ドラゴンな幼なじみがお節介やきで困っています

生コン樽

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第15話

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「えっと......事情がよくわからないんですけど、順を追って説明してもらえます?」
 あまりに唐突な宣告に自分でもわかる位に声が震えていた。
 昨晩の辰子の弾んだ声が脳裏に蘇る。
 うるさい程に明るい声、いつも通りの言葉の中に籠められた喜びの感情。
 普段から特別扱いで、大勢で何かをする機会が少ないからこそ、今回の文化祭に参加できる事を誰よりも楽しみにしている筈だ。
「入学の際の事前説明では、文化祭には参加が許可されていましたよね?それがどうして今になって急に駄目になるんですか、新試生が各種学校活動にするのはそれが可能であるかを実地で確かめて発生した問題に対処する方法を探って今まで留学できなかった種族も受け入れられる様にするためでしょう!」
「鈴木、気持ちは分かるが落ち着け」
 思わず声を荒げて立ち上がった僕の肩に隣に座っている守屋先生が手を置いて座るように促す。先生もどこか不満気な表情をしている。
 手に力を籠めて僕を座らせた守屋先生は何事もなかったかのように涼しい顔をしたアルシャワ校長を睨み付ける。
「どういうことだよババァ、またトラブルは起こせないって話か?お前の保身が理由だってんならブッ飛ばすぞコラ」
「......なぁ、瞳。職場で、とまでは言わんからせめて生徒の前でぐらい敬語を使って欲しいのじゃ」
「さっさと説明しやがれ下さいババァ校長先生様。これでいいか?」
「うん……もういいのじゃ」
 どうやら校長先生と守屋先生はプライベートでも親密な付き合いがあるようで、真剣な話の最中だというのにコントのようなやり取りを繰り広げている2人。守屋先生が視線だけで人を殺せそうな顔をしていなければ微笑ましい光景ではある。
 改まるように姿勢を正したアルシャワ校長が、真剣な表情で僕の眼を覗き込む様に見つめる。
「守屋先生の言ったことは当たっておるよ。但し、儂の保身ではなく上の奴等の保身じゃ」
 そういってアルシャワ校長は人差し指で天井を指す。
 この場合の上とは、上階のことではなく上層部という意味だろう。
 この学校は公営なので校長より上の立場といえば、教育委員会か役所の偉い人達、もしくは国政を司る政治家あたりだろうか。
 当然といえば当然だが、国家というのは一枚岩ではないので魔術世界からの留学生に批判的な人だって勿論居る。
 人型でなければ人類として認められないという学説まで有るくらいだ。
 主張の理由は様々だけれど、僕自身はそういった意見は昔の人種差別と同じ下らない考えだと思っている。
 しかし残念なことに、歴史を振り返ればそういった意見が簡単に消えないことも明らかだ。今回もそういった勢力が上層部からの指示という形で学校に干渉してきたのだろう。
「役所からそういった旨の書類が届いてな、要請という形はとっておったが実質命令じゃよ」
 昨日父さんが言いかけて止めたのはこの事だろう。あちらの世界との外交を担当する部署に居ればこういった話が耳に入ってくるのは当たり前だ。
「辰子にはもう伝えてあるんですか?」
「いいや、まだじゃ。後で本人と親御さんには書類として渡す予定じゃが、ちと時間が必要なのでな。クラスや学年の企画のスケジュールに組み込まれる前に伝えておかんと混乱が起きるじゃろ?」
 つまり、学校側は既に要請を受け入れていて、辰子を文化祭に参加させる気がないということだ。
 話が急過ぎる上、なんの理由もなく参加禁止だなんて理不尽で勝手だ。
「参加させない理由は何です?何の理由もなく不参加だなんて本人にも親御さんにも受け入れて貰える訳が無い。それがなければウチのクラス企画には参加させますよ」
「超大型に分類される異種族を大人数かつ制御不能の集団の中で自由にさせるのは危険だ、というのが役所からの文書に書かれていた理由じゃよ。儂だって元々不安ではあったんじゃ、あっちの世界ではドラゴン族なんて災害の名称と大して変わらんのじゃからな。いくら歳若い個体でも危ないのは事実じゃろ」
「そんな......」
 確かにドラゴン族は強大な種族ではあるかもしれないけれど、それじゃあまるで怪物の扱いだ。それに、そうした危険な部分に対して解決策を考え出す事が新試生の役割なのに、議論の一つもなしで参加禁止というのは流石に飛躍し過ぎだ。
「......あちらさんとしては、万が一にも一般の来場者に被害がでないようにしたいんじゃろう、そんな事になれば新試生どころか留学制度すら潰れかねんからの。何の対策も無くただ参加させるくらいなら、準備の段階で不参加にしておく方が本人の心の負担も小さいじゃろ」
 現実的な問題として辰子が危険だと言われるのは当然の事ではある。
 昨日だってその凄まじい身体能力を我が身を持って実感したばかりだ。
 何百何千という時を生きるドラゴン族、その中でも非常に若いと言っても、その気になればこの校舎を跡形もなく壊せてしまう力が彼女にはある。
「校長、どうにかならないんですか!あいつは体育祭も校外学習も参加できないんですよ?ここで前例を作ってしまったら来年も、その次だって、学校行事には一切参加できなくなる!そんな扱いをすれば、社会に居場所はないとあいつに教えているのと一緒だ!」
 守屋先生が立ち上がって吠える様にアルシャワ校長に抗議している。
 辰子が入学するとき、身体能力の差と外部で活動する事の難しさを考慮してその2つの行事には参加しない事が予め決められたと、僕は辰子本人から聞いていた。
 仕方ないよ、と辰子にしては珍しく元気のない声で言っていた事を思い出す。
 だからあそこまで楽しみにしていたのかと、今更気付いた自分を呪いたくなる。
 辰子が唯一参加できる学校行事がこの文化祭なのだ、どうにかして参加させてやりたいが......。
「どうにもならんよ、既に学年とクラスの企画には参加させないと返事はしてしまったし、安全性を担保できる対策無しに当日学校に来させる訳にもいかんじゃろう。それともお主には何かしら案があるのか?先に言っておくが、生徒1人を特別扱いする訳にはいかん、予算や人員を対策の為に割くことはでこんぞ」
 今度はアルシャワ校長がその幼い外見と顔つきに似合わない冷めた目で守屋先生を睨みつけている。
 学校だって公立なら国家の運営する公共機関なのだ、個人を特別扱いする事など出来ない。辰子1人の為に対策を作るよりも不参加にした方が労力も少なくすむ。
 校長の言葉に反論できずに守屋先生が黙り込んでしまう。それをみたアルシャワ校長は呆れたように短くため息をはいた。
「ほらの?お主は昔から理念と感情だけで突っ走って行く傾向が有る。それを直さんと嫁の貰い手も......」
「校長先生、幾つか質問してもいいですか?」
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