異世界ぎきょうだい不仁義~異世界にダークエルフとして転生したら、再会した弟分がハイエルフの令嬢になっていた~

呉万層

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50 揉めごと

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 俺は何を言って、なにをやっているのだろう。いや、いたのだろう。カタリンがここ最近の放浪生活とは違う衣装と装飾品で彩られていたせいか、敬うべき淑女として扱ってしまった。


 言動を顧みた政信の体温は、高度経済成長期の物価のように、急上昇していると自覚した。
 政信はダークエルフのため、目の前のカタリンほどは紅くなっていないはずだが、紅黒くはなっているだろう。政信は、いかにカタリンが見目麗しとはいえ、口説くような真似をするとは、思ってもみなかったのだ。


 日本人としての記憶が戻ってから初めて、あるいは改めて、政信はカタリンを女性として認識した。


 超美人で可愛いじゃん、俺の弟分。などと、女性として意識していた。


 恥ずかしさのあまり、顔を覆って、床の上を転げまわりたくなる衝動に駆られる。インフルエンザや落ち武者の与える熱病にかかっても、ここまで紅くはなるまい、と、いうくらい顔をリンゴのようにしているカタリンも、同じような心情に違いなかった。


 政信とカタリンは、顔を背けて押し黙るしかなかった。


「二人とも冷静になった? だとしたら助かるわね。部屋が地獄の釜みたいに暑くなっちゃって、こまっていたのよー」


 ヤレヤレとばかりに、半笑いの顔で、珠緒は首を振った。
 アメリカ製のカートゥーンに出てくる、嫌われ者のクラスメートがするような、鬱陶しい仕草だった。


 だが、政信とカタリンの間に流れる、砂糖をハチミツ漬けにした上に、ミルクチョコレートとホワイトチョコレートをかけて煮しめたような空気を変える効果はあった。


 珠緒の態度に、複雑な感謝の気持ちを乗せた罵声が、政信とカタリンから飛ぶ。


「うるせえな。タマ、元々お前が余計なことを言うからこんなことになったんだろ」


「そうっすよ。アンタがボクを売ろうとしたから、こんな格好をしてるんすよ。うらぎりもの!」


 カタリンのいう通りだった。


 なぜカタリンがウェディング・ドレスを着ているかと言えば、珠緒が苦し紛れに出したロクでもない提案――人身売買――のせいだからだ。


 珠緒は、カタリンを嫁としてアンダウルスに紹介することで、報酬を得ようとした。
 恐るべきことに、アンダウルスは興味を示した。お陰で、今カタリンは、ウェディング・ドレス姿となっていたのだ。


「売ったとは人聞きが悪いわね。地位も資産もある優良な結婚相手を紹介してあげただけじゃない。感謝して欲しいくらいだわ」


「太守閣下は、貴顕で資産もお持ちです。しかし、アンデットの首領です。結婚生活は危険で悲惨なものになりかねないではありませんの。仲間を売っておいて、感謝しろとはいかがかと思います。最高の淑女であるわらわも、感情的になりそうでしてよ。なんなら、頭からカジリつくっすよ!」


 前半はお嬢様風にしゃべり、最後に悪ガキ風に変ずるとは、器用な奴だ。


 感心しつつも、野犬のように牙をむくカタリンが飛び掛かる前に、政信は珠緒に詰め寄る。


「北の岬で流れた結城氏の評判が噂通りなのか? 仲間を売ったというか、背中から仲間を撃ったとかいわれてたけど」


「マサ、ここでそれを言う?」


「いいタイミングだろ。タマが脱走した理由も、ハッキリしそうだしな」


「わたしの誠意を疑っているの?」


 珠緒は、打ちひしがれたかのように、顔を俯けた。
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