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前編 少年と精霊
10,森の管理
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「ん……」
ついに目を覚ましたライア。
いつもはないぬくもりが手にあることを認識する。
「ちょっ……アーロル、私の手を握らないで!」
「嫌なんですか?」
「べっ別に嫌ってわけじゃないけど……」
「嬉しいですか?」
「そんなわけないでしょ! 勝手に手を握られて嬉しい訳ないじゃない!」
「でもよく見てください。ライアの右手は僕が握ってますけど、さらにその上からライアの左手が触れてますよ。」
「え……」
と思ってみてみれば確かに自分から少しだけ彼の手を握っている。
「いやっ別にそんなつもりじゃっ」
急いで彼から手を離すライア。
「どんなつもりじゃないんですか?」
「なんでもないわよ! さ、そろそろ森の管理始めるわよ!」
「いつもこんな時間に起きているんですか?」
「ばらばらよ。早いときもあれば、夕方に起きるときもあるわ。」
「ははは。ライアらしくていいですね。明日も起きるの遅ければずっと手を握っておいてあげますよ。」
「別に……」
嬉しくない、と言おうとしたがしかし起きたときに包まれていたほのかなぬくもりが未だ抜けきらないライア。
結局そのまま何も言わずに石台から降りた。
「で、アーロルはどうするの? 私、目を瞑って魔法使うだけだから見ていても暇よ?」
「なにか手伝えることないですか?」
「あ……じゃあさ、あっちの方角にある倒木、場所をずらして欲しいの! 倒木のすぐわきに生えた新芽が、日光が当たらなくて悲しんでるの。
でもさ、ほら、アタシあんまりここから動けないから……」
「そうか、森の精霊は場所を移動するのに魔力をたくさん使うんでしたね。では、行ってきます!!」
「ありがと~!!」
アーロルはその場所に行き、倒木をずらした。
「ああ、この芽か。ほら、元気に育つんだぞー!!」
その若い芽に精一杯エールを送るアーロル。
その後、アーロルは近くを通りがかるたびにこの芽を観察するようになる。
この日は一日中ライアが頼みごとをして、アーロルがそれに答えるということを繰り返して終わった。
どんなに遠くの場所の手入れを頼んでも何も言わずにこなすアーロル。
「今日はありがと! アタシじゃあどうしようもなくて困ってたところ全部やってもらっちゃった♪」
「どういたしまして。」
「アーロルはいいの? こんなことしても何もならないじゃない。私としては嬉しいけど。」
「いいんです。俺、日頃人の役に立てることがほとんどなくて……。どうしても天候魔法だけ使えても仕事なんてほとんどないんですよ……。」
「そうなの? こんなにいい雨降らせるのに? 農業とかいっぱいできるじゃない!」
「考えてもみてください。天候魔法は使える人も少ないですが、町で一人でも使えればそれで事足りるんです。ですからどうしてもベテランの魔法師に仕事は取られてしまって……」
「人間も大変なのね……」
「だから、ここに来てこうやってライアの頼みを聞くのが楽しいんです! 毎回何かを達成した後に中心部のここに戻ってくれば可愛い笑顔でライアが迎えてくれますからね!」
「なっ別にそんなことないけど……でも、まあ、あなたが嬉しいならよかったわ。」
「っていうわけで、蜜いただきますねー。」
「あっいやっちょっ……」
すっかりアーロルの本来の目的を忘れていたライアだった。
ついに目を覚ましたライア。
いつもはないぬくもりが手にあることを認識する。
「ちょっ……アーロル、私の手を握らないで!」
「嫌なんですか?」
「べっ別に嫌ってわけじゃないけど……」
「嬉しいですか?」
「そんなわけないでしょ! 勝手に手を握られて嬉しい訳ないじゃない!」
「でもよく見てください。ライアの右手は僕が握ってますけど、さらにその上からライアの左手が触れてますよ。」
「え……」
と思ってみてみれば確かに自分から少しだけ彼の手を握っている。
「いやっ別にそんなつもりじゃっ」
急いで彼から手を離すライア。
「どんなつもりじゃないんですか?」
「なんでもないわよ! さ、そろそろ森の管理始めるわよ!」
「いつもこんな時間に起きているんですか?」
「ばらばらよ。早いときもあれば、夕方に起きるときもあるわ。」
「ははは。ライアらしくていいですね。明日も起きるの遅ければずっと手を握っておいてあげますよ。」
「別に……」
嬉しくない、と言おうとしたがしかし起きたときに包まれていたほのかなぬくもりが未だ抜けきらないライア。
結局そのまま何も言わずに石台から降りた。
「で、アーロルはどうするの? 私、目を瞑って魔法使うだけだから見ていても暇よ?」
「なにか手伝えることないですか?」
「あ……じゃあさ、あっちの方角にある倒木、場所をずらして欲しいの! 倒木のすぐわきに生えた新芽が、日光が当たらなくて悲しんでるの。
でもさ、ほら、アタシあんまりここから動けないから……」
「そうか、森の精霊は場所を移動するのに魔力をたくさん使うんでしたね。では、行ってきます!!」
「ありがと~!!」
アーロルはその場所に行き、倒木をずらした。
「ああ、この芽か。ほら、元気に育つんだぞー!!」
その若い芽に精一杯エールを送るアーロル。
その後、アーロルは近くを通りがかるたびにこの芽を観察するようになる。
この日は一日中ライアが頼みごとをして、アーロルがそれに答えるということを繰り返して終わった。
どんなに遠くの場所の手入れを頼んでも何も言わずにこなすアーロル。
「今日はありがと! アタシじゃあどうしようもなくて困ってたところ全部やってもらっちゃった♪」
「どういたしまして。」
「アーロルはいいの? こんなことしても何もならないじゃない。私としては嬉しいけど。」
「いいんです。俺、日頃人の役に立てることがほとんどなくて……。どうしても天候魔法だけ使えても仕事なんてほとんどないんですよ……。」
「そうなの? こんなにいい雨降らせるのに? 農業とかいっぱいできるじゃない!」
「考えてもみてください。天候魔法は使える人も少ないですが、町で一人でも使えればそれで事足りるんです。ですからどうしてもベテランの魔法師に仕事は取られてしまって……」
「人間も大変なのね……」
「だから、ここに来てこうやってライアの頼みを聞くのが楽しいんです! 毎回何かを達成した後に中心部のここに戻ってくれば可愛い笑顔でライアが迎えてくれますからね!」
「なっ別にそんなことないけど……でも、まあ、あなたが嬉しいならよかったわ。」
「っていうわけで、蜜いただきますねー。」
「あっいやっちょっ……」
すっかりアーロルの本来の目的を忘れていたライアだった。
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