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前編 少年と精霊
4,人間と森
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少年が来てから一週間がたった。
ライアは相変わらずだらけていた。
特に森の手入れをせずに、石台の上の布団でごろごろする毎日。
しかしずっと変わらなかったその日々を少しだけ変えた、一つのスパイス――
「あ~、あれ、なんであんなに気持ちよかったんだろ? 自分でしてみてもぜんぜんわかんない。」
日々娯楽など一切ない環境で生活するライアはあの時に得た心地よさが忘れられなくなっていた。
少年が来てから二週間がたった。
「そういえばアタシ、アイツの名前知らないわ!?」
今更気づいたライア。
「しかもアタシのこと最後まで『精霊さん』とか呼んでいたような……」
そう、ライアも新鮮なあの感覚を得ることと恥ずかしさに耐えることに必死で情報交換を完全に怠っていたのだ。
「っていうか、次いつ来るのよ!?」
早めに来い、とでも言っておけばよかったかな?
そう思った次の瞬間、自分の口で否定した。
「いや別に、あんなヤツに来てほしいとかいうわけじゃ……ないけど……」
微妙に顔を赤らめているライア。
しかし周りに誰一人いないのにここまで独り言……一人漫才?を続けられるのは大したもんだ。
「もしかして、ほかの森の精霊のところに通い詰めているとか?? まさか、いや、でも確か隣の大森林の先輩は背も大きくて美人で頭もよくて――」
急にサーッと顔を青ざめさせるライア。
顔色の変化が激しい。
「いや、アタシだって可愛いって言ってもらえたし? 別にそんなちょっと見た目が良くて頭が良くて性格も優しいからって今更――」
それだけ条件が違えば絶対自分のところにはもう来ないだろう、と分かってしまうライア。
「うう……そんな……私がダメだっていうの……?」
少し悲しくなっているライア。
そして、ライアはとんでもないことを決意した。
「だったら、私だってちゃんと森を大きくするわ!!」
なんと、超グータラ精霊がついに働くことを決意した。
その日からライアは必死に森の植物の種類の選定や有望な木に成長を促進する魔法を使うなど様々な手入れを進めていった。
ある日、
「あ! 人間の足音! もしかして……」
ライアはすかさずその人物がライアのもとに来るのを待った。
しかし、一向に向かってこない。
さらに――
「いやあ! その木、もう4年も前から一緒に育ってきたのに、ひいいいい!!」
その人物は木を切っているようだ。
「ああ、待って!? その実はクマさんたちのごちそうなの!! いやああああ!?!?」
彼女はもちろんその人物を直視していない。ただいつものベッドの上にいるだけだ。
しかし森と精神的につながっているライアはそれらのことが手に取るように分かるのだ。
ちなみにその人物は一晩この森で野宿しようとしているだけだ。
別に荒そうとしているわけではない。
それでも彼女がともに育ってきたいくつかの木が切られてしまいとても悲しんでいた。
「うっ……ぐっ……こんなの酷い……人間なんて、人間なんて……」
いままでまれに人が通ることもあったがほとんど何もせずに通り過ぎていった。
したがって人間に木を切られたことも、実をとられたこともなかったのだ。
ライアは泣きながら、ただただその人物が早く去るのを祈った。
翌朝になるとその人物がどこかに行ってくれた。
「はぁ……もういやになっちゃう。」
落ち込んだ彼女は結局再びグータラ生活に戻ってしまった。
そうして、少年が初めて来てから一ヵ月が過ぎた。
「ああ!? また人間!? あ、でもこの足音こそ……」
着々と自分に近づく足跡。
木を切ることもせず、木の実をもぎ取ることもせず、ただただ自分の方に近づいてくる足音。
「こんにちは!! 精霊さん。」
「ふんっ。また来たのね。久しぶり。」
なかなか素直になれないライアだった。
ライアは相変わらずだらけていた。
特に森の手入れをせずに、石台の上の布団でごろごろする毎日。
しかしずっと変わらなかったその日々を少しだけ変えた、一つのスパイス――
「あ~、あれ、なんであんなに気持ちよかったんだろ? 自分でしてみてもぜんぜんわかんない。」
日々娯楽など一切ない環境で生活するライアはあの時に得た心地よさが忘れられなくなっていた。
少年が来てから二週間がたった。
「そういえばアタシ、アイツの名前知らないわ!?」
今更気づいたライア。
「しかもアタシのこと最後まで『精霊さん』とか呼んでいたような……」
そう、ライアも新鮮なあの感覚を得ることと恥ずかしさに耐えることに必死で情報交換を完全に怠っていたのだ。
「っていうか、次いつ来るのよ!?」
早めに来い、とでも言っておけばよかったかな?
そう思った次の瞬間、自分の口で否定した。
「いや別に、あんなヤツに来てほしいとかいうわけじゃ……ないけど……」
微妙に顔を赤らめているライア。
しかし周りに誰一人いないのにここまで独り言……一人漫才?を続けられるのは大したもんだ。
「もしかして、ほかの森の精霊のところに通い詰めているとか?? まさか、いや、でも確か隣の大森林の先輩は背も大きくて美人で頭もよくて――」
急にサーッと顔を青ざめさせるライア。
顔色の変化が激しい。
「いや、アタシだって可愛いって言ってもらえたし? 別にそんなちょっと見た目が良くて頭が良くて性格も優しいからって今更――」
それだけ条件が違えば絶対自分のところにはもう来ないだろう、と分かってしまうライア。
「うう……そんな……私がダメだっていうの……?」
少し悲しくなっているライア。
そして、ライアはとんでもないことを決意した。
「だったら、私だってちゃんと森を大きくするわ!!」
なんと、超グータラ精霊がついに働くことを決意した。
その日からライアは必死に森の植物の種類の選定や有望な木に成長を促進する魔法を使うなど様々な手入れを進めていった。
ある日、
「あ! 人間の足音! もしかして……」
ライアはすかさずその人物がライアのもとに来るのを待った。
しかし、一向に向かってこない。
さらに――
「いやあ! その木、もう4年も前から一緒に育ってきたのに、ひいいいい!!」
その人物は木を切っているようだ。
「ああ、待って!? その実はクマさんたちのごちそうなの!! いやああああ!?!?」
彼女はもちろんその人物を直視していない。ただいつものベッドの上にいるだけだ。
しかし森と精神的につながっているライアはそれらのことが手に取るように分かるのだ。
ちなみにその人物は一晩この森で野宿しようとしているだけだ。
別に荒そうとしているわけではない。
それでも彼女がともに育ってきたいくつかの木が切られてしまいとても悲しんでいた。
「うっ……ぐっ……こんなの酷い……人間なんて、人間なんて……」
いままでまれに人が通ることもあったがほとんど何もせずに通り過ぎていった。
したがって人間に木を切られたことも、実をとられたこともなかったのだ。
ライアは泣きながら、ただただその人物が早く去るのを祈った。
翌朝になるとその人物がどこかに行ってくれた。
「はぁ……もういやになっちゃう。」
落ち込んだ彼女は結局再びグータラ生活に戻ってしまった。
そうして、少年が初めて来てから一ヵ月が過ぎた。
「ああ!? また人間!? あ、でもこの足音こそ……」
着々と自分に近づく足跡。
木を切ることもせず、木の実をもぎ取ることもせず、ただただ自分の方に近づいてくる足音。
「こんにちは!! 精霊さん。」
「ふんっ。また来たのね。久しぶり。」
なかなか素直になれないライアだった。
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