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お手紙ものがたり
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モモがミモザ王子のお供としてラン・ヤスミカ領への旅立ってしまったことでミシェルはへこんでいた。
「道中でモモとミモザ王子に何かあったら!」
そう言って心配し続けるミシェルに対して父クロードは少々あきれ顔で慰めの言葉をかけた。
「案ずることはない。モモは武術にも優れている。ミモザ王子を危険に晒すような醜態は見せまい」
「そうではなく!私が心配なのは旅の途中でモモとミモザ王子が深い関係になってしまうことです!14歳同士が恋に落ちたら27歳の私など勝負にならない!」
「え?ミシェルが気にしているポイントってそこか?」
ミシェルは美少年が大好きで、特にモモを熱愛している以外は、聡明で優秀なシルバー家嫡男なのだが、モモが絡むと途端に思考が極端になる。
穏やかそうで実は情熱的な長男が悩み散らかしている姿を眺めながらクロードは息を吐いた。
「ミシェル。モモはミモザ王子の近習……つまり、側近になったのだ。あの子はバカではない。主君に関係を迫るような愚行はすまいて」
「ですが!ラン・ヤスミカ領までの道中をモモとミモザ王子がキャッキャウフフしながら楽しんでいると思うと嫉妬して夜も眠れません!!」
「キャッキャウフフって……。お前は本当にモモのことでは嫉妬深いな。そんなに心配ならば、ラン・ヤスミカ家別邸に手紙を出せばよかろう?」
モモからクロード宛に無事にラン・ヤスミカ領に着いたと連絡がきている。
ミモザ王子はモモの友達という身分でユーリとリン夫婦の屋敷に滞在することまでクロードはモモからの手紙で知っているのだ。
モモは不遜だが根は一途な性格であり、ミシェルを裏切る真似はしないだろうとクロードは確信しているがミシェルの思い過ごしは止まらない。
「私が手紙を送っても返事が1通も来ません!普段なら(死ね!)(殺すぞ!)(眼球えぐるぞ!)ってひと言くらい返信を寄越すのに!」
「その返信……来ても嬉しいのか?大方、ミシェルが手紙を送りまくるのでモモは意図的に無視をしているのだろう。うざくて」
「うざくても(くたばれ)くらい書いてほしいです!このままでは宮廷での仕事に集中できませぬ!」
苦悩しているミシェルの形相を見てクロードは、やれやれと思いつつ書簡を記すことにした。
書簡を送る相手はミモザ王子である。
このままモモのことばかり気にしていたらミシェルはダイアナ王女の側近としての役目を果たせない。
それはシルバー家としても困るので、クロードパパは息子の恋の悩みを解決してやることにした。
「ミシェル。私がモモにミシェルに短文でも息災か知らせるよう手紙を書けと伝えておく。だから案ずるな。次期、手紙が届く」
モモの主君であるミモザ王子に対してモモにミシェルへの手紙を書くよう命じてくださいとクロードは書簡に記してラン・ヤスミカ領へと早馬を出した。
書簡は無事にラン・ヤスミカ家別邸に届いたが、クロードからのお願いを読んでいたミモザ王子はニヤリとしながらモモを見た。
「ミシェルはモモから手紙が来なくて悩んでおる。意地を張らずに書いてやったらどうだ?」
あまり無視を続けるとミシェルがラン・ヤスミカ領まで押しかけてしまうぞ、とミモザ王子がからかうとモモは赤面しながら唇を尖らせる。
「モモ。冗談抜きに僕とモモの仲をミシェルに疑われるとダイアナ姉上にもご迷惑になる。命令だ。ミシェルに手紙を書け」
「命令なら書きますよ。仕方ねーな!」
そんなわけでミモザ王子の配慮でミシェルのもとに愛しいモモからの手紙が届いた。
「ミモザ王子にまで迷惑かけるなクソ野郎って内容でしたがモモが息災でよかった!父上、これで宮廷での出仕も頑張れます!」
「お、おお……!それはよかった。ホッとしたぞ」
ミシェルが嬉しそうに出ていくと少し経ってからクロードの執務室にステフ、マックス、ヒナリザの美少年トリオが入ってきた。
彼らもシルバー家ではミシェルの愛人として暮らしている。
愛人筆頭のモモとは3人とも仲良しでシルバー家でも大切にされていた。
「おお!どうしたお前たち?3人揃って?ミシェルならば出ていったぞ?」
不思議そうにしているクロードの顔を見ながら、3人を代表して1番年長のヒナリザが遠慮がちに手紙の束を出した。
「申し訳ございません!この手紙の束……」
「フム。モモがお前たち3人に送った手紙ではないのか?」
クロードが手紙に触れずに問いかけると1番年下のステフが明るく言ったのだ。
「これね!モモ様がミシェル様宛に書きためたお手紙です!頃合いがきたらミシェル様に渡せって!」
「つまり、モモは最初から手紙をミシェル宛に書いていたということか?頃合いは……ミシェルの心配症が頂点に達した瞬間か!やれやれ……!」
やはり、モモは素直ではないとクロードが苦笑いしているとスラリと背が伸びたマックスが真剣な顔で頼んできた。
「こちらのモモ様からの手紙をクロード様を介してミシェル様にお渡し頂きたいのです。俺たちがずっと隠し持ってたとミシェル様に知られるのは……」
「わかっておる!ミシェルの嘆きを知りながら手紙を秘密にしていたのは気まずいであろう?たとえモモの命令でもな」
「はい……。ですから当主であらせられるクロード様からミシェル様に……」
おずおずとヒナリザが懇願するとクロードはキッパリと告げた。
「ミシェルはそんなことでは怒らん。だから、モモが託した手紙はヒナリザ、マックス、ステフが渡しなさい。それが筋というもの」
今度からモモに意地を張りすぎて周囲を巻き込むなと忠告しなければ……クロードは心にそう決めた。
「手紙の件は心配するな。それより……ヒナリザとマックスはそろそろ学業に専念する頃合いだ。大学と王立士官学校への推薦状は用意している。シルバー家の一員として各々励め」
ミシェルの愛人として拾われたヒナリザとマックスはシルバー家の縁者として将来に向けて羽ばたく時期にきている。
ステフは最年少なのでまだ屋敷で勉強していく予定であった。
「こうなれば3人は私の息子のようなもの。学業に励むのはよいが無理はするなよ」
クロードがそう告げると、ヒナリザとマックスは丁寧に礼を述べたが、ステフはキョトンとしている。
「クロード様?僕たちが息子みたいな存在なら、リン様はなんで嫌いなの?リン様は本当のご子息様でしょう?」
リンはシルバー家では微妙な立ち位置の庶子で、すでにラン・ヤスミカ家に嫁いでおり、父クロードとの仲はけして円満ではない。
ステフを黙らせようとヒナリザとマックスは焦ったが、クロードは心底意外そうな表情で言ったのだ。
「リンはどうも私を憎んでおるが、私はリンを憎んだことは1度もない。疎んだことはあるが」
「疎むと憎むって同じだよ?」
ステフが小首を傾げるとクロードは幼子に言い聞かせるよう答えた。
「疎むは親しめず遠ざけること。憎むは激しく嫌うこと。ステフ。まったく意味は異なる」
「そうなんだ!?じゃあ!クロード様はリン様のことが嫌いじゃないってお伝えしたほうがいいです!」
お手紙にそう書けばリン様が喜ぶよ、と微笑むステフの無邪気さを見ながらクロードが黙り込むと執務室に再びミシェルが入ってきた。
「ステフ、マックス、ヒナリザ!ここにいたのか!?モモからの手紙を見せようと思ったら部屋にいなくてさがしたよ!」
ヒナリザとマックスがモモが託した手紙をどう切り出すか顔を見合わせていると、ステフが満面の笑みでミシェルに抱きついた。
「ミシェル様!僕たちからのドッキリプレゼント!お渡ししたいからお部屋に行こうよ!」
「ドッキリ?なにをくれるんだい?では部屋に行こうか?父上、失礼します」
ミシェルと美少年トリオが執務室から出ていくとクロードは息を吐いて遠くラン・ヤスミカ家にいるリンを思った。
「仕方ない。嫁いでから15歳で反抗期している三男に手紙を書こう」
リンはクロードを殺すために毒酒をたびたびシルバー家に送りつける反抗期を迎えていた。
その毒酒で今のところ1人も死者は出ていないのが現状なのだが。
そんなリン・ケリー・ラン・ヤスミカだって父クロードが誠意ある手紙を送れば反抗期が治るかと思われた。
しかし、クロードが手紙を書き送ってもリンからは牛乳配達よろしく毒酒が届けられる。
果実酒のラベルに【父上必殺】と刻まれ、もはやそういう銘柄のようであった。
「あらまあ!またリンから果実酒が届きましたの!?クロード毒殺用の?」
クロードの正妻でリンの育ての母ローズ夫人が微笑むとクロードは「うーむ」と唸った。
「リンにはお前を憎んだことはないと手紙を書いたのになぁ。ちゃんと手駒として使い物になると思っているから落ち着けベイビーって記したのに反抗期が治らん」
意地っ張りな三男坊だと暢気にほざいているクロードに向かってローズ夫人は上品な笑顔でバッサリ告げた。
「あなた……。その果実酒の酒瓶で後頭部を殴ってもよろしくて?いっぺん死んでいらっしゃい!」
「ローズ。落ち着けベイビー」
クロードとリンの親子仲は膠着状態だが、モモはミシェルへの手紙を頻繁に書くようになったので結果オーライであった。
クロード親父を完全に抹殺できる毒薬の調合を、ミモザ王子がリンに教えていたとモモはミシェルへの手紙に記したが、ミシェルは父クロードに教えなかった。
ミモザ王子が本気でそんな猛毒の調合をリンに吹き込むとは思えなかったからである。
リンはミモザ王子の言葉を本気にして調合したが案の定、クロードは生きており、更に口内炎が治った。
「ふむ……。リンもやっと親孝行をする気になったのだな」
口内炎が治って嬉しいクロードは今日も毒入り果実酒を飲んで元気に生きている。
end
「道中でモモとミモザ王子に何かあったら!」
そう言って心配し続けるミシェルに対して父クロードは少々あきれ顔で慰めの言葉をかけた。
「案ずることはない。モモは武術にも優れている。ミモザ王子を危険に晒すような醜態は見せまい」
「そうではなく!私が心配なのは旅の途中でモモとミモザ王子が深い関係になってしまうことです!14歳同士が恋に落ちたら27歳の私など勝負にならない!」
「え?ミシェルが気にしているポイントってそこか?」
ミシェルは美少年が大好きで、特にモモを熱愛している以外は、聡明で優秀なシルバー家嫡男なのだが、モモが絡むと途端に思考が極端になる。
穏やかそうで実は情熱的な長男が悩み散らかしている姿を眺めながらクロードは息を吐いた。
「ミシェル。モモはミモザ王子の近習……つまり、側近になったのだ。あの子はバカではない。主君に関係を迫るような愚行はすまいて」
「ですが!ラン・ヤスミカ領までの道中をモモとミモザ王子がキャッキャウフフしながら楽しんでいると思うと嫉妬して夜も眠れません!!」
「キャッキャウフフって……。お前は本当にモモのことでは嫉妬深いな。そんなに心配ならば、ラン・ヤスミカ家別邸に手紙を出せばよかろう?」
モモからクロード宛に無事にラン・ヤスミカ領に着いたと連絡がきている。
ミモザ王子はモモの友達という身分でユーリとリン夫婦の屋敷に滞在することまでクロードはモモからの手紙で知っているのだ。
モモは不遜だが根は一途な性格であり、ミシェルを裏切る真似はしないだろうとクロードは確信しているがミシェルの思い過ごしは止まらない。
「私が手紙を送っても返事が1通も来ません!普段なら(死ね!)(殺すぞ!)(眼球えぐるぞ!)ってひと言くらい返信を寄越すのに!」
「その返信……来ても嬉しいのか?大方、ミシェルが手紙を送りまくるのでモモは意図的に無視をしているのだろう。うざくて」
「うざくても(くたばれ)くらい書いてほしいです!このままでは宮廷での仕事に集中できませぬ!」
苦悩しているミシェルの形相を見てクロードは、やれやれと思いつつ書簡を記すことにした。
書簡を送る相手はミモザ王子である。
このままモモのことばかり気にしていたらミシェルはダイアナ王女の側近としての役目を果たせない。
それはシルバー家としても困るので、クロードパパは息子の恋の悩みを解決してやることにした。
「ミシェル。私がモモにミシェルに短文でも息災か知らせるよう手紙を書けと伝えておく。だから案ずるな。次期、手紙が届く」
モモの主君であるミモザ王子に対してモモにミシェルへの手紙を書くよう命じてくださいとクロードは書簡に記してラン・ヤスミカ領へと早馬を出した。
書簡は無事にラン・ヤスミカ家別邸に届いたが、クロードからのお願いを読んでいたミモザ王子はニヤリとしながらモモを見た。
「ミシェルはモモから手紙が来なくて悩んでおる。意地を張らずに書いてやったらどうだ?」
あまり無視を続けるとミシェルがラン・ヤスミカ領まで押しかけてしまうぞ、とミモザ王子がからかうとモモは赤面しながら唇を尖らせる。
「モモ。冗談抜きに僕とモモの仲をミシェルに疑われるとダイアナ姉上にもご迷惑になる。命令だ。ミシェルに手紙を書け」
「命令なら書きますよ。仕方ねーな!」
そんなわけでミモザ王子の配慮でミシェルのもとに愛しいモモからの手紙が届いた。
「ミモザ王子にまで迷惑かけるなクソ野郎って内容でしたがモモが息災でよかった!父上、これで宮廷での出仕も頑張れます!」
「お、おお……!それはよかった。ホッとしたぞ」
ミシェルが嬉しそうに出ていくと少し経ってからクロードの執務室にステフ、マックス、ヒナリザの美少年トリオが入ってきた。
彼らもシルバー家ではミシェルの愛人として暮らしている。
愛人筆頭のモモとは3人とも仲良しでシルバー家でも大切にされていた。
「おお!どうしたお前たち?3人揃って?ミシェルならば出ていったぞ?」
不思議そうにしているクロードの顔を見ながら、3人を代表して1番年長のヒナリザが遠慮がちに手紙の束を出した。
「申し訳ございません!この手紙の束……」
「フム。モモがお前たち3人に送った手紙ではないのか?」
クロードが手紙に触れずに問いかけると1番年下のステフが明るく言ったのだ。
「これね!モモ様がミシェル様宛に書きためたお手紙です!頃合いがきたらミシェル様に渡せって!」
「つまり、モモは最初から手紙をミシェル宛に書いていたということか?頃合いは……ミシェルの心配症が頂点に達した瞬間か!やれやれ……!」
やはり、モモは素直ではないとクロードが苦笑いしているとスラリと背が伸びたマックスが真剣な顔で頼んできた。
「こちらのモモ様からの手紙をクロード様を介してミシェル様にお渡し頂きたいのです。俺たちがずっと隠し持ってたとミシェル様に知られるのは……」
「わかっておる!ミシェルの嘆きを知りながら手紙を秘密にしていたのは気まずいであろう?たとえモモの命令でもな」
「はい……。ですから当主であらせられるクロード様からミシェル様に……」
おずおずとヒナリザが懇願するとクロードはキッパリと告げた。
「ミシェルはそんなことでは怒らん。だから、モモが託した手紙はヒナリザ、マックス、ステフが渡しなさい。それが筋というもの」
今度からモモに意地を張りすぎて周囲を巻き込むなと忠告しなければ……クロードは心にそう決めた。
「手紙の件は心配するな。それより……ヒナリザとマックスはそろそろ学業に専念する頃合いだ。大学と王立士官学校への推薦状は用意している。シルバー家の一員として各々励め」
ミシェルの愛人として拾われたヒナリザとマックスはシルバー家の縁者として将来に向けて羽ばたく時期にきている。
ステフは最年少なのでまだ屋敷で勉強していく予定であった。
「こうなれば3人は私の息子のようなもの。学業に励むのはよいが無理はするなよ」
クロードがそう告げると、ヒナリザとマックスは丁寧に礼を述べたが、ステフはキョトンとしている。
「クロード様?僕たちが息子みたいな存在なら、リン様はなんで嫌いなの?リン様は本当のご子息様でしょう?」
リンはシルバー家では微妙な立ち位置の庶子で、すでにラン・ヤスミカ家に嫁いでおり、父クロードとの仲はけして円満ではない。
ステフを黙らせようとヒナリザとマックスは焦ったが、クロードは心底意外そうな表情で言ったのだ。
「リンはどうも私を憎んでおるが、私はリンを憎んだことは1度もない。疎んだことはあるが」
「疎むと憎むって同じだよ?」
ステフが小首を傾げるとクロードは幼子に言い聞かせるよう答えた。
「疎むは親しめず遠ざけること。憎むは激しく嫌うこと。ステフ。まったく意味は異なる」
「そうなんだ!?じゃあ!クロード様はリン様のことが嫌いじゃないってお伝えしたほうがいいです!」
お手紙にそう書けばリン様が喜ぶよ、と微笑むステフの無邪気さを見ながらクロードが黙り込むと執務室に再びミシェルが入ってきた。
「ステフ、マックス、ヒナリザ!ここにいたのか!?モモからの手紙を見せようと思ったら部屋にいなくてさがしたよ!」
ヒナリザとマックスがモモが託した手紙をどう切り出すか顔を見合わせていると、ステフが満面の笑みでミシェルに抱きついた。
「ミシェル様!僕たちからのドッキリプレゼント!お渡ししたいからお部屋に行こうよ!」
「ドッキリ?なにをくれるんだい?では部屋に行こうか?父上、失礼します」
ミシェルと美少年トリオが執務室から出ていくとクロードは息を吐いて遠くラン・ヤスミカ家にいるリンを思った。
「仕方ない。嫁いでから15歳で反抗期している三男に手紙を書こう」
リンはクロードを殺すために毒酒をたびたびシルバー家に送りつける反抗期を迎えていた。
その毒酒で今のところ1人も死者は出ていないのが現状なのだが。
そんなリン・ケリー・ラン・ヤスミカだって父クロードが誠意ある手紙を送れば反抗期が治るかと思われた。
しかし、クロードが手紙を書き送ってもリンからは牛乳配達よろしく毒酒が届けられる。
果実酒のラベルに【父上必殺】と刻まれ、もはやそういう銘柄のようであった。
「あらまあ!またリンから果実酒が届きましたの!?クロード毒殺用の?」
クロードの正妻でリンの育ての母ローズ夫人が微笑むとクロードは「うーむ」と唸った。
「リンにはお前を憎んだことはないと手紙を書いたのになぁ。ちゃんと手駒として使い物になると思っているから落ち着けベイビーって記したのに反抗期が治らん」
意地っ張りな三男坊だと暢気にほざいているクロードに向かってローズ夫人は上品な笑顔でバッサリ告げた。
「あなた……。その果実酒の酒瓶で後頭部を殴ってもよろしくて?いっぺん死んでいらっしゃい!」
「ローズ。落ち着けベイビー」
クロードとリンの親子仲は膠着状態だが、モモはミシェルへの手紙を頻繁に書くようになったので結果オーライであった。
クロード親父を完全に抹殺できる毒薬の調合を、ミモザ王子がリンに教えていたとモモはミシェルへの手紙に記したが、ミシェルは父クロードに教えなかった。
ミモザ王子が本気でそんな猛毒の調合をリンに吹き込むとは思えなかったからである。
リンはミモザ王子の言葉を本気にして調合したが案の定、クロードは生きており、更に口内炎が治った。
「ふむ……。リンもやっと親孝行をする気になったのだな」
口内炎が治って嬉しいクロードは今日も毒入り果実酒を飲んで元気に生きている。
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