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商店街へ

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 俺は、抱っこされながら商店街へと移動した。うーん、狐(俺の姿)さんがキョロキョロしている。

 「にゃー(ここに来たことはないのですか?)」
 「実体としての来訪はないな。」
 「にゃー(そうそう、ここの野菜は安くて旨いんですよ。)」
 「サツマイモがあるな。好物だが、金は持っていないし買えない事になっている。」
 「にゃー(私も、多少のお金を出せたら払えるのですが。)」
 「持っているのか?そして払えるのか?」
 「にゃー(はい、有りますから。)」

 「待てよ。
戸畑稲荷の一柱枝光狐がお頼みいたします。この者が金の出し入れを、出来るようにして下さい。恐美恐美母白須。
これで出来るはずだぞ。」

 「にゃー(財布でろ。)」財布が口の前に出たので落ちないように、口でくわえた。
 「ふにゃー(五袋なら良いですよ。)」

 「では、五袋買わせていただくな。」と、俺の顔でにまにまするのは、嬉しいのはわかるが止めて欲しい。もう少しクールなはずだった。

 「五袋」と、狐さんが言うと。
 「毎度あり。今日はこれだけでいいのか?五百円な。」ここの品物は内税だから、俺は良く来ていた。オッサンの顔もこれで見納めだなーと、思いながら少し涙が出てきた。

 「ほら猫を下ろして、また来てくれな。」ありがとうオッサン、もうこれないと思うが、今までありがとうな。
 「にゃー(ありがとう、今まで)」
 「ああ、ありがとう。」俺の顔で、にまにま止めて欲しいな。
 
 「にゃおん(次は、そこの酒屋な。いつもの二本と、言ってくれ。)」
 「二本、わかった。買ったらすぐ帰るぞ。」

 おいおい走っている。こけるなよ。こんなに嬉しかったのか。でも次は、もっと嬉しい事が待ってるぞ。

 「よし帰るぞ。」すごい急いで帰って来たな。一升瓶二本だから、重いし割れたら困るんだが。
 「にゃー(待て、あと良いところに行くぞ。)」

 「早く食いたいし、皆で分けたいのだが。」
 「にゃー(豆腐屋に行くぞ。)」
 「あ、ありがとうございます。」おいおい、俺の姿で土下座しそうになるのは止めて欲しい。
 
 「にゃー(仲間は、全員で何柱いるの?)」
 「食べる事が出来るのは、三柱です。」うーん、話し方が変わってしまったな。

 「にゃー(では三つ、いや六つ買おう。)」
 「私と妻と子供ですから。五つでお願いいたします。使わせてしまうのも、申し訳ないので。」
 「にゃー(では私の分も合わせて六つで。)」
 「ありがとうございます。」俺の目には、狐の尻尾が物凄く揺れているのが見えている。
ここの豆腐屋も良く来た物だ、おからも余っていたらプレゼントしてくれたんだよなー。と思っていたら。

 「おからも、もらってしまいました。」やはりもらってしまったか。
 「にゃー(よし帰ろうか。)」
 「ありがとうございます。」
  
 「にゃー(狛犬は、居たよな。)」
 「はい。」
 「にゃー(では、狛犬の分の物をそこで買おうか。)」と、アゴで示した先には焼鳥屋があった。
 「これは、もしや。」うーん尻尾がみえる。
 「にゃー(焼鳥だ。)」
 「なん本ですか。」尻尾が動きだしている。
 「にゃー(鳥串二十本)」俺は、クールに答えた。
 「これも、分けていただきたいのですが。」尻尾が、見えなくなるくらい動いている。
 「にゃー(もちろん。)」
 「ありがとうございます。わかりました。買いますね。」なぜか涙も見えてるような感じがする。ヨダレをふけ、ヨダレを。
 「にゃーにゃおん(十二本と、八本で分けてと頼むんだぞ。塩で。十二本は神々のな、四本は狛犬、三本はそちらの家族そして、一本は俺の分な)」

 「妥当ですね、欲を言い過ぎてはいけませんから。では、早く買って来ます。」クールに俺に言ったみたいだが。ヨダレをふけ。
 「にゃー(ヨダレをふいていけよ。)」
 「ああすまない。行ってくる。」  
運良く焼鳥が、出来ていたみたいですぐに戻ってきた。

 「にゃー(もう行こうか。)」
 「そろそろ帰りましょう。」
荷物を軽々と持つ狐さんをみて、
 「にゃー(重くないのですか?)」
 「ことわりが違うからな、そして気を使っている。」
 「にゃー(やはり気ですか。)」
 「ああ、妖術を纏うのに気は必要だからな。」
 
 色々と話ながら、俺達は鳥居の前にきた。

 一礼をして、中に入るとやはり世界が変わっていた。
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