☆ほしい
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺は、異世界の伯爵家の三男・ルークとして生を受けた。
しかし、五歳で授かったスキルは「創造(木工)」。戦闘にも魔法にも役立たない外れスキルだと蔑まれ、俺はあっさりと家を追い出されてしまう。
前世でDIYが趣味だった俺にとっては、むしろ願ってもない展開だ。
貴族のしがらみから解放され、自由な職人ライフを送ろうと決意した矢先、大森林の中で衰弱しきった幼いエルフの姉妹を発見し、保護することに。
言葉もおぼつかない二人、リリアとルナのために、俺はスキルを駆使して一夜で快適なログハウスを建て、温かいベッドと楽しいおもちゃを作り与える。
これは、不遇スキルとされた木工技術で最強の職人になった俺が、可愛すぎる義理の娘たちとのんびり暮らす、ほのぼの異世界ライフ。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
俺たちYOEEEEEEE?のに異世界転移したっぽい?
くまの香
ファンタジー
いつもの朝、だったはずが突然地球を襲う謎の現象。27歳引きニートと27歳サラリーマンが貰ったスキル。これ、チートじゃないよね?頑張りたくないニートとどうでもいいサラリーマンが流されながら生きていく話。現実って厳しいね。
スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~
みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった!
無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。
追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる