21グラムの劇場-another story/L*a*b*

Gateau

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死人の器

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主は言った。
「素敵なトリックとお手並みだったわ。でもね、彼女の中身は欲望にまみれて使えない。貴方...騙したのね。」
そう言われることはわかっていた。
「どうぞ、始末するなり薪にするなり。」
「あら、そんなことはしないわ。」
私は少し驚いて主の顔を見た。
「別に必要のない殺生はしないの。あのね、面白いことを考えたのよ。」
主は私に向き直って言った。
「貴方に彼女を入れたいの。いいでしょ?」
「...え?」
「復讐終えた貴方は今や感情の欠落した、死人も同然。私ね、人に中身をいれるのも試したかったの。」
貴方は丁度いい器だわ。
そう言って主は楽しそうに目を細めた。
「貴方にとっても悪い話じゃない筈よ。感情が芽生えて普通の人になれるんですもの...上手くいけばね。」
私が...彼女になる?
「私の予定だと、彼女が貴方の中で復活する訳じゃなくて、あくまで貴方のベースになるのよ。あぁ、それにもしかしたら...彼女の才能も引き継げるかもね。」
最後の言葉に私は目を見開いた。
私が一番望んだもの。
そして、とうの昔に諦めたもの。
「美術の、才能...」
「ほら、悪いな話じゃないでしょ?まぁ、貴方に拒否権は無いのだけどね...」
いつになく上機嫌な主。
一度、いや、何度も諦めた私の人生。
もし、今からでも遅くないのなら...
「...貴方を、信じるわ。」
「あら、過信しないで頂戴?面倒だから。」


こうして、私は彼女を取り入れた。
私の思考。私の感情。私の美術。
全てはオリジナルではなく、彼女ベースの模倣。
それで幸せかどうか?

ごめんなさい。
まだそこまで感情を理解できてないの
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