王太子殿下の拗らせ婚約破棄は、婚約者に全部お見通しです

星乃朔夜

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午後のお茶会にて

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今日も今日とて、婚約者アリシア・ドウセンバルク公爵令嬢とのお茶会。
……だが僕は、今日こそ言うと心に決めていた。

「アリシア・ドウセンバルク公爵令嬢。僕は君との婚約を破棄する」
「君の言動には、もう愛想が尽きた」

――嘘だ。本当は好きだ。誰よりも、ずっと。
けれどアリシアのあの“全部お見通しですわ”みたいな目が気に入らない。
僕より何でもできて、いつも落ち着いていて、ちっとも動じない。
……もっと僕を気にしてほしいのに。

「殿下。婚約破棄の件、畏まりました」
「では、こちらの書類にサインをお願いします」

あまりに平然とした態度に、思わず声が荒くなる。

「君はどうして……そんなに淡々としていられるんだ」
「そういうところが、僕は大っ嫌いなんだ」

アリシアは小さく首を傾げると、落ち着いた声で言った。

「あら殿下。誰が“結婚そのものをやめる”なんて言いました?」
「婚約者という関係を終わらせて、次のステップ――結婚いたしましょう、という意味ですのよ」
「あなたの“婚約破棄”は、とても分かりやすかったですわ」

僕は思わず頬を赤らめた。
まさか、そんなに見透かされていたとは。

「殿下。結婚なさるの? なさらないの?」
「……する」
「では、ここにサインをどうぞ」

その時の僕は気づかなかった。
書類を差し出すアリシアの顔が、こっそりと花が咲くように嬉しそうだったことを。
後から侍女に聞いてやっと知ったのだ。

「殿下も素直になればよろしいのに。
あれだけ回りくどく求婚して、バレバレでしたわよ」

……本当に、僕は彼女には頭が上がらない。

アリシアは家に帰ると、侍女たちに囲まれながら飛び跳ねる勢いで喜んでいたらしい。
できれば、それを僕の前でやってほしいものだ。
いや、これからは夫婦として一緒にいる時間も増える。
いずれ見られる日が来るだろう。

そして今日も、婚約者同士――いや、夫婦として仲良くお茶会をしているのであった。
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