決闘で死んだ俺が凶悪なロリ令嬢として転生してしまったので、二度と負けないために最強を目指して妖魔との戦いに身を投じることにした

呉万層

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42:教師と教え子の利益について

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「わたくしは、ナンナ・イリノ・ライアドール。ライアドール男爵家の者よ。ライアドール夫人とお呼びなさい」 


 能面女の本名をミオが知れたのは、三十畳ほどもあるやたら広い部屋の中でだった。


 講義と実技両用の部屋らしく、広大な部屋の半分は、筆記用具の置かれた机に、壁際の大きな本棚、黒板などの備品が一通りそろっていた。


 加えて、部屋のもう半分は、手すりのついた鏡の壁で三方を囲まれていた。

 
 バレエ教室のようだった。


 能面女改めライアドール夫人の簡潔な自己紹介を聞いたミオの反応も、簡潔だ。


「わかった。続けろ」


 一瞬で、部屋の中の空気が緊迫した。


 ミオにはケンカを売る気はなくとも、周囲はそうは思わない。ライアドール夫人も同様だ。


「……続けろ、ですって? 教えを乞う立場なのに、態度が悪いんじゃあないの?」


 当然の反応だったが、ミオは意に返さない。


「馬鹿を負いうな。お前は教える俺は教わる。対等だ」


「自分勝手な物言いですわね。私は、時間と労力をかけて貴女に知識と経験を授ける。教わった貴女は、得をするだけではなくて?」


「違うな。講義するというのは、教える側にも利があるのだ。自分の持つ知識や経験を、全く違う人間、知識も経験lも常識も違う存在に、どう教えるのが正解か、考えなければならない。使う言葉は適切か、説明の時系列はあっているかなどを、だ。そうして、自身の人間性や思考力を鍛え、知識の深化を促すのだ」


「教わる側にとって、都合がいいように思える言説ね」


 言葉ほど、ライアドール夫人の声に拒絶の色はなかった。

 
 うなづける部分もあると判断したようだ。


「もしも思考を止めたなら、どんな経験豊富な教師であっても、ベテランのルーチンワーカーになりさがる。堕落だな」


「教わる側の存在によって、堕落を防いでやっている、と?」



「そうだ」



「わたくしの若いころなら、考えられない発言ね」



「だろうな。だが時代は変化し、人もそれに習う。受け入れろ」


 ミオの傲慢な物言いに毒気を抜かれたライアドール夫人は、大きなため息一つ吐き出した。

 
 ため息を、長尺で吐き出してからライアドール夫人は、長身をのっそりと動かして、ミオに近づく。


 瞳には、目撃者にも物証にも乏しい通り魔事件に直面したベテラン刑事のような諦観と、やる気に満ちた若手刑事の熱意ある輝きが宿っていた。


「よろしい! 個性的な生徒には、それに見合った教育をくれてやりましょう」


「楽しみだ」


 ミオは挑戦者の笑みを浮かべて、ライアドール夫人の複雑な瞳を見据えるのだった。
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