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1~拉致された公主の異国生活~
クレームが少ない料理店
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「はい!本日のランチできたよー!茉莉ちゃん、運んで!」
「はい!マスター!すぐに運びます!」
マフィアのひとり息子茉莉は拉致された異国の街に馴染むため、父藍月の判断で街の料理屋でアルバイトを開始した。
拉致される前は通っていた名門男子校の校則でアルバイト禁止だったので茉莉、人生初のアルバイトである。
そもそも茉莉を育てていた偽物の両親は裕福だったのでアルバイトをする必要性がなかった。
慣れない異国でのアルバイトだが茉莉は楽しく働いている。
ちなみに異国なので言語の壁はあったが生来、賢い茉莉はお世話係であるレンとの会話や藍月の愛人でレンの兄ユンの指導で短期間で異国の言語を習得した。
なのでアルバイトで言葉の壁に悩むことはないが、茉莉には別の壁が存在した。
それは『天然』という壁である。
「お待たせしました。本日のランチとお飲み物の茘枝サイダーです!」
「おいおい!ランチは合ってるけど、お飲み物が違うよ!?俺は檸檬ソーダって注文したんだ!」
「え!?申し訳ございません!すぐに檸檬ソーダをお持ちします!」
「あ~!いいよいいよ!茘枝も檸檬も似たようなもんだから!」
こんな具合に微妙に注文を間違えるはアルバイトなら新人にありがちだが、茉莉の失敗は次元を越えることがある。
「いらっしゃいませ!こちらのお席にどうぞ」
「注文は『いつもの』で!」
常連客に常連客風をふかされた茉莉が困っていないか一緒に働いているレンが様子を見ていると茉莉は特に動揺した様子もなく料理屋の大将ことマスターに向かって告げた。
「はい!阿片1ダースですね?マスター、阿片入りまーす!」
『いつもの』注文を危険薬物1ダースと解釈された常連客は慌てて、茉莉の勘違いを正した。
「違うよ!茉莉ちゃん、俺の『いつもの』は『お子さまランチ』!恥ずかしいから『いつもの』って注文をしてるの!」
お子さまランチを堂々と注文できない常連客に対して茉莉は突然しんみりするとお詫びする以前に語りだした。
「お子さまランチですか……。僕も幼い頃にレストランで食べました。外国の旗が料理にささっていて楽しかったです。まさか!自分が将来、異国に拉致されるなんて幼い頃はなにも知らず!」
唐突に泣き出した茉莉に常連客はぎょっとして、レンも度肝を抜かれた。
自分の注文で茉莉のホームシックを聴かされた常連客は焦った様子で大将に助けを求めたが大将は調理に集中して無視である。
「僕を売り飛ばした偽の両親はユンさんからもらった大金で今頃ラスベガスとかで豪遊してるんだ!それか……ハイパーメディアクリエイターが豪邸持ってそうな島で優雅に暮らしてる!理不尽だと思いませんか!?」
ハイパーメディアクリエイターが豪邸持ってそうな島ってなんやねんと、常連客は困惑したが、とりあえず自分の気持ちを正直に伝えた。
「俺の注文で超ヘビーな茉莉ちゃんの人生を吐露されても困るよ!お子さまランチを早く持ってきてくれ!ランチ休憩時間が終わるから!」
「うわーん!父の日に肩を叩いたら喜んでくれた父さんの笑顔も、母の日にカーネーションをプレゼントしたら抱き締めてくれた母さんの笑顔も全部、偽物で嘘だったんだ!内心では16歳まで僕を育てて売ったら、優雅にイビザ島で暮らそうとか考えていたんだ!」
ついに具体的な島の名前まで出して泣いている茉莉に対して常連客はお手上げとなり、慰めにかかった。
「元気出して!茉莉ちゃんには今はレンちゃんがいるだろ?それにマフィア『藍珠幇』のボスの御曹司なんて凄いじゃないか!イビザ島にいる偽物の親なんて忘れちまえ!」
茉莉の偽の両親はユンに始末されたのでイビザ島には居住していないが、レンは茉莉が少し泣き止んだところで常連客のお子さまランチを運んできた。
「はい!お子さまランチ!今日は俺がおごる。茉莉を慰めてくれてありがと!茉莉、少し休憩してこい。気持ちが落ち着くまで」
レンに促された茉莉は涙目で頷くと大将にお詫びをして休憩室に行ってしまった。
「茉莉ちゃん、本当に大丈夫かい?ちょいと情緒不安定じゃないか?お子さまランチで号泣されたの3度目だよ?」
常連客がお子さまランチを食べながらぼやくとレンはテーブルを拭きながら口を開いた。
「茉莉には俺がいるから平気だ。泣いたら俺が慰めればいい!」
「そんなもんかい?しっかし!茉莉ちゃんが最初に間違えた阿片1ダースって誰のオーダーだよ?」
常連客が不思議がると今まで沈黙していた大将が平然と答えを教えた。
「ありゃ、週1で店に来る、お婆さん客の定番メニューを茉莉ちゃんが聞き間違えてる。阿片1ダースじゃなくて正確にはアワビ1ダース」
アワビ1ダースも阿片1ダースレベルに訳が分からないが、お婆さんが週1で食べてよいものか理解に苦しむ料理だ。
常連客が食べ終わって、店から出ると大将はレンに小声で告げた。
「ほら、賄いを泣いてる公主様に持っていきな」
「ありがと……。茉莉、もう泣いてないといいけど」
レンが心配しながら休憩室に入ると茉莉はテーブルに突っ伏して眠っていた。
泣き疲れたのかとレンが起こそうとしたら茉莉が寝言を言ったのである。
「マフィアのボスになったらイビザ島を襲撃して偽物両親殺す……」
いい加減、イビザ島から離れろとレンは呆れたが、勘違いでも怒りと理不尽は人間の原動力にもなると知っているので、茉莉の偽の両親殺すの気概だけは認めた。
「茉莉、賄い食べたら仕事だからな!」
眠っている茉莉をレンが起こすと茉莉は寝惚けているのか、こう呟いたのである。
「夢で偽の両親の生爪を剥いでた」
思考が十分にマフィアになりつつ茉莉のアルバイト生活は続く!
End
「はい!マスター!すぐに運びます!」
マフィアのひとり息子茉莉は拉致された異国の街に馴染むため、父藍月の判断で街の料理屋でアルバイトを開始した。
拉致される前は通っていた名門男子校の校則でアルバイト禁止だったので茉莉、人生初のアルバイトである。
そもそも茉莉を育てていた偽物の両親は裕福だったのでアルバイトをする必要性がなかった。
慣れない異国でのアルバイトだが茉莉は楽しく働いている。
ちなみに異国なので言語の壁はあったが生来、賢い茉莉はお世話係であるレンとの会話や藍月の愛人でレンの兄ユンの指導で短期間で異国の言語を習得した。
なのでアルバイトで言葉の壁に悩むことはないが、茉莉には別の壁が存在した。
それは『天然』という壁である。
「お待たせしました。本日のランチとお飲み物の茘枝サイダーです!」
「おいおい!ランチは合ってるけど、お飲み物が違うよ!?俺は檸檬ソーダって注文したんだ!」
「え!?申し訳ございません!すぐに檸檬ソーダをお持ちします!」
「あ~!いいよいいよ!茘枝も檸檬も似たようなもんだから!」
こんな具合に微妙に注文を間違えるはアルバイトなら新人にありがちだが、茉莉の失敗は次元を越えることがある。
「いらっしゃいませ!こちらのお席にどうぞ」
「注文は『いつもの』で!」
常連客に常連客風をふかされた茉莉が困っていないか一緒に働いているレンが様子を見ていると茉莉は特に動揺した様子もなく料理屋の大将ことマスターに向かって告げた。
「はい!阿片1ダースですね?マスター、阿片入りまーす!」
『いつもの』注文を危険薬物1ダースと解釈された常連客は慌てて、茉莉の勘違いを正した。
「違うよ!茉莉ちゃん、俺の『いつもの』は『お子さまランチ』!恥ずかしいから『いつもの』って注文をしてるの!」
お子さまランチを堂々と注文できない常連客に対して茉莉は突然しんみりするとお詫びする以前に語りだした。
「お子さまランチですか……。僕も幼い頃にレストランで食べました。外国の旗が料理にささっていて楽しかったです。まさか!自分が将来、異国に拉致されるなんて幼い頃はなにも知らず!」
唐突に泣き出した茉莉に常連客はぎょっとして、レンも度肝を抜かれた。
自分の注文で茉莉のホームシックを聴かされた常連客は焦った様子で大将に助けを求めたが大将は調理に集中して無視である。
「僕を売り飛ばした偽の両親はユンさんからもらった大金で今頃ラスベガスとかで豪遊してるんだ!それか……ハイパーメディアクリエイターが豪邸持ってそうな島で優雅に暮らしてる!理不尽だと思いませんか!?」
ハイパーメディアクリエイターが豪邸持ってそうな島ってなんやねんと、常連客は困惑したが、とりあえず自分の気持ちを正直に伝えた。
「俺の注文で超ヘビーな茉莉ちゃんの人生を吐露されても困るよ!お子さまランチを早く持ってきてくれ!ランチ休憩時間が終わるから!」
「うわーん!父の日に肩を叩いたら喜んでくれた父さんの笑顔も、母の日にカーネーションをプレゼントしたら抱き締めてくれた母さんの笑顔も全部、偽物で嘘だったんだ!内心では16歳まで僕を育てて売ったら、優雅にイビザ島で暮らそうとか考えていたんだ!」
ついに具体的な島の名前まで出して泣いている茉莉に対して常連客はお手上げとなり、慰めにかかった。
「元気出して!茉莉ちゃんには今はレンちゃんがいるだろ?それにマフィア『藍珠幇』のボスの御曹司なんて凄いじゃないか!イビザ島にいる偽物の親なんて忘れちまえ!」
茉莉の偽の両親はユンに始末されたのでイビザ島には居住していないが、レンは茉莉が少し泣き止んだところで常連客のお子さまランチを運んできた。
「はい!お子さまランチ!今日は俺がおごる。茉莉を慰めてくれてありがと!茉莉、少し休憩してこい。気持ちが落ち着くまで」
レンに促された茉莉は涙目で頷くと大将にお詫びをして休憩室に行ってしまった。
「茉莉ちゃん、本当に大丈夫かい?ちょいと情緒不安定じゃないか?お子さまランチで号泣されたの3度目だよ?」
常連客がお子さまランチを食べながらぼやくとレンはテーブルを拭きながら口を開いた。
「茉莉には俺がいるから平気だ。泣いたら俺が慰めればいい!」
「そんなもんかい?しっかし!茉莉ちゃんが最初に間違えた阿片1ダースって誰のオーダーだよ?」
常連客が不思議がると今まで沈黙していた大将が平然と答えを教えた。
「ありゃ、週1で店に来る、お婆さん客の定番メニューを茉莉ちゃんが聞き間違えてる。阿片1ダースじゃなくて正確にはアワビ1ダース」
アワビ1ダースも阿片1ダースレベルに訳が分からないが、お婆さんが週1で食べてよいものか理解に苦しむ料理だ。
常連客が食べ終わって、店から出ると大将はレンに小声で告げた。
「ほら、賄いを泣いてる公主様に持っていきな」
「ありがと……。茉莉、もう泣いてないといいけど」
レンが心配しながら休憩室に入ると茉莉はテーブルに突っ伏して眠っていた。
泣き疲れたのかとレンが起こそうとしたら茉莉が寝言を言ったのである。
「マフィアのボスになったらイビザ島を襲撃して偽物両親殺す……」
いい加減、イビザ島から離れろとレンは呆れたが、勘違いでも怒りと理不尽は人間の原動力にもなると知っているので、茉莉の偽の両親殺すの気概だけは認めた。
「茉莉、賄い食べたら仕事だからな!」
眠っている茉莉をレンが起こすと茉莉は寝惚けているのか、こう呟いたのである。
「夢で偽の両親の生爪を剥いでた」
思考が十分にマフィアになりつつ茉莉のアルバイト生活は続く!
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